ネットショップのリピーターをつくる施策の一つとして、かつては絶大な効果を誇っていたメールマガジン。
現在はLINEのようなチャットツールの普及や、迷惑メールの増加によって、メルマガの開封率は年々下がっていると言われているが、ネットショップの販促ツールとして利用しないよりは、利用した方が絶対にいい。
怪しい業者からメールアドレスリストを購入して、無造作にメールを送りつけるのは迷惑メールとして扱われてしまうが、一度でもショップを利用していただいたお客様に送付するメールマガジンは、再度ショップを利用してもらうきっかけ作りにもなるのだ。
それではネットショップ的メールマガジンの活用術についてご説明していこう。
メールの差出人にはショップ名を表示
メールマガジンを配信するメールアドレスは決まっているだろうが、お客様のメールボックスに届いたときに、差出人名にはショップ名が表示される設定になっているだろうか?
もし個人名や○○○.comというアドレスがそのまま表示される設定になっているのなら、即刻ショップ名表示に設定を見直そう。
メルマガの目的は直接的な商品購入だけではないのだ。ショップの認知という役割も担っている。一度利用したお客様なんだからすで認知されているよね? と思うかもしれないが、ネット通販を利用するお客様はいちいちショップ名まで覚えていないことが多い。
開封されなくてもよい
認知度を高めるという意味だけで考えるなら、開封されなくてもよいのだ。お客様がメルマガをゴミ箱に送るときには、たいていの場合は件名と差出人名だけを見て、自分にとって必要か不必要かを一瞬のうちに見極めてゴミ箱へ送る。
ゴミ箱行きになってしまえばメルマガを配信する意味がないと思われるかもしれないが、このときに差出人名が目に入るということが重要で、お客様は「またどこどこのネットショップからメルマガが来ているな」と認識してもらえる。
ユーザーの深層心理の底にショップ名を刷り込んでいくことで、ショップで取り扱っている商品をお客様が購入しようと思った場合に、ショップ名を真っ先に思い出してもらえる。
開封率を上げる件名を設定
差出人名がショップ認知の役割を果たしているなら、件名は開封率を向上させる役割を担っている。
「○○ショップのメールマガジン」というなんの面白味もない件名ではお客様も開封しようと思わない。お客様の貴重な時間を頂いてメールを読んでもらうには、ちょっとした工夫を加えることが大事になる。
短すぎず長すぎず
まずメルマガの件名は短すぎてもいけないし、逆に長すぎてもいけない。
件名が短いとそこから伝わる情報が少なすぎて開封しようという気持ちが生まれないし、長すぎると件名を読むこと自体が面倒になってしまう。お客様は一日に何通も来るメルマガを、一瞬で開封するかしないかを判断しなければならないため、件名を長くしすぎることは得策ではない。
また一説には人が一瞬で理解できる文字数は16文字とも言われている。それを考慮するとメルマガの件名は16文字~35文字ぐらいが理想だといえる。
ついついあれもこれもと情報を詰め込み過ぎてしまいたくなるが、その気持ちをグッと抑えて本当に伝えたい言葉選びを心がけよう。
具体的であること
件名は具体的な内容にすることが大事。抽象的な内容では情報量という点で劣ってしまう。
例えば牛乳を販売しているネットショップなら「北海道の美味しい牛乳を大特価で販売中!」という内容よりも「北海道で顧客満足度No.1に輝いた牛乳を20%OFFで販売中!」とした方が魅力度が増してこないだろうか。
数字を入れる
上記の牛乳の例で分かるように、件名の文字列の中に数字を入れるとより具体的になり、信用度が増す。
数字の使い方としては「○○を改善する3つの方法」や「100人中97人がまた使いたいと答えた○○」など、できるだけ細かい数字であればあるほど信用度も増していき、具体性も強くなる。
ターゲットを入れる
ターゲット層を入れることで、より具体的な内容となりユーザーの心に響く件名とすることができる。
例えば「30代女性に人気沸騰中の○○」とすることで、30代女性にとっては刺さる件名となる。これは心理学的にカクテルパーティ効果と呼ばれており、自分に関連するものは目に留まりやすいという効果を狙ったものである。
ストーリー形式での連載配信
メルマガにストーリー性を持たせて、毎回の配信を楽しみにしてもらうのも効果的な手法だ。
この手法は近年テレビコマーシャルにも利用されている。例えばソフトバンクのCMでは出演者それぞれにキャラクターを割り当て、ストーリー形式で展開している。
そうするとユーザーとしても広告という目線ではなく、そのストーリー自体を楽しむようになる。さらに次はどんな展開になるのだろうかと、今後の配信を待ちわびるようにもなる。
