極端な話だが、ネットショップでの売上げが月に1000万円あったとしても、翌月は0円になる可能性はゼロではない。月次契約などのサービス業ではなく物販をしている限り、翌月も安定した売上げが上がる保証はない。だから経営者としては、できるだけ安定した売上げが出るような仕組みづくりをしていく。
ネットショップで売上げを上げるためには、コンバージョン率の改善や客単価の向上などの施策があるが、経営の安定化という面では、集客・接客・追客の流れを意識することが大切である。別の言葉で言い換えるなら、新規顧客をリピーターに昇華させていくことに力を注ぐべきなのだ。
集客・接客・追客とは
集客・接客・追客、それぞれの言葉の意味は次の通り。
- 集客: まずはお客様となるユーザーにアクセスしてもらうこと
- 接客: 実店舗なら店員によるセールストーク、ネットショップなら商品説明やナビゲーションの充実度
- 追客: 商品を購入いただいたお客様へのアフターフォロー
実店舗の運営でも、お客様が来店し、気持ちの良い接客をして、購入後は「その後はいかがですか?」とDMを送付してまたご来店いただくきっかけをつくる。このようにしてリピーターを増やしていけば、新規顧客を集める手間をかけずに、固定客だけで一定の売上げを生み出していくことができる。
集客をいくら頑張っても、追客をないがしろにしていては、いつまでたっても新規顧客を集めることに奔走しなければならないし、追客だけに力を入れても、接客がいまいちではお客様もまたリピートしようとは思わないだろう。集客・接客・追客の3つの要素を、それぞれバランスよく向上していかなければ意味がない。
それぞれのフェーズで必要なネットショップ的施策については、以下でご説明していく
集客
まずは新規のお客様を集めないことには、リピーターは生まれない。集客として必要な施策を以下に挙げていく。
広告で集客
ネットショップのお客様を集めるなら、広告を利用するのが一番即効性がある。ただ広告と言っても、現実世界でもテレビコマーシャルや道路脇の野立て看板などがあるように、インターネットの世界にも人気サイトにバナーを掲載するバナー広告や、メディア上のコンテンツの一部のようにして見せるネイティブアドなど、いくつかの広告手法が存在する。
ただし現時点でネットショップの広告として一番多く利用されているのは、クリック課金型のリスティング広告。リスティング広告の詳細については、「リスティング広告の基本と効果的な運用方法について」を参考にしてほしい。
むやみに広告を出稿しない
リスティング広告は新規顧客を集めるのに有効な手段であることは間違いないが、それもしっかりとした計画があってのことだ。見込み客となるユーザーを想定し、ユーザーの心を動かすような広告文章を考えることは必須。ただ広告予算を30万円確保して、やみくもに広告を出稿したところで、満足する結果を得ることは難しいだろう。
広告パフォーマンスを高くするなら、以下のポイントを意識した広告を打つように心掛けてほしい。
- ユーザーの把握(性別・年齢・居住地域・職業など)
- 徹底して考えられた広告文
- 出稿キーワードの需要を把握
- 平均入札単価の把握
SEO対策
広告に頼らずに、自然検索からの流入を多く集めるのなら、SEO対策は必須の施策となる。これはネットショップだけに限らずwebを利用して集客を考えるなら、SEO対策は切っても切り離せないもの。
当たり前のことだが、検索順位が上がれば上がるほどユーザーの流入数は多くなる。特にモール系ショップではなく、独自ドメイン系のショップなら、SEOを強くすることは集客の要となるだろう。ECサイトのSEOに対する考え方と対策は「ネットショップのSEO対策で検索順位の上位表示を狙う方法」を参考にしてほしい。
ユーザーが求めるものを提供する
先にもご紹介したように当サイトでもSEO対策に関する記事を公開しているが、巷でもSEOに関する噂は非常に多く流れている。そして気を付けてほしいのは、そのSEOに関する話の中には、説明通りに対策しても効果を得られないものもあるということ。
