これだけネットショップの数が増えてくると、お客様に自店を認識してもらうだけでも大変になる。例えばワインをネットショップで購入しようとしているお客様がいたとして、ネットショップの数が多ければ多いほど1店舗ごとの印象は薄くなる。どのショップが一番いいかなぁと数店舗をチェックした後に、お目当ての商品を購入する流れは一般的だが、印象が薄かったショップは思い出してもくれない。
お客様に選ばれるためには、まずはお客様の記憶に残ることが大切だ。そして印象を強く残すためには、ショップスタッフを前面に出すことが効果的である。こうすることで「○○の店」という抽象的な印象から「あの人の店」という、より具体的な印象になる。
人を出すことで印象に残りやすくなる理由
なぜショップスタッフを登場させることでお客様の印象に残りやすくなるのかだが、その答えは人は人を認識する能力に長けているからである。これは訓練して養っていくものではなく、生まれつき特性として備わっている能力であり、社会生活を円滑に送るために、特に人の顔には敏感なものである。
何匹もいる犬や猫をそれぞれ識別するよりも、初対面だとしても複数名の人それぞれの識別が容易なのはその証。目・鼻・口・耳という単純なパーツが並んでいるだけなのにもかかわらず、その位置や大きさなどの微妙な違いをしっかりと認識し、それぞれが別人であることを理解できる。
ネットショップでは他店と同じような商材を扱っていると、サイト全体の雰囲気も同じような感じになりがちである。特に楽天市場やYahoo!ショッピングのようなモール系ECサイトは、デザインやレイアウトも似通ったつくりになってしまう。ショップの個性を出しにくい状況であれば、ショップオーナーやスタッフを登場させることで、それが個性となり、お客様の印象に残りやすいショップとなる。
スタッフの個性を表現する方法
画像で登場させる
まず基本中の基本は、ショップスタッフを画像で登場させる。そしてお客様にスタッフの印象を強く与えたいなら、各商品ページにちらっと載せるだけではなく、トップページにもショップスタッフをドドーンと登場させてしまおう。
人の顔は視線を集めやすいので、トップページを訪問したユーザーは、まずはスタッフの顔に視線が移る。そしてそのまま離脱してしまうことを少しでも防止するために、スタッフ写真のすぐそばに、そのショップの概要やセールスポイントを短く説明できる文章やキャッチコピーなどで記載しておく。
こうしておけばユーザーにインパクトを与えつつ、しっかりとショップの概要についてもお伝えできる。
動画を利用する
今どきのネットショップ戦略としては動画を利用するのも効果的。そして動画内には商品だけを写すのではなく、必ずその商品をプレゼンする人の姿も映すようにしてほしい。動画を利用することで、スタッフの雰囲気や人となりといった面も同時に伝わるので、ショップに対して愛着を持ってもらいやすくなる。
商品説明に動画を利用するポイントとしては、カタログに記載されている説明文章をただ読み上げるだけでなく、しっかりと自分の言葉で文章を組み立てていくことが大事。そうした部分に力を入れることで、スタッフの商品に対する愛がユーザーにも伝わり、共感を呼びやすくなる。
動画は使い方次第ではテレビショッピングのような戦略をとることも可能。まだまだ発展途中の販売手法のため、いろいろと試してみる価値はある。ネットショップにおける動画の利用については「Youtube × ECサイト 動画を利用したビデオコマースの幕開け」の記事も参考にしてほしい。
方言を使う
ショップ内の文章に方言を利用するのも個性を演出する方法の一つ。特に郷土品やその地域の特産品を扱っているショップなどでは、商品の魅力を高める効果も持ち合わせている。
ただあまりにも難解な方言を使用してしまうと、何を言いたいのかが伝わらなくなってしまい本末転倒。方言を利用する箇所を限定したり、難しい言葉は使わないなど、読者にとっての配慮をすることを忘れずに。
直筆文字を使う