ただし読者を魅了する内容にすることは大切だが、ショップへの送客や商品の購入が目的だということも忘れてはいけない。上手にストーリーを展開させながら、商品情報を絡めた内容にしていこう。
メルマガを配信する頻度
メルマガは送り過ぎてはいけない。どんな魅力的な内容であっても、1日に何通も送付しては迷惑メール扱いされてしまう。
メルマガとは押し付けるものということを理解する必要がある。読むか読まないかは読者が決める問題だが、読者にとって興味のない話題でも、一方的に送りつけていることに間違いはない。人は無理やり押し付けられることに嫌悪感を覚えるものなのだ。
ではメルマガを配信する適切な頻度はどのぐらいか? となるが、これは実に難しい問題であり、これといった正解はないだろう。だがメルマガを毎日送信しても迷惑と思われないための工夫は可能だ。
ためになる情報を入れる
読者にとって有益な、ためになる情報が入っていれば毎日メルマガが届けられても、嫌悪感を感じる人は少なくなる。
例えば毎朝決まった時間に、星座別の今日の運勢占いを付けたメールにしたり、会社や学校で話のネタになるような豆知識をつけたり、毎日読む意味をメルマガにプラスしてみよう。
最低でも1週間に一度は送付
メルマガの送り過ぎはよくないが、送らなすぎもいけない。先に説明したように、メルマガにはショップの認知という効果も持ち合わせている。
1ヵ月に数件しか届かないメルマガであれば、その他の山のように配信されてくる広告メールに埋もれて、ユーザーの印象に残らない。1日に1回から最低でも1週間に1回ぐらいのペースでメルマガを配信するようにしよう。
ユーザーによって内容を変える
メールマガジンを一件づつコツコツ送信している方はいないと思う。多くの方は一斉配信が可能な同報メールソフトやメルマガ配信サービスを利用していることだろう。
同報メールソフトは非常に便利で使えるツールだが、全ての読者に同じ内容のメルマガを配信してはいないだろうか? 効果的なメルマガ活用を目指していくなら、ユーザーの性別や年齢層に応じて内容を変更していきたい。
顧客管理を徹底する
ネットショップを運営しているなら、お客様のメールアドレスを知ることができるのは、商品を購入いただいたときだろう。その際にできれば、ユーザーの年齢層も取得できるようなカートシステムが理想だ。
集めた顧客情報をリスト化する際には、以下の情報は最低限押さえておきたい。
- メールアドレス
- お客様氏名
- 性別
- 年齢層
性別と年齢層をリスト化して、メルマガを送付するときにそれらの項目でフィルタリングして配信内容を切り替える。
こうすることで先にご紹介したカクテルパーティ効果の力を120%発揮した、ユーザーに振り向いてもらえるメールを打つことができる
読みやすさを意識する
コンバージョンに結び付きやすいメルマガは、読みやすいということも大事だ。
回りくどくなく、簡潔に、シンプルな言葉づかいで、的確に物事を伝えるのが理想だが、文章力は人それぞれ違い、すぐに上達させることは難しい。文章力はいくつもメルマガを書いているうちに次第に上がっていくだろう。とにかく場数を踏むしかない。
改行を上手に使う
小手先のテクニックになってしまうが、改行を上手に使うと読みやすくなる。ぎちぎちに文字を詰めすぎず、時には2行以上の改行をすることで、全体の文面がすっきりした印象になり、読者としても最後まで読んでみようかなという気持ちになる。
下記のサンプル1とサンプル2では、サンプル2の方が読みやすいと感じるはずだ。
【サンプル1】
○○ 様
この度は弊社の商品をお買い上げいただきありがとうございます。
お客様の暮らしをより豊かにさせてくれる商品のご案内をさせてください。
商品A
全て天然の素材を使用し、職人の手によってひとつひとつ丁寧に仕上げています。
使い心地は抜群で、ワンランク上の暮らしをご提供します。
商品B
…
【サンプル2】
○○ 様
この度は弊社の商品をお買い上げいただきありがとうございます。
お客様の暮らしをより豊かにさせてくれる商品のご案内をさせてください。
商品A
全て天然の素材を使用し、職人の手によってひとつひとつ丁寧に仕上げています。
使い心地は抜群で、ワンランク上の暮らしをご提供します。
商品B
…
1行の文字数は30文字前後
ビジネスメールの基本的な知識になってしまうが、メールにおける1行の文字数は30文字前後で改行することを意識しよう。あまりにも1行が長すぎると非常に読みずらい。
また30文字でぶつっと切って改行してはいけない。必ず30文字までというルールはないため、ある程度単語のまとまりを意識しながら、単語の終わり(意味の切れるところ)で改行するようにしよう。
結論から先に述べる
