競合に勝つためにネットショップのマーケティングを考えよう

もともと自分のお店を持ちたかったけど、実店舗を構えるほどの資金はない…という方は、実店舗ほど初期費用を必要としないネットショップで開業される方もいることでしょう。まずはネットショップを軌道に乗せて、資金を貯めてから実店舗をオープンさせる流れもよくある話。

実店舗ほどお金をかけずに自分のお店を持つことのできるネットショップは本当に魅力的。…ですが開業のハードルが低い分、競合他社も多く、オープン後はし烈な競争が待ち受けていることも事実。

既にこれだけネットショップが乱立しているEC業界ですから、今からお店をオープンするなら、きっと後発組になることが予想される。そうした中で繁盛店にしていくには、マーケティングを考えることがなによりも大事。ただ好きだからという理由で、ショップをオープンしていては、お客様が集まらずに早々に撤退ということにもなりかねない。

今回はネットショップのマーケティングについて、開業前と開業後の二つの観点からご説明していく。

 

開業前のマーケティング

ターゲットを明確にする

ターゲットを明確にしなければ、どのようにしてお客様に商品を訴求していくのか、そのプロモーション方法を決めることができない。

もしキッチンタオルを扱うお店があったなら、女性向け販売なら家事の手間を減らすことをアピールしていくとよいだろうし、男性向け販売なら”料理男子”というトレンドに便乗したPRをしていくと売上を伸ばすことができるかもしれない。

なにはともあれ、まずはお客様となるユーザー層の想定をしなければ、なにも始めることができない。そしてターゲットを想定するときは、できるだけ具体的に決めておくと、より緻密な戦略が立てやすくなる。詳細は「ペルソナ設定をしてユーザーの心に響くネットショップを作ろう」を確認してほしい。

 

競合他社を把握する

冒頭でも簡単に説明したが、これからネットショップを開業するなら、間違いなく後発組になる。すでに同じような商材を扱っているECサイトがあるはずなので、競合となるショップを調査しておこう。

調べ方は難しくはない。「商材名 通販」などでインターネット検索すればすぐに調査できる。

 

競合店舗の数を知る

インターネットで検索すれば競合店舗の数はまるわかりだが、競合となりえる可能性のあるネットショップが多ければ多いほど、その競争は激しいものとなる。

イーコマース黎明期の競合が少ない時代は出店すればそれなりに集客できたであろうが、今の時代はそうではない。「ネットショップを始めるなら知っておきたい6つの噂と真実」でも説明しているが、一部のオーナーはネット通販を始めれば何もしなくても儲かると時代錯誤の勘違いしている方も多いので注意してほしい。

競合企業が多ければ、より緻密な戦略を立てる必要があることを理解しておこう。

 

競合の強みを確認する

競合が見つかったら、そのショップが何を強みにしているのかを分析していく。

特にメーカーや卸業者から商材を仕入れているショップでは、他店と全く同じ商品を扱っていることもあるだろう。そうした場合はサービスの良し悪しが購入の決め手となる。もし競合が”即日配送”をウリにしているのなら、こちらは”送料無料”サービスを打ち出すことで、緊急性よりも価格を意識しているユーザーにとっては選ばれるショップとなるだろう。

他店の強みと同じサービスで勝負するのも良いが、できれば他店とは別の強みを持って差別化を図っていくようにしていきたい。

 

自店の強みを考える

他社の分析をすることで、相対的にでも自店の強みが見えてきたり、強化しなければならないポイントが見つかってくるはずだ。ただし弊社では常々クライアントに「価格面で勝負するのは破滅に陥る」とアドバイスしている。

価格面で勝負しようと思えば、中小規模のネットショップは絶対に大手企業に勝つことはできない。それならば、付加価値を高めて客単価を上げる施策や、業務効率化を進めてお客様へのサービスを向上することが理想的だ。付加価値の高める方法については「商品の付加価値を高めて販売単価、魅力度の底上げを行おう」を参考にしてほしい。

