個人での利用はもちろんのこと、企業のプロモーションツールとして利用されることも、もはや当たり前となったSNSツール。そしてネットショップにおいても、販促ツールとしてSNSを利用したソーシャルメディア運用は欠かせないものになってきている。近年ではソーシャルコマースと呼ばれることもある。
だが多くのネットショップでSNSツールを十分に活かせていない事例が多く、ときには更新自体がストップしていることもある。なぜそのようなことが起きているのかと言うと、多くの場合は想定していたような成果を得られなかったからだろう。
しかしそれはSNSツールが悪いのではなく、運用の仕方が悪いのである。せっかく無料で使えるツールなのだから、しっかりと購買に結び付けられるような投稿のコツを覚えて、上手なソーシャルメディア運用をしていこう。
前提: SNSは趣味で利用するもの
まずSNSツールをビジネスで利用する前に、ユーザーは趣味の一つとして利用していることを忘れてはいけない。B to BツールではなくB to Cツールなのだ。たまにSNSへの投稿内容が商談用みたいになっているのを見かけることがあるが、それはいけない。
ユーザーの立場になって考えてほしい。もし自分が趣味で利用しているFacebookのタイムラインに「商品A 1200円で発売中!商品B 2000円で販売中」という内容の投稿ばかりが流れてきたらどうだろうか。一部のユーザーはもうフォローするのは止めようと思うはず。
そうした紹介も一部の熱狂的なファンなら効果があるかもしれないが、ソーシャルメディア運用の目的は、一部のコアなファンに対して商品情報をお届けするのではなく、多くのユーザーにそのショップのファンになってもらうことにある。
SNSツールの投稿は、趣味で利用しているユーザーの「興味や関心事といった欲求をいかに満たすことができるのか」といった目線で投稿内容を考えていくようにしたい。
やってはいけない投稿内容
商品情報ばかりを配信
先程も簡単に説明したが、毎回商品情報ばかりを投稿していてはいけない。厳密に言えば、SNS上で商品を紹介することは悪いことではないのだが、商品ページに記載しているような、仕様やメリットなどの商品説明ばかりを投稿するのは悪い例だ。だが多くのSNS活用失敗例では、こうした内容を投稿している事業者が多いので注意してほしい。
商品情報はECサイト側の商品ページで確認するものであり、ソーシャルメディアの役割はその商品ページを覗きたくなるような投稿にするべきである。その手法については後述する「理想的な投稿内容」の項を確認してほしい。
内輪ネタ
フォロワーにとってよく意味の分からない、内部事情を知っている人だけが楽しめるような内容になっていないだろうか。投稿している人間や身内にとっては面白いかもしれないが、内輪ネタは何も知らないユーザーから見れば、なにも面白くないどころか、シラケてしまう。
また内輪ネタではないにしても、読者を笑わせるような、いわゆる”面白ネタ”は難易度が高い。ましてやSNSツールのような短文形式の投稿では非常に高いスキルが必要になる。
もし笑いが生まれる投稿にしたいのであれば、その道のプロに依頼するべきであり、それが難しいのなら面白ネタは控えたほうがよい。
理想的な投稿内容
SNSツールのNGポイントを理解したところで、効果を発揮する理想的な投稿についてご説明していこう。SNS上級者になるためには、以下に挙げるポイントを意識した投稿をしていこう。
商品の使い方提案
先にも説明したがソーシャルメディアの役割は、商品紹介ではなくECサイトへ送客することである。つまりSNSでの投稿でその商品を「買いたい!」という気持ちにさせるのではなく、「なんかいいかも、ちょっと詳しく見てみたいな」と思わせることである。
そのためには商品の使い方提案をするのが効果的。「このようなシチュエーションで役に立ちますよ」とか「こんな使い方をすると、もっと日々の暮らしが楽しくなりますよ」といった内容を投稿することで、それを見たユーザーは「この商品があればもっと生活が豊かになりそう」と、さらに想像を膨らましてくれる。
食材系ECサイトなら、その食材を利用した料理を並べた食卓の風景だったり、ショップオーナー考案のオリジナルレシピだったりを公開する。また家具のECサイトなら、おすすめのインテリアコーディネート例などが理想的。その商材を活かした利用シーンを提案できるような投稿にしていこう。
スタッフによる商品についての感想
実際にショップスタッフが商品を使ってみた感想を述べてもよいだろう。SNSツールはユーザーとの心の距離が近くなるツールであり、宣伝用のキャッチコピーやかしこまった文章よりも、生の声の方が好まれる。
そのためにはショップスタッフも積極的に自店の商品を利用して、個人的な感想でもよいので、どんな部分が気に入ったのかを自分なりの言葉で伝えよう。そうした生の声は共感を呼びやすく、ユーザーの心に響きやすい投稿となる。
ショップの裏側を配信
SNSだから知ることのできる情報、ショップの裏側を配信するのもよいだろう。例えばショップのバイヤーが「本日はこんな商品を仕入れました」と投稿すれば、もうすぐ新商品が入るんだなということが伝わるし、運用スタッフが「商品の梱包時にはその形状と質によって使用する緩衝材を使い分けています」といったことを説明すれば、しっかりと手間をかけているんだなと伝わる。