読者の方はとにかく時間がない。毎日大量にメールが届く中で、せっかくメルマガを開いたものの、冒頭部分にその日の店主の気持ちなど、読者にとってどうでもよい情報が記載されていれば、その先を読み続けようという気持ちも萎えてしまう。
だから重要なこと、伝えたいこと、結論は真っ先に述べるようにしよう。
冒頭部分で読者の興味をさら引き付け、詳細を読んでもらうという流れが理想的だ。
SNSツールとの連携も
メールマガジンには必ずウェブサイトへのリンクを張っていると思う。しかしメルマガが嫌われる理由としては、この商品ページへのリンクがあるということが大きい。人は広告や宣伝を嫌うものなのだ。
だからあえて商品ページへのリンクを付けないという手もある。それではショップの購買に結びつかないのでは、と思うかもしれないが、SNSツールへのリンクを貼ってはいかがだろうか。
「Facebookでもお客様の暮らしを楽しくさせる素敵な情報を発信しています!」といったように、物販という”におい”をできるだけ消して、単純に読者にとってためになる情報を発信している感を強くするのだ。
Facebookのファンを増やす施策としても効果を発揮してくれるし、メルマガでプッシュ型の営業をするよりも、ソーシャルメディアで引き込み型の営業をする方が、固定客として定着しやすい。
SNSについては、まだアカウントを取得していないようであれば、すぐに取得しよう。
メールマガジンで守るべきルール
最後にメールマガジンを送付する上で守らなけらばならないルールをご紹介しておく。
と言うのも、迷惑メールが増えすぎた現代ではそれを規制するために、2008年から総務省によって特定電子メール法というルールが設けられているのだ。これに違反してはコンプライアンス問題につながる。
法人の場合は3000万円以下の罰金を課せられることもあり、知らなかったでは済まされない世界だ。
メルマガ送付の同意を得る
まずはメールマガジンを送付してもよいかどうかの同意を得なければならない。配信を拒否しているお客様や、まったくショップを利用したことのないユーザーに対して、無造作にメルマガを配信するのは禁止された行為だ。
ネットショップのカートシステムで、お客様情報と一緒にメルマガ配信の許可をチェックボックスなどを利用して確認しておこう。
配信停止の連絡先の記載
読者によっては一度許可したメルマガをもう受け取りたくないと思う方もいるだろう。そんなときに配信停止の連絡先がなければ、メールアドレスを変えない限り不必要なメールが送られてくる。これでは迷惑メールとして扱われても仕方がない。
だから、メルマガの配信停止や受信拒否の意思を示すための返信用メールアドレスを記載したり、配信停止URLを設置しておかなければならない。
よく本文の最後に「メール配信停止手続きは次のURLより手続き下さい。」という文言の記載が見受けられるが、これは特定電子メール法を意識してのことである。
送信者の情報を記載
メール本文内には送信者の情報を必ず記載しなければならない。
受信者が認識しやすい本文冒頭には、送信者の氏名又は名称を記載する。個人であれば個人名、法人であれば法人名。
他にも問い合わせを受け付けることのできる送信者の住所情報や電話番号、電子メールアドレスなどが必要になる。メールソフトの署名機能に当たる部分だ。
特定電子メール法に関する詳しいガイドラインについては、こちらの法務省のウェブサイトを参考にしてほしい。
おわりに 読者のためを思うことが大切
メールマガジンの役割としては、ショップへの認知やリピート購入であり、テクニックとしては件名でお客様の興味を引き開封してもらい、冒頭部分でさらに読み進めたいと思わせ、読者にとって読んでよかったと思わせる内容に仕上げていく。
そしてメルマガを配信する上で一番大切にしたいのは、お客様の気持ちだ。店主がお伝えしたいことを配信するのではなく、お客様が知りたいことを意識して配信内容を考えるようにしよう。ここを忘れると迷惑メールとして扱われてしまう。
まだまだメールマガジンはネットショップにとって効果のある営業手法であり、適切な運用方法を知ったうえで利用していきたい。もしこれからメルマガ配信ツールを選ぶなら「業務効率化に役立つメールマガジン配信システムやソフト8選」を参考にしてほしい。
【著者からの一言】
鍵谷 隆 -KAGIYA TAKASHI-
当記事は2016年ごろ、私がECサイトのコンサル経営をしていた時期にまとめたノウハウ集だ。そのため外部サイトへのリンクが切れていたり、Googleや各種ASPなどの外部システムの仕様変更などで状況が変わっている可能性があることだけは了承してくれ!
ただ商いの本質は変わることはない。ネットショップ運営でお困りの経営者や担当者なら、当サイトの記事も必ず役に立つはずだ。全てのEC関係者に幸あれ。検討を祈る!