サイト内で使用する見出しなどには、スタッフ直筆の文字を使うことで、それだけでも個性のあるショップとなる。あまりに下手すぎる文字は好ましくないが、筆文字にすることで、なんとなくそれらしく見えることもある。
近年では手書き文字をデータ化するソフトも多数出ているので、そうしたソフトを利用することで、スマートに直筆文字をデータ化してデザインに取り入れることが可能になる。
ちなみに手書き文字をお洒落にするコツは、下記のウェブサイトで紹介されていたので、興味のある方は参考にしてほしい。
人を前面に出すことの恩恵
スタッフを登場させたり、個性を表現することは、お客様にショップを覚えてもらいやすくなるだけではなく、その他にも嬉しい利点がある。
まずは対面接客を行わないネットショップにおいて、スタッフの顔を確認できるということは、お客様の安心につながる。やはりどこの誰が運営しているのかも分からないショップで商品を購入するよりも、どんな人が運営しているのかが分かった方が、安心してお買い物できる。クレジットで決済をするならなおさらだ。
また賑わい感を演出するにも一役買ってくれる。人の気配の感じられないショップよりも、人の気配を感じられるショップの方が、そのショップを利用する心理的ハードルが低くなる。
以上の点から考えても、ショップスタッフを前面に出していくことは、非常に有用な施策であると言える。
スタッフブログは細心の注意をはらって運営
ショップスタッフを前面に出すからには、お客様にはスタッフ自体に愛着を持ってもらいたい。そこでただスタッフの写真を並べるだけではなく、スタッフブログを始めることがある。
もちろんスタッフをウリにして、そこから商品購入という流れをつくっていく意味では、スタッフブログも効果のある施策ではあるが、世の中の多くのスタッフブログがしっかりと機能していないことも事実である。スタッフブログがショップの収益に結びつかない最大の理由は、お客様のことを無視した内容になっているからだ。
スタッフのことを知ってもらおうと、ただスタッフの日常を発信しているだけでは、ファンも売上げも生まれない。ブログを集客の起点や売上げのきっかけとしていくのは、コンテンツマーケティングと呼ばれる手法であり、常にユーザーのことを意識した内容を発信していかなければならない。
そのためには「ユーザーに好まれる質の高いコンテンツを作る3つのポイント」でも説明しているのだが、以下の3点が大切になってくる。
- 笑い(娯楽要素)がある
- 知識が増える(興味が満たされる)
- 困りごとを解決できる
以上の要素を意識しながら、上手にスタッフを登場させることで、良質なブログが出来上がる。もし現状がただの日記ブログのようになっているのなら「ただの店長ブログも切り口を変えれば良質コンテンツに変化する」の記事を読んで、改善を加えていってほしい。
おわりに ショップではなくスタッフを好きになってもらう道もある
当サイトでは何回も繰り返し言っているが、これからのネットショップはお客様から選ばれるショップになっていかないと、生き残っていくのは難しい。つまりお客様に好きになってもらうのだ。そしてその”好き”の対象は、ショップでなくても、スタッフを好きになってもらうという道もあるのだ。
お客様にとっては「どこで買うのかよりも、誰から買うのか」ということも、購入を決める需要な要素となる。お客様の記憶に残る、印象深いネットショップをつくっていきたいのなら、スタッフを前面に出すことも検討してみよう。
【著者からの一言】
鍵谷 隆 -KAGIYA TAKASHI-
当記事は2016年ごろ、私がECサイトのコンサル経営をしていた時期にまとめたノウハウ集だ。そのため外部サイトへのリンクが切れていたり、Googleや各種ASPなどの外部システムの仕様変更などで状況が変わっている可能性があることだけは了承してくれ!
ただ商いの本質は変わることはない。ネットショップ運営でお困りの経営者や担当者なら、当サイトの記事も必ず役に立つはずだ。全てのEC関係者に幸あれ。検討を祈る!