SNSツールはただの販促ツールではなく、ショップ自体の本質やスタッフの想いを理解してもらうような、ブランディングツールとしても機能するのだ。ECサイト上には掲載するまでもないが、スタッフの熱い想いや知られざる手間なども、SNSで配信していくとよい。
ハッシュタグを利用する
TwitterやInstagramではハッシュタグを利用した投稿をすることで、より多くのユーザーにリーチさせることができる。ハッシュタグとは任意の文字列の頭にシャープ(#)を付けたタグのこと。
例えばスポーツ用品メーカーのアディダスに絡めた投稿をする場合、投稿本文に「#アディダス」とハッシュタグをつけておくことで、フォロワーだけでなくアディダスの情報について検索をかけたユーザーの目にもとまることになる。
特にインスタグラムではジャパン・ハッシュタグ・プロジェクトと呼ばれる、毎月決まったお題にそったハッシュタグの投稿をするという楽しみ方もあり、インスタグラムの公式アカウントによって秀逸な投稿としてピックアップされれば、爆発的なリーチを生みやすい。
ハッシュタグキャンペーンを実施
「ネットショップの賑わい感を演出するキャンペーン企画9選」でもご紹介しているが、ハッシュタグを利用してキャンペーンを開催することができる。なによりSNSツールを利用したキャンペーンは、リアルタイムで反応を確認できることが利点だ。
キャンペーンの内容は懸賞やクーポンコードの配布で、従来のハガキでの投函ではなく、特定のハッシュタグをつけた投稿自体が、キャンペーンへの応募となる。
ネットショップの認知度向上や集客、リピーターの増加に効果があるため、是非利用してほしい。
SNS限定クーポンを配布
SNSの投稿でネットショップで利用できる限定クーポンを配布する。こうした金銭的な恩恵は、SNSをフォローしているユーザーにとっては、”フォロワーになっていて良かった”と思ってもらえるメリットが生まれる。
SNSも企業にとってみれば広告の一種だが、ユーザーには広告と感じさせない、思わせないことが大事であり、もっと言うなら、ユーザーがこの企業のSNSをフォローしていてよかったと思わせることが大切である。そのためフォロワーになっていたからこそ、恩恵を受けられるクーポンもまた効果的である。
適切な投稿頻度
これはSNSツールの特色によっても異なるのだが、各種ツールには適切な投稿頻度というものがある。あまりにも多すぎるとユーザーはうんざりするし、少なすぎるとユーザーの印象に残らない。
Facebookなら1日に10回も投稿していると、せっかくフォローしてもらっているユーザーも自分のタイムラインがそのページの投稿で埋まってしまい嫌気がさすだろう。ただしTwitterであれば、1日10回の投稿も問題ない数値となる。
弊社ではネットショップで利用できる主要SNSツールの投稿頻度は、以下のように考えている。
- Facebook: 1回~4回/1日
- Twitter: 5回~15回/1日
- Instagram: 1回~3回/1日
ただしユーザーからのいいねやシェアなどの反応をより多く得たいのであれば、FacebookやInstagramの投稿は1日に1回の投稿頻度に抑えておくと、最も多くの反応を得ることができる。
投稿のタイミング
投稿頻度もそうだが、投稿のタイミングについても意識するようにしたい。極端な話、SNSを利用するユーザーが少なくなる深夜帯に投稿していても、日中よりも反応が薄くなるのは間違いない。
適切なタイミングを考えるときに大事なことは、フォロワーとなっているユーザーは、いつの時間帯にSNSツールを利用していることが多いのか? ということ。サラリーマンを対象にしているなら、朝の通勤時間中やお昼休みを狙うとよいし、主婦ならば家事が一息つく午前10時過ぎや、昼下がりを狙って投稿するとよい。
Facebookであれば、インサイトの項目からファンがオンラインの時間帯を確認することができるので、そうした情報はこまめにチェックしておこう。
おわりに ソーシャルメディア運用にも戦略を
無料で使えるからと言って、SNSツールの運用を適当にすましている事業者は多いが、その特性を理解して上手に運用すれば、SNSはEC事業者にとって心強い武器となる。
だからどのようなタイミングで、どのような内容を配信していくかは、しっかりと計画を立て、効果測定を行いながら運用していこう。ソーシャルメディア運用も戦略が必要なのだ。
ソーシャルメディア運用のコツは、下記の記事も参考にどうぞ。
【著者からの一言】
鍵谷 隆 -KAGIYA TAKASHI-
当記事は2016年ごろ、私がECサイトのコンサル経営をしていた時期にまとめたノウハウ集だ。そのため外部サイトへのリンクが切れていたり、Googleや各種ASPなどの外部システムの仕様変更などで状況が変わっている可能性があることだけは了承してくれ!
ただ商いの本質は変わることはない。ネットショップ運営でお困りの経営者や担当者なら、当サイトの記事も必ず役に立つはずだ。全てのEC関係者に幸あれ。検討を祈る!