商品やサービスを販売する際に広告を使うというのは、商売の基本。テレビコマーシャルや電車の中吊り広告、道路上の立て看板まで、世の中は宣伝・広告であふれている。
そしてネットの世界にはネットの中ならではの広告がある。その中でも最も利用頻度の高い広告がリスティング広告だ。
今回はネットショップの運営に効果的なリスティング広告について、その基本と運用のコツをご説明していく。
リスティング広告とは
リスティング広告とは検索連動型広告とも呼ばれ、検索結果の上部や右側に表示される広告のこと。
実際の検索画面では、上にある図の赤枠内がリスティング広告として出稿されたページ。
しっかりと「広告」の文字が確認できる。
図の例では「リスティング広告」と検索した場合に、リスティング広告の運用を代行している会社のサイトが、広告枠内に表示されていることが分かる。
リスティング広告の役割
ネットショップの集客のひとつに、検索エンジンからの自然検索があるが、検索結果はそう簡単に上げられるものではない。そして検索結果が上位にあるページの方が閲覧される可能性が高く、検索順位が下位になればなるほど人の目にはつかなくなる。
だから検索結果の一番上や右端の目立つ部分の枠を、お金を出して購入するのだ。そうすることで、検索したユーザーにクリックされやすくなり、自社の商品をアピールすることができる。
リスティング広告の費用
リスティング広告の出稿費用については、その他の広告のように月額○○円というような計算ではなく、少々複雑だ。入札単価 × クリック数で広告費用が決定する。
クリック課金型
リスティング広告はクリック課金型広告とも呼ばれており、その名の通りクリックされることで課金されるシステムになっている。逆に言えば広告出稿してもクリックされなければ費用は発生しない。
成果報酬のような考え方なので、出稿する側としても無駄な広告費を使うリスクが少ないというメリットがある。
入札方式
気になるのはクリックが発生した際に、いくらの広告費用が掛かるかだろう。
リスティング広告は入札方式というシステムのため、広告を出稿するキーワードによって費用が変わってくる。
例えばブライダルリングを販売しているネットショップであれば、「結婚指輪」というキーワードで検索したユーザーに広告を表示させたいと思うだろう。リスティング広告は入札方式のため、「結婚指輪」という検索キーワードでの広告出稿費用を、出稿する側が自由に決めること(入札)ができる。
もし「結婚指輪」というキーワードに対して100円の入札をして、その他の競合企業が50円や80円という額で入札していた場合には、100円で入札した事業者は、広告枠の中でも一番よい場所に広告が表示されることになる。しかしその他の企業の入札額が200円や500円だった場合には、入札額が低いため表示すらされないこともある。
※厳密には入札額だけでなく、広告の出稿内容とウェブサイトのコンテンツがマッチしているかや、広告を出すページの質も影響してくる。
基本的な考えは競合企業が多ければ多いほど、クリック単価は上昇すると思ってもらえればよい。
2大検索エンジンで異なるサービス
検索エンジンは日本では主にGoogleとYahooの二大検索エンジンがシェアを占めている。そしてそれぞれの検索エンジンで提供しているサービスが異なる。(上記で説明した理屈は同じなので安心してほしい)
GoogleはGoogle AdWords(アドワーズ)と呼ばれるサービスを提供している。利用するにはGmailのアドレスを取得してアカウントを作成する必要がある。
アカウントを作成することで、リスティング広告を出稿する際に参考となる、特定キーワードの検索回数や入札価格の目安を知ることができる「キーワードプランナー」という機能も使うことができる。
※キーワードプランナーの使い方については後に説明する。
Yahoo
Yahooはスポンサードサーチと呼ばれるサービスを提供している。利用するにはYahoo! JAPANビジネスIDを取得する必要がある。
Googleアドワーズはクリック数に応じて自動請求されるサービスがあるのに対して、スポンサードサーチはアカウントに対して事前入金が基本となる。
リスティング広告のコツ
リスティング広告の運用は下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるではいけない。広告費用を抑え最大限のパフォーマンスを発揮するためにも、運用のコツをおさえておこう。
