ネットショップを運営することにおいても、実店舗と同じように戦略が必要だ。それもネット通販ならではの戦略が。
ではどのような戦略を取って販売していけばよいのか? それは取扱いする商品ジャンルによって変わってくる。
どんなに魅力的な商品を扱っていたとしても、間違えた戦略をとっているならば、お客様を取りこぼしている可能性が大きい。売上が思うように上がらないショップなら、ショップ運営の戦略自体を見直したほうがよいかもしれない。
まずは戦略を考えていく上で、商品をどのようなジャンルに分けていくのかを説明しよう。
商品ジャンルについて
ネットショップの取扱い商品ジャンルは大きく分けて「メーカー商品型」「総合商品型」「自社開発商品型」「ブランド商品型」の4タイプに分類できる。御社のショップはこのうちどのタイプに属するだろうか。
メーカー商品型
メーカー商品型とは有名メーカーが生産している商品で、食品や家電などの専門店で取り扱っていることが多い。いわゆる知名度のある商品で、全国的に商品名が認知されているのが前提だ。
「コカ・コーラ」や「iPad」といった商品名を耳にすれば、どのような商品かがイメージつくだろう、これらはメーカー商品型に属する。
総合商品型
総合商品型とは「マグカップ」や「お皿」といったように、特定の商品名が知られていない・決められていないタイプの商品。
アパレル店や雑貨店などでの取り扱いが多い。
自社開発商品型
自社開発商品型とは名前の通り自社で開発・生産している商品で、他の商店では取扱いのない商品のこと。
商品数は少ないが、一球入魂といったように、徹底的に商品に磨きをかけている。大手企業でいうなら、再春館製薬のドモホルンリンクルが良い例だろう。
ブランド商品型
ブランド商品型とは自社で企画開発した商品に対し、ブランド力をウリにしている商品のこと。グッチやシャネルなどの高級ブランドだけでなく、クラフト系の作家ものからアート作品まで、機能面よりも美しさを重視している商品が当てはまる。
ただし自社で生産しておらず、メーカーから仕入れている場合はメーカー商品型に属するので注意。
メーカー商品型の販売戦略
まずはメーカー商品型の販売戦略から。
メーカー商品型は、その商品を求めているユーザーは必ずいるので、いかにショップを見つけてもらい利用してもらえるかが肝となる。
ページタイトルには商品名を設定
実店舗ならお客様は入口のドアから入ってくるが、ネットショップの場合は「商品を検索する」という行為から始まる。逆に言えば検索結果にお目当ての商品がヒットしなければ、お客様が購入してくれることはない。
そのためネットショップ運営は「検索結果で見つけてもらう」ということを意識しなければならない。そして検索にヒットするということは、商品紹介ページに付けられているタイトルが重要になってくる。
これはウェブの世界ならではの話だが、インターネットのページにはそれぞれタイトルが付けられており、ユーザーが検索するときに入力したキーワードと、ページに設定されているタイトルが一致していれば検索結果として上位に表示されやすい。
※ページタイトルとは、ソース中の<title>~</title>の中に設定される文言のこと。
メーカー商品型の場合は、ページタイトルに商品名をそのまま設定するのが効果的だ。
例えばコカ・コーラをネットで購入しようと思ったときにはなんと検索するだろう。「黒くてスカッとする炭酸飲料」のようには検索しないはずだ。「コカ・コーラ 通販」といったように検索することが普通だと思う。
だからページタイトルには「コカ・コーラ」と設定しておくのがベストだ。もう少し具体的に「コカ・コーラ500ml」や「コカ・コーラ(350ml缶)」としてもよいだろう。
また家電や電子機器など型番が存在する商品なら、型番 + 商品名をタイトルに設定しておくとよい。
広告を利用しよう