また他企業では販売していない独自商品などの絶対的な強みを持っているのなら、さらに特化させて、どの企業にも負けることがないような武器にしていこう。

 

外部環境を把握する

売れるショップづくりの計画は、外部環境も無視してはいけない。

世の中のトレンドをしっかりと確認し、そうした流れに乗ることも大事。例えばインテリア小物を販売しているEC事業者なら、流行りのテイストを意識して商品仕入れを行うとよい。そうすれば「ちょっと北欧ブームは陰りが見えてきたから、今後は色のメリハリの効いた西海岸テイストのアイテムを増やしていこう」といったように、仕入れのポイントも見えてくる。

また越境ECの場合には円安が進めば利益が厚くなるし、逆に円高が進めば価格自体の見直しをしなければならないだろう。それに近年の訪日観光客の増加により、日本製品にはますます注目が集まることも予想できる。

 

開業後のマーケティング

SEO対策

インターネット上を主戦場とするネットショップでは、SEO対策は必要不可欠なマーケティングである。検索上位に表示されればされるほど、より多くのお客様を集めることができる。

それに自然検索によって流入するユーザーは、SNSなどから流入してきたユーザーよりも、購買意欲が強い傾向にある。そのためSEO対策に成功すれば、売上げにつながりやすい良質なユーザーを獲得できる。

ネットショップのSEO対策については「ネットショップのSEO対策で検索順位の上位表示を狙う方法」を参考にしてほしい。

 

SEO対策業者への依頼は慎重に

ネットショップを運営していると、SEO対策業者から頻繁に電話がかかってくると思う。その相手が大手企業だと、信頼してみたくもなるが、SEO対策を外部委託する際には、どのような手法で検索順位を上げるのかを必ず確認するようにしてほしい。

一口にSEO対策と言っても、大きく分けると外部対策と内部対策の2種類がある。そして外部対策をメインとしてSEO対策を行うと、検索エンジンにペナルティを与えられる可能性もあり、ペナルティを食らってしまうと、検索順位が圏外に飛ばされてしまう。そうなってしまっては商売あがったりだ。特に外部からのリンク与えるタイプのSEO対策は、ペナルティを受けやすいので要注意!

今の検索エンジンは非常に賢くなっており、小手先だけのSEO対策はそこまで効果を発揮しないどころか、逆効果になってしまうことも多々ある。ユーザーの求めている良質なコンテンツが上位表示されるようになっているため、いかにユーザーのためになるページ作りをしていくかがSEO対策の正攻法である。

 

SEM対策

SEM対策とは「Search Engine Marketing」の略で、SEOが検索エンジンの検索結果に対する最適化という意味だけを指すのに対し、SEMはSEOに加え、リスティング広告などの検索にまつわるすべての要素を指す言葉。一般的にはリスティング広告のことを指す場合も多い。

ネットショップのマーケティングを考えていく上では、広告からの流入も考えなければならない。リスティング広告の上手な運用については「リスティング広告の基本と効果的な運用方法について」を参考にしてほしい。

 

即効性がある

広告はお金を出すだけあって、集客という面では一番即効性があるツールだ。SEO対策や後述するコンテンツマーケティングは、施策を打ってから効果が出るまでにある程度の時間を要する。

すぐにでもお客様を集めたいのなら、広告を出すのがよい。特にネットショップの立ち上げ当初は自然検索からの流入が期待できないので、広告を上手に利用すると、それなりの集客を見込むことが可能になる。

また広告から流入してきたユーザーは、他の流入経路から来たユーザーよりもコンバージョン率が高くなるという特徴がある。
※「コンバージョン率の平均は業種によって違うが目安は1%」参照

 

予算を意識する

広告を出稿するときには予算を意識しなければならない。特にリスティング広告はクリック課金タイプであり、出稿費用は入札形式となっている。販売利益よりも広告費用が高くなってしまっては、何万個販売しようとも、いっこうに利益がでない。

