ペルソナ設定をしてユーザーの心に響くネットショップを作ろう

ECサイトにとって最終的にユーザーを商品購入というゴールに向かわせるためには、お客様となるターゲット層を設定しておくことは欠かせない。ターゲットが20代女性なのか50代男性なのかで、サイトデザインやプロモーションの方法も変わってくる。

ショップオーナーとしては想定したターゲット層をもとに、どのような施策を打っていくのかを考えていかなければならない。
もしターゲットに高齢者を想定しているなら、ボタンや文字の大きさを通常よりも大きくしたり、商品の質の高さを一番に表現するなど。そうした施策が見事マッチすれば心に響くショップとなり、定期的に利用してくれるだろう。

今回はターゲット層を想定するために必要なテクニックである、ペルソナ設定についてご説明していく。

 

ペルソナ設定とは

ペルソナ設定とは聞きなれない言葉かもしれないが、ペルソナとはラテン語で人という意味や仮面を指す言葉であり、マーケティングで用いるときには”想像上の顧客像“を意味する言葉になり、その顧客像を固めていくことをペルソナ設定という。

「それなら自社のショップでも既にターゲットは想定しているよ」と思うかもしれないが、その多くは”20代女性”のような年齢と性別ぐらいではないだろうか。ペルソナ設定はもう少し踏み込んだところまで、より具体的に顧客像を仮定していく。

 

ペルソナを形成する項目

ペルソナを作り上げるときには、より細かい設定まで想定していかなければならず、細かければ細かいほどユーザー像が具体的になり、良いペルソナといえる。例えば以下に挙げるようなポイントを意識する。

  • 年齢
  • 性別
  • 職業
  • 役職
  • 居住地域
  • 趣味
  • 休日の過ごし方
  • 恋人有無
  • 子どもの有無
  • 学歴
  • 今ハマっていること
  • 収入
  • 好きなスポーツ
  • 好きなブランド
  • 好きな芸能人
  • etc

好きな芸能人など「こんなことまで決める必要ある?」と思ってしまう項目があるかもしれないが、より顧客像を具体的にするためには必要なことである。

 

まずは自店のユーザー層を知る

いきなりペルソナを作り上げるのではなく、既にネットショップを運営しているのなら、データ分析から始めよう。Googleアナリティクスなどのアクセス解析ツールを利用することで、普段からネットショップを利用してくれているユーザーの年齢層や性別、興味や関心事といった情報を知ることができる。

もしこれからネットショップを開業するなら、アンケートや試供品の提供を行ってユーザーの反応を調べたり、政府や○○総研などの調査報告のデータを利用してみるのもありだ。

そうした情報があるだけでも、ペルソナの精度を高めることができる。

 

実際に作ってみるとこうなる

例えば30代の男性用革小物を販売しているECサイトがあったとして、実際にペルソナを作ってみると、以下のようになる。


【山田 太郎】
・32歳
・東京都大田区在住(生まれは千葉県だが、28歳で転職のため移住)
・月収25万円
・最寄駅から徒歩5分の場所に賃料8万円のアパート(1DK)を借り、通勤は主に地下鉄を利用

 

22歳で明治大学を卒業後はアパレル関係の会社に勤務。その後1年間、専門学校に通い、28歳でシステム開発会社に再就職。役職は特になし。

業務が忙しく平日はだいたい22時頃に帰宅する。結婚しておらず恋人もいないため、帰宅後は趣味でもある映画を1本見る。最新のヒット作よりも、1960年代から80年代の名作映画を好んで見る。特にロバートレッドフォード主演の映画が好き。家のインテリアも19世紀中ごろのミッドセンチュリーな雰囲気。

デジタルなものよりもアナログが好きで、使用している腕時計もデジタル時計ではなく針時計。何かを購入する際にはブランドにはあまりこだわらず、素材や精巧さといった”ものづくりの手間”を評価基準にしている。

休日は友人とサーフィンに出かけたり、山登りをしたりとアウトドア派。一人で過ごすときは現在ハマっているカフェ巡りをする。基本家に一人でいることは少ない。

 

ここまでペルソナを設定できたら、あとはこの仮想顧客をどのようにマーケティングに生かしていくのか…下の項で説明していく。

 

なぜペルソナを作り上げるのか

より顧客の心に響くアプローチが可能になる

ペルソナを設定する理由の一つに「顧客へのアプローチ手法が明確になる」ということがある。
30代男性というぼんやりしたターゲット設定よりも、上の項で設定したペルソナの方が、バナー広告の作成や販促キャンペーン、ページデザイン、商品仕入れなど、あらゆる面でネットショップの戦略が立てやすくなる。

先に定義した今回のペルソナ(山田太郎さん)では「素材や精巧さといった”ものづくりの手間”を評価基準にする」という特徴がある。革小物を扱っているネットショップにおいて、もしユーザーの心に響くキャッチコピーを考案するなら「上質のイタリアンレザーと革新的なデザインが融合した革財布」というコピーよりも「この道40年のベテラン職人が一針一針思いを込めながら仕上げた革財布」とした方が、このペルソナの心に響くだろう。

もしペルソナ設定において「値段は高くても希少なものを好む性格」としていれば、キャッチコピーは「牛一頭でわずかしか取れない、こめかみ部分の上質な革を使って財布に仕上げました【生産量が少ないため限定3個販売】」とでもしておくとよいだろう。

 

チームの意識を統一できる

もし複数名でECサイトを運営している企業なら、ペルソナ設定をしていないと、それぞれの担当で、思い浮かべるユーザー層が微妙に違ってくる。企業としては一つの目的のためにECサイトがあるのに、担当者ごとにアプローチ手法にそれぞれズレが生じていては、中途半端な販促になってしまい100%の効果を発揮することができない。

しかしペルソナをしっかりと設定していれば、チーム内で認識のズレが発生することが少ない。明確な顧客像を共有できることになり、打ち合わせ時も話がスムーズにまとまる。

だから細かい部分までペルソナを考えていくことが必要なのである。

 

ペルソナは定期的に見直していこう

始めに設定したペルソナがドンピシャではまることはまずない。下手するとあまりにも実際のユーザーとかけ離れ過ぎて、せっかくの販促キャンペーンが空振りしてしまうこともある。

だから定期的にペルソナ設定は見直していくようにしよう。商売の基本はPDCAサイクルだが、ペルソナ設定においてもそれは同じ。ペルソナをもとに