商品名をタイトルに設定したのはよいが、メーカー商品は多くのショップでも取扱いがあるため、競合企業も数多くいることが予想される。そのため検索でヒットしたとしても検索順位が上がってこないという悩みも同時に生まれる。
ネットショップの場合は検索順位が上位になる方が有利のため、できれば1位を目指したいところだが、どうしても難しい場合もある。そうしたときにはインターネット広告が有効だ。
リスティング広告(検索連動型広告)とは、検索結果ページに優先的に表示される広告のこと。下の図の赤枠で囲まれた部分が、広告で表示されている部分。
この目立つ部分に表示されれば、御社の商品も消費者の目に入りやすくなる。
ただしこれは広告の一種のため、広告費が必要になってくる。
リスティング広告の特徴は、クリックされた時のみ費用が発生し、入札形式で広告枠を奪い合う。そのためキーワードによって費用の水準が変わってくるので、広告予算や商品の利益率と相談しながら決めていきたい。
リスティング広告の詳細は「リスティング広告の基本と効果的な運用方法について」の記事を参考にしてほしい。
ショップのサービス内容が重要
メーカー生産の商品は、はっきり言ってどのショップで購入しても消費者にとっては同じだ。食品関係は別かもしれないが、販売価格もメーカー側の希望価格が決まっていることも多く、どのショップでもだいたい同じ価格が設定されていることが多い。
そのため消費者がショップを選ぶ基準としては、「検索で一番初めに見つけたショップ」というのもあるだろうが、送料や発送までにかかる日数などが重要になる。
少しでも安く購入したいというお客様であれば、送料無料対応で少しでも金銭的負担を軽減するのが喜ばれるだろう。また緊急で必要なお客様であれば、即日発送のショップを利用するだろう。
そうしたショップのサービス内容は、金銭的なことでなくてもよいので、いかに充実できるかを考えよう。
総合商品型の販売戦略
続いては総合商品型の販売戦略について説明していこう。
商品写真は美しく
総合商品型は、アパレルや雑貨店での取り扱いが多いジャンルだ。
ネットショップでの販売戦略を考える前に、現実世界のことを考えてみよう。洋服屋さんや雑貨屋さんで買い物をするときには、明確な「これ欲しい」というものがない状態で入店し、商品を見て「これ欲しいな」と思うことが多いのではないだろうか。
何気なく雑貨店に入り、とっても可愛いマグカップを見つけたときに、そういえば「普段使いできるマグカップが欲しい」と考えていたことを思い出し購入することもあるだろう。
ネットショップも基本の考え方は同じなのだが、ネットショップの場合は「これいいな」と思わせる材料が商品写真になる。お客様は商品紹介で用意されている写真に一目惚れして、購買欲求が高まるのだ。
だから商品写真はできるだけ美しく撮影する必要があり、使用するイメージを思い浮かべられるようなカットが望ましい。
ページタイトルには商品の特徴を
商品紹介ページのタイトルの付け方は、先にご紹介したメーカー商品型とは異なるので注意が必要だ。
販売しているマグカップにメーカーが決めた商品名があったとしても、よほどの有名商品でない限りは、商品名をそのままページタイトルに設定してはいけない。ユーザーがその商品名で検索をかける可能性が限りなく低いからだ。
ユーザーの立場になれば、マグカップが欲しいときには「マグカップ 赤 女性用」のように、商材名と特徴を組み合わせた複合キーワードで検索することが多いだろう。
であれば、ショップ側としても「女性でも使いやすいサイズの280mlマグカップ(赤・白・青)」といった内容を、ページタイトルに設定しておくべきである。
自社開発商品型の販売戦略
自社開発商品型は同じ商品を他企業で取り扱っていることがないため、いかに商品の優れている部分を伝えるか、お客様の心に響かせるかが重要になってくる。
商品ページで徹底的に商品の魅力を説明
自社開発するぐらいなのだから、商品力には自信があることだろう。それに一番その商品を知っているのは開発した企業の人間だ。