キーワードの選定
リスティング広告の出稿において、キーワードの選定は非常に大事。商品やサービスに見合わないキーワードを選んでしまえば、せっかく用意した広告費も無駄になってしまう。
やみくもにキーワードを設定するのではなく、しっかりとマーケティングしてキーワードを吟味するようにしよう。
まずはキーワードの検索回数を調べる
キーワードを選定するには、そのキーワードがどの程度検索されているか、需要を把握しておこう。
使用するツールはGoogleアドワーズでアカウントを作成することで使用できる、キーワードプランナーというツール。無料で誰でも利用できるので、使い方を簡単にご説明していこう。
キーワードプランナーはGoogleアドワーズのホーム画面から、上図の赤枠の部分([運用ツール]→[キーワードプランナー])をクリックすることで立ち上げることができる。
上図がキーワードプランナーのホーム画面。赤枠の「検索ボリュームと傾向を取得」をクリックする。
検索回数を確認したいキーワードを「キーワードを入力」欄に入力し、「検索ボリュームを取得」ボタンを押そう。
するとキーワードに対しての月間平均検索回数を知ることができるのはもちろん、広告を出す際の入札単価の推奨金額まで教えてくれる。検索回数や入札金額の目安が分かれば、広告費にかける予算を見積もったり、利益率の計算にも役立つだろう。
そして当たり前のことだが、検索回数が少ないキーワードよりも、検索回数が多いキーワードに対して広告を出した方が、多くのユーザーに宣伝することができる。
以上はキーワードプランナーについての使い方をご説明してきたが、他にもトレンドキーワードを調べるための「Google トレンド」というサービスもある。
こちらは急上昇ワードを調べたり、キーワードの人気の推移を調べることができるため、そのキーワードが現在どれだけ注目されているかを調べるのに最適。話題のトピックに絡めた広告を出すという目的には使えるサービス。
費用対効果の高いキーワードを調べる
どのキーワードで広告を出すかは、検索回数の高さだけではなく、費用対効果の高さも意識してほしい。
費用対効果が高いというのは、検索回数が多いわりに、入札単価が低く済むキーワードのことだ。
入札単価の仕組みは、そのキーワードに対して広告を出したい広告主が多ければ多いほど高くなる。逆に広告主が少なければ推奨入札単価も低くなる。
上の項でご紹介したキーワードプランナーで、検索回数と推奨入札単価を知ることができるのは説明したが、そこから検索回数が多いわりに、推奨入札単価の低いキーワードを根気よく探していこう。決して多くはないが、まれに存在するため、一部では「おたからワード」とも呼ばれていたりする。
まずは小額の入札から
リスティング広告はキーワードごとに入札単価を設定することが可能だが、いきなり推奨入札単価をそのまま設定するのは止めておこう。まずは推奨単価より低い金額を設定する。
推奨入札単価はあくまで目安なので、それより低い金額でも広告が表示されることはよくある。ただ表示回数や検索順位は低下してしまうので、どの額での入札が一番パフォーマンスが高いのかを、データを取りつつ検証していこう。
広告文の設定
広告の効果を上げるには、ユーザーの興味をひく広告文を設定することが重要だ。
以下がGoogleアドワーズの広告設定画面になる。
赤枠部分に広告見出し、広告文1、広告文2を設定する。
広告の見出しが全角15文字まで。広告文1と2にはそれぞれ全角19文字の設定が可能。
以下がYahooのスポンサードサーチの広告設定画面になる。
スポンサードも同じようにタイトルと広告文を設定する箇所が設けられており、Googleアドワーズと同様、見出しが15文字まで。広告文1と2にはそれぞれ19文字の設定が可能。
助動詞や接続詞は極力除く
広告文は短い文字数の中で、伝えたいことを伝えなければならない。
そのため「です」や「ます」などの助動詞、それから「だから」や「しかし」などの接続詞は極力省いて、本当に必要な単語を優先的に並べるようにしよう。
例えば和食器を販売するネットショップの場合なら「和食器の販売実績多数!品揃え業界随一」「大特価で即日発送!1万円以上送料無料」といったような文言設定が理想的。平仮名が少なく中国語っぽくなってしまうが、意味は伝わるだろう。