広告出稿のポイントとしては、需要が高いにもかかわらず入札単価の低いお宝キーワードを狙うと、広告のパフォーマンスが良くなる。利益のことも考えながら、いくらぐらいの広告予算をつけていくのかを、必ず意識して広告運用を行おう。

 

ソーシャルメディア運用

イーコマースならぬ”ソーシャルコマース”という言葉も生まれているぐらいで、FacebookやTwitterなどの各種SNSツールを運用していくことも、重要なマーケティングである。

SNSの利用は、ショップの認知度向上やリピータ顧客の創出という面で効果がある。またお客様からのコメントを頂くことで、ショップの改善点を見つけられることもできる。一方的な情報発信だけではなく、ショップとファンとの双方向の交流が生まれるのも特徴的。

ソーシャルメディア運用については以下の記事を参考にしてほしい。

 

コンテンツマーケティング

EC業界において、今最も注目度の高いマーケティング手法が”コンテンツマーケティング”だ。コンテンツマーケティングの概要としては、商品ページとは別にユーザーにとって有益なコンテンツ(記事)を公開することで、ユーザーをファン化させ、選ばれるショップになるというもの。ECサイトのメディア化と呼ばれることもある。

広告費をかけずに、多くのユーザーを取り込むことができるため、中小企業にとっては絶対に利用したほうがよい手法。弊社としてもクライアントにおすすめしている。

コンテンツマーケティングについての詳細は、下記の記事を参考にしてほしい。

 

データ分析は忘れない

マーケティングは調査→仮説→実行→検証という流れが欠かせない。もし想定していた効果を得られなかったのであれば、マーケティングに失敗したということだ。

ここで問題なのは、失敗したこと自体ではなく、失敗に気付かないことだ。失敗は見直すことで次の改善につなげられるが、失敗自体に気付かなければ、改善のしようもないし、盲目的に自分の施策は正しかったのだと、いらぬ勘違いが生まれてしまう。

ネットショップの検証はデータ分析をすることで、数値として確認が可能だ。Googleアナリティクスなどのアクセス解析ツールを必ず導入して、しっかりと施策に対して効果があったのかを検証するようにしてほしい。Googleアナリティクスの使い方については「GoogleアナリティクスでECサイトをデータ分析する基本の4点」を参考にしてほしい。

 

おわりに ネットショップでもマーケティングは必須

弊社の今までの経験でも、ただ何となくネットショップを作りましたというオーナーの店が繁盛店になったということは、極めて稀である。この場合はショップオーナーが有名人だったとか、どこにもない技術で作られた希少な品を生産していた、技術力のある企業に限られる。

以上のようなケースにはまらない場合は、やはりマーケティングをしっかりとして、緻密な戦略で計画立ててショップ運営を進めていくことが必要だ。ネットショップを開業することは簡単だが、売上げを上げながら継続していくことは簡単ではない。

ショップオーナーは「この商品なら絶対に売れる!」という根拠のない理由を持ってしまいがちなので、過信しすぎることなく、第三者目線で冷静になって開業計画・運用計画を立てていこう。

マーケティングについては「3C分析・4P・SWOT分析とは?マーケティングに必要な予備知識」も参考にどうぞ。


【著者からの一言】

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鍵谷 隆 -KAGIYA TAKASHI-

当記事は2016年ごろ、私がECサイトのコンサル経営をしていた時期にまとめたノウハウ集だ。そのため外部サイトへのリンクが切れていたり、Googleや各種ASPなどの外部システムの仕様変更などで状況が変わっている可能性があることだけは了承してくれ!

ただ商いの本質は変わることはない。ネットショップ運営でお困りの経営者や担当者なら、当サイトの記事も必ず役に立つはずだ。全てのEC関係者に幸あれ。検討を祈る!