だから商品ページでは徹底的に魅力をお伝えしよう。どれだけ縦長のページなってもよい。ネットショップの場合はお客様と直接トークを交わすことができないため、写真と文章を使って説明していくしかない。
「素材」「素材へのこだわり」「作り手の情報」「製造場所」「製造過程のこだわり」「他社商品との違い」などなど、そんなことまで説明しなくても…というところまで徹底的にお伝えしよう。それぐらい説明しないと、その商品の優れている部分はなかなかお客様には伝わらないものである。
ストーリーを売る
商品説明ページにて商品の魅力を徹底的に説明したら、サブページにて完成に至るまでのストーリーをお伝えするのも効果的。
開発していく上でどんな困難があったのかや、どれだけの手間がかかったのかなど。そうした商品の背景となるストーリーは、付加価値として商品の魅力にプラスされる。かつてNHKで放送されていた「プロジェクトX」を見ると、数々の困難を乗り越えて形にされた製品はとても魅力的に感じるだろう。それと同じ効果を狙うのだ。
他にも職人が作りあげる家具のような商品であれば、作り手へのインタビューページを設けるのもよい。どんな人がどんな想いやこだわりを持って作られているかを知ることで、より商品の価値が増す。
商品の付加価値の高め方については「商品の付加価値を高めて販売単価、魅力度の底上げを行おう」や「お客様の心を動かすには商品ではなく物語(ストーリー)を売れ」の内容も参考にしてほしい。
ブランド商品型の販売戦略
最後はブランド商品型の販売戦略について説明していこう。
ウェブサイトで世界観を表現
ブランド商品型の場合、お客様はその商品の機能がいかに優れているよりも、そのブランドが好きだから、手にしたいからという心理的な理由で購入することが多い。
だから全てのお客様に気に入られようとする必要はない。一部のコアなお客様を増やしていけばよい。
そのためにはウェブサイトの作りこみを徹底して行おう。ネットショップを開業する際には無料のサービスを利用するのではなく、制作会社に依頼して完成度の高いショップにしよう。ブランドがもつ世界観がショップからあふれ出るようなクオリティの高さが求められる。
媚びるサービスはしない
ブランド戦略を取っていくのであれば、お客様に媚びるようなサービスは控えよう。例えばバーゲンセールを過度に行ったり、ポイント2倍月間などのキャンペーンは、ブランドとしての質を下げてしまう行為だ。
もちろん商売はお客様がいないことには始まらないので、お客様に対して横柄な態度をとってよいというわけではない。
お客様に継続して愛用いただけるブランドとなるためには、お客様に媚びる施策に力を使うのではなく、ブランドイメージの構築といった部分に一番力を使うようにしよう。
おわりに 方向性を間違えないこと
世の中の売れるショップはしかるべき戦略のもとに運営がされている。ただ商品を並べているだけではないのだ。そしてどのような戦略を立ててショップ運営をしていくかは、取り扱う商品ジャンルによってだいたい決まってくる。
全国的に無名の商品にも関わらず、商品名をタイトルに設定していないだろうか? 自社一丸となって商品を開発したはいいが、ネットショップでその魅力をお伝えするのをおろそかにしていないだろうか? 今一度ショップのつくりを見直してみるのも良いかもしれない。
これからネットショップを始めようという方も、取り扱う商品ジャンルを考慮した上で、最も適切な戦略を取っていくようにしよう。
【著者からの一言】
鍵谷 隆 -KAGIYA TAKASHI-
当記事は2016年ごろ、私がECサイトのコンサル経営をしていた時期にまとめたノウハウ集だ。そのため外部サイトへのリンクが切れていたり、Googleや各種ASPなどの外部システムの仕様変更などで状況が変わっている可能性があることだけは了承してくれ!
ただ商いの本質は変わることはない。ネットショップ運営でお困りの経営者や担当者なら、当サイトの記事も必ず役に立つはずだ。全てのEC関係者に幸あれ。検討を祈る!