広告は数パターンを用意して検証
広告文を一つ用意して終わりではいけない。どんな文言設定がユーザーにとって響くのか? クリック率などのデータを取りながら検証していき、一番パフォーマンスのよい内容を見極めていこう。
キーワードや広告内容はプロが設定したとしても、初めからうまくいくことはないという。効果検証して改善を繰り返すことが大切。
モバイルユーザーを意識
リスティング広告はPCからの検索だけではなく、スマートフォンやタブレットといったモバイル端末からの検索にも対応している。基本はモバイルにも広告が表示されるような仕組みなのだが、モバイルにも広告の表示が必要なのかを考えよう。
スマートフォンの普及は加速しており、モバイルファーストと呼ばれる、操作性や利便性でスマホやタブレット端末の優先順位を上げる考え方も浸透し始めているが、果たして御社のECサイトはどの端末からのアクセスが多いのだろうか。
Googleアナリティクスなどのアクセス解析ツールを使えば、ショップに対してのアクセスが、PCが多いのかモバイルが多いのかを確認できる。もしほぼすべてのユーザーがPCからのアクセスであれば、モバイル端末への広告出稿はもったいないので停止するというのも一つの手だ。
※逆にスマートフォンにだけ表示するということはできないので注意
ターゲット層を分析してサービスを使い分けしよう
GoogleとYahooで、無条件にどちらのサービスも利用すればよいというわけではない。ネットショップを利用するターゲット層を考慮したうえで、どちらのサービスを利用するかを決めたほうがよい。
一般的には「女性はYahooを好んで利用する」や「若年層ほどGoogleの利用率が高くなる」といったことが言われている。そのため年配の女性をターゲットとしているショップであればYahooのスポンサードサーチをメインに運用するべきだし、若年層向けの商品を扱っているならGoogleアドワーズに比重を置いた運用を心がけたほうがよいだろう。
リスティング広告が抱える問題点
リスティング広告の優れている部分は入札方式であり、ショップオーナーが自ら広告にかける費用を決められることにある。広告におけるコンバージョン率を分析していけば、広告にかかる負担が利益率を圧迫し過ぎるということもない。
そんなリスティング広告はEC業界においても、最も一般的な広告手法の一つだろう。しかし近年になってリスティング広告のある問題が話題になっている。それは入札価格の高騰だ。
先にもご説明したが、入札単価は需要が多ければ多いほど高くなる仕組みになっている。ネット通販業者が急速に増加している今、入札価格も需要の増加に伴い上がっている。広告を出したのはよいが、利益が全然残らないという事業者も多い。
コンテンツマーケティングという道
リスティング広告の高騰という流れもあり、近年では広告費をかけずに集客を行うコンテンツマーケティングという手法を実践する企業が増えてきた。EC業界でもよくメディア化対応と呼ばれている。
コンテンツマーケティングについては「EC業界でも今後はコンテンツマーケティングが加速する時代に突入」の記事で説明しているので、こちらを読んで理解してほしい。
おわりに 広告は御社の方針や必要に応じて
リスティング広告の基本と効果的な運用について説明してきたが、ネットショップでも絶対に利用したほうがよいというわけではない。例えば「すぐにでも売上げを出したい」や「商品の認知スピードを加速させたい」といった場合には、リスティング広告は有効に利用できる。逆に利益率優先という場合には適さないかもしれない。
リスティング価格が高騰している背景もあるので、どのような販売戦略を取っていくのか? ネットショップの成長スピードはどの程度を想定しているのか? といったところを検討してから、広告出稿が本当に必要なのかを決めるようにしよう。
【著者からの一言】
鍵谷 隆 -KAGIYA TAKASHI-
当記事は2016年ごろ、私がECサイトのコンサル経営をしていた時期にまとめたノウハウ集だ。そのため外部サイトへのリンクが切れていたり、Googleや各種ASPなどの外部システムの仕様変更などで状況が変わっている可能性があることだけは了承してくれ!
ただ商いの本質は変わることはない。ネットショップ運営でお困りの経営者や担当者なら、当サイトの記事も必ず役に立つはずだ。全てのEC関係者に幸あれ。検討を祈る!