厳密に言うなら、検索エンジンの精度も年々向上しており、その時代によって効果的なSEO対策も変化する。そのため10年前のSEO対策を鵜呑みにして講じたとしても、全く効果がないだろう。ガセネタというわけではないが、時代遅れの代物が多いのだ。
弊社としては、被リンク数などの外部対策よりも、コンテンツの充実度といった内部対策が重要になってくると考えている。検索エンジンの考え方としては、ユーザーが求めている内容が記載されているページを上位表示させるのが本質だ。それをネットショップで言うならば、商品ページの商品情報を充実させることで、ユーザーの満足度も高まるとともに検索エンジンからの評価も上昇する。SEOを考えるなら常にユーザーファーストという考えを忘れずに。
メディア運用
新規顧客の集客にはメディア運用をしていくことも効果的。
マーケティングの観点で言えば、コンテンツマーケティングと呼ばれる手法である。SNSなどのソーシャルメディアや、コンテンツ配信型の自社メディアまで、さまざまなメディアツールを利用して、将来のお客様となるであろう見込み客を捕まえていく。
メディア運用については、以下の記事を参考にしてほしい。
質の高いユーザーを捕まえることが大事
ECサイトのメディア運用もただPVを集めるだけでなく、目的はネットショップへの送客や、売上げにつなげることであることを忘れてはいけない。
※参照「メディア運用はPV至上主義ではなく成果を意識しよう」
そのためには自店の商品に興味・関心を抱いている見込み客を集めなければならず、メディア運用にて配信するコンテンツも、そうしたことを意識する必要がある。
メディア運用で効果を発揮するコンテンツ制作については、下記の記事を参考にしてほしい。
接客
実店舗でも店員の接客態度が気持ちの良いものであれば、そのお店に対して好感を持つだろう。ネットショップの場合は実際に言葉を交わすことはないかもしれないが、システムの使いやすさや、トラブル時の対応能力が求められる。
分かりやすいナビゲーション
特に新規顧客にとっては、ショップシステムの使いやすさが重要だ。お目当ての商品がどこにあるのか分からなかったり、どのような手順で決済してよいのか分からなかったりすると、せっかくの購買意欲も薄れてしまう。あまりにも使い勝手が悪いとユーザーも「別のお店で買おう」と思って離脱してしまうだろう。
そのショップを初めて利用するユーザーのために、初訪問ユーザー専用ページを用意して、送料やギフト対応などの説明をすることも大事。
使い勝手を考えたサイト設計は、以下の記事も参考にしてほしい。
コンバージョン率を高くする
コンバージョン率を高くすることは、途中離脱するユーザーを減少させることと同じであり、お客様が不満を感じる程度も低いと言える。
ネットショップが実店舗よりも難しいのは、常にユーザーの思考の先を読まなければならないこと。実店舗ならユーザーからの質問に対し、その場で返答できるが、ネットショップの場合はお客様が質問をしてくること自体少ないし、メールでのやり取りだとタイムラグが生じてしまう。
そうこうしていると、本来ならば売上げが上がるはずだったのにもかかわらず、結局ユーザーは別のお店へ流れていってしまい、機械損失が生まれてしまうのだ。
ネットショップの理想は、お客様の疑問に対しての答えをできるだけ見つけやすいような設計にして、ユーザーが質問を投げかける必要をなくす。これが大事。
コンバージョン対策については、下記のページを参考にしてほしい。
クレームは真摯に対応
ショップとお客様が直接やり取りを交わす場面の一つに、クレーム対応がある。
商品が届いたら一部が破損していたとか、いつまでたっても商品が届かないとか。たとえそれが配送業者の管轄内で起きたトラブルだとしても、ユーザーの怒りの矛先はネットショップに向けられることが多い。
ときには理不尽なクレームを受け取ることもあるかもしれないが、そこはグッとこらえて真摯な対応を心がけるようにしてほしい。クレームも見方を変えれば、自店の至らない点を教えてくれる貴重な意見だし、そこから業務改善という新しい施策を打つことも可能になる。
また過度なサービスを施すというわけではないが、クレームは真摯に対応することで、最終的にショップに対して好印象を持ってもらいやすくなる。クレーム対応からリピーターを作っていくのである。
