右肩上がりに伸びているeコマース(電子商取引)市場は、2020年には20兆円規模にまで拡大すると言われている。
消費者自身もネットで物を購入すること自体に違和感を覚えなくなり、実店舗を運営している小売店としては、ネット通販という新しい販路を構築するのは、もはや必須の対策となってくる。
EC事業を新事業の一環としてすすめる企業や、個人がネットショップを立ち上げる流れも加速しており、世の中にはネットショップにまつわるさまざまな噂が流れている。いったいどんな情報を信じてよいのか? と困惑されている方もいるだろうから、ネットショップを始める前に知ってほしい6つの噂と真実について、ご紹介していく。
ネットショップをオープンすれば売れる
ネットショップをオープンすれば売れる…これが世間で最も蔓延している噂ではないだろうか。
はっきり言ってこの噂は信じてはいけない。もし鵜呑みにして事業を始めれば、想定と現実とのギャップがあまりにも大きすぎて精神的なショックを受けてしまうことになるだろう。
確かに1990年代後半のネット通販が始まったころなら、競合自体が少なかったためインターネット上にショップをオープンすれば、これといった努力をしなくても売れていた時代があった。しかしここまでECサイトが増えてくると、同じような商品を取り扱う競合他社がうまれ、何も努力をしなければどんどんお客様は他のショップに流れていってしまう。
努力無くして売れるショップは絶対につくることができない。ネットショップをオープンすれば売れるというのは、今になっては幻想でしかない。
楽天などのモール系ショップなら売れる
ネットショップをオープンする際には、独自ドメインのオリジナルショップではなく、楽天市場などのモール系に出店する方法があり、一般的にはモール系に出店するほうが、売上げをつくっていくのが簡単と言われている。
確かにモール自体の集客力があるので、独自ドメインのショップに比べたら、売上げをつくっていくことは簡単だ。しかしモール系の店舗も年々増加しており、モールの中でも熾烈な顧客の奪い合いが始まっている。
お客様に選ばれるショップとなるには、ショップの個性を前面に出していくことが求められるが、モール系はショップの個性を打ち出しにくいため、どうしても価格競争に陥りやすいという難点がある(モールに集まるお客様自体が価格面を重要視していることもあるが…)。中小企業としては価格競争で勝負しては確実に大手企業に負ける。
それにモール系に出店するということは、高額な月額利用料や売上額に応じた販売手数料が必要になる。最終的に利益が出るのか…と考えると、出費の方が上回っているショップもあることを忘れないでほしい。モール系ショップであっても努力無くして売れるショップはないのである。
ショップをオープンしたらすぐにお客様がやってくる
これもよく言われている噂だが、トレンドにのっかったアイテムを販売しているショップでない限り、どれだけ素晴らしいアイテムを取り揃えていても、ネットショップをオープンしてすぐにお客様がやってくることはない。
実店舗を運営している経営者は特に勘違いしやすいので要注意。実店舗での成功体験をそのままネット通販に当てはめてはいけない。
ネットショップは砂漠の中に店舗を出すようなもの
実店舗ならオープン当初から近隣住民が興味本位でやってきてくれるだろうが、ネットショップの場合は違う。
ネットショップをインターネット上にオープンするということは、現実世界に例えるならば、砂漠の中にぽつんとお店を構えるようなもの。目の前には道すらないので通行人が通ることも無ければ、お店がオープンしたこと自体、誰一人として知らない。
客様を集めていく施策を施し、少しずつリピーターを増やしていくことで、初めて繁盛店と呼ばれるまでになる。お客様が全然来ない辛い時期があることを理解しておく必要がある。
ネットショップの最初の難関は集客
売上げをつくっていくにはコンバージョン率を高める施策や平均客単価を上げる施策などがあるが、まずは集客が要になる。どれだけ良質な商品を扱っていても、どれだけお店のサービスが良くても、お客様が来なければ何も始まらない。
売れるショップにしていくには、まずは集客力を上げていくことが求められる。
集客のルートとしては自然検索からの流入を狙っていくのか、ソーシャルメディアからの流入を狙っていくのか、それとも広告を利用してお客様を集めるのか、ショップの方針によって決めていく。
ネットショップなら無料で始められる
ネットショップはお金がなくても無料で始められる…これは間違いではない。
商材は身の回りにあるものをかき集め(もしくは自分のスキル)、無料のネットショップサービスを利用して、スマートフォンで商品撮影を行い、あとは注文が入るのを待つだけ。こうすれば資金を用意することなくネットショップの開業が可能だ。
しかし費用をかけることなく作られたネットショップは、どうしてもお金をかけて手をかけながら作られたショップと比較すると見劣りする。ショップのつくりが雑だと商品の魅力も損なわれてしまう。
副業感覚で始めるなら問題ないだろうが、やはり売れるショップにしていくためには、商品撮影には一眼レフカメラやその他必要機材を揃えるべきだし、開業してからしばらくはお客様が来ないことを想定して、数か月分の運営資金を用意しておくべきだ。
ネットショップの開業にかかる費用については「ネットショップの開業に必要な費用・用意しておきたい資金」を参考にしてほしい。
ネットショップは運営に手間がかからない
商品をアップロードして、注文が入れば発送する。これがネットショップの基本的な流れ。文字にするとなんとも簡素で、ネットショップ運営は手間をかけることなく効率的に物販を行えると勘違いするかもしれない。
しかしネットショップには通販事業ならではの作業として、お客様から来るメール対応や商品の梱包・発送作業、商品の撮影やアップロード、ページの作り込み、キャンペーン企画や特集記事の立案など、以外と手間がかかるもの。
特に商品ページの作り込みは重要だ。生の商品を目にすることのできない、手に取ることのできないネットショップでは、商品ページの情報を充実させることがお客様の購買欲求を高めることにつながるため、手間をかけて用意する必要がある。
店舗費用の掛からないネット通販は儲かる
実店舗と違い店舗の賃貸料がかからないネットショップは儲かるという噂。これは半分ぐらい当たっている。
しかし上の項でも説明したが、ネットショップの運営は意外にも手間がかかるものであり、人的コストが必要になる。店舗の賃貸費用が掛からないからと言って、浮いたお金をそのまま利益として計上できるわけではない。ショップ運営のための人件費に流れていく。
また場合によっては仕事を行うための執務スペースや在庫を保管するための場所が必要になる。これらの場所も賃貸で借りるなら、別途で費用が発生する。店舗費用が掛からないからと言って、ネットショップは儲かるとは言いきれない。
おわりに ネットショップを始めるなら現実を知ってから
ネットショップは売れるとか、運営の手間がかからないといった類の話は全部疑いを持って聞くようにしよう。冷静になれば分かることだが、よっぽどセンスのある人間でない限り、世の中楽して儲けることはできない。ましてや参入企業が増加しているEC業界は、他の商売以上に努力が必要になるかもしれない。
夢や幻想だけでネットショップを初めては、開業後に訪れる現実に戸惑ってしまうだろう。そのためネットショップ運営の現実を知った上で、しっかりとした戦略を立ててから事業を開始するようにしよう。
【著者からの一言】
鍵谷 隆 -KAGIYA TAKASHI-
当記事は2016年ごろ、私がECサイトのコンサル経営をしていた時期にまとめたノウハウ集だ。そのため外部サイトへのリンクが切れていたり、Googleや各種ASPなどの外部システムの仕様変更などで状況が変わっている可能性があることだけは了承してくれ!
ただ商いの本質は変わることはない。ネットショップ運営でお困りの経営者や担当者なら、当サイトの記事も必ず役に立つはずだ。全てのEC関係者に幸あれ。検討を祈る!