クレーム対応については「クレームをチャンスに変えるネットショップ的処理対応」を参考にしてほしい。
追客
ネットショップの経営を安定化する最後の要が追客である。ネット通販を利用するユーザーは忘れっぽいものであり、注文した商品が届きさえしたら、それをどこのお店で買ったのかなんてすぐに忘れてしまう、と言うかどうでもよくなってしまう。また今度お買い物するときには、最安値の店を検索すればすぐに出てくるからだ。
だからEC事業でリピーターをつくるのは簡単なことではなく、アフターフォローなりメルマガなどで、しっかりと手間をかけないことには固定客は生まれにくい。
メールマガジンを利用する
かつてはネットショップの追客ツールとして非常に有用だったメールマガジン。LINEなどのチャットツールの普及がすすみ、年々メルマガの効果は薄れてきていると言われているが、それでもまだ一定の効果があるのは確か。いくつかのASPでは無料でメルマガを配信できる機能を備えていることもあり、使わない手はない。
ただしメルマガを配信するにも、ショップの都合ばかりを考えていては、ユーザーにとっては迷惑メールとなってしまう。いかに迷惑と感じることなく、ユーザーの興味をひけるような内容になっているかが大事。
上手なメルマガ運用については「120%の効果を発揮するメールマガジン活用術」を参考にしてほしい。
独自ショップはメールマガジンツールを利用する
ASPを利用しているわけではなく、完全オリジナルのショップを構築しているなら、メルマガの送付はメールマガジン配信システムを利用しよう。お客様に一件一件メールを配信していては、とてつもない手間になってしまうし、業務効率を改善する意味でも、機械的にメールを配信しておきたい。
メルマガ配信ツールは無料で利用できるものから有料のシステムまでさまざま。またクラウド上で処理するものから、同報メール配信ソフトをインストールして利用するものまで、そのタイプも複数ある。
詳細については「業務効率化に役立つメールマガジン配信システムやソフト8選」を参考にしてほしい。
アフターフォローを欠かさない
先にも簡単に述べたが、ネット通販のお客様は忘れっぽいもの。そのためアフターフォローをすることで、お客様にお店のことを思い出してもらう。
自分がお客様だったら…ということを考えたら、商品を購入して数週間後に「お届けした商品に不備はございませんでしょうか。使い方に不明な点があればいつでもご連絡ください」といったフォローメールを貰ったら嬉しくないだろうか。嬉しいとまではいかないかもしれないが、嫌な気分になる人は滅多にいないだろう。
そうしたメッセージとともに、試供品のプレゼントやクーポンコードの連絡など、ショップ側の心づかいが感じられるような、リピート購入の施策を打っていくことが、追客を成功に導くための秘訣である。
リピーター創出の施策については「リピート購入を狙うための商品発送時に同梱したい7つのもの」の記事を参考にしてほしい。
おわりに 集客・接客・追客の流れを意識する
これまで集客・接客・追客の3要素について説明してきたが、これらは売上を安定化させるための独立した要素ではなく、一連の流れがあって初めて機能する施策であることを理解する必要がある。
特にネットショップの立ち上げ直後には集客に力を入れ、次に接客の質を向上させ、最後は追客でリピーターを創出する。それぞれの段階で、どれだけのユーザーが次のステップに進むことができたのかをチェックしながら、施策を打つようにしてほしい。
なかなか経営が安定しないとお悩みのオーナーの方は、集客・接客・追客の流れを意識したショップ運営をしていくようにしよう。
【著者からの一言】
鍵谷 隆 -KAGIYA TAKASHI-
当記事は2016年ごろ、私がECサイトのコンサル経営をしていた時期にまとめたノウハウ集だ。そのため外部サイトへのリンクが切れていたり、Googleや各種ASPなどの外部システムの仕様変更などで状況が変わっている可能性があることだけは了承してくれ!
ただ商いの本質は変わることはない。ネットショップ運営でお困りの経営者や担当者なら、当サイトの記事も必ず役に立つはずだ。全てのEC関係者に幸あれ。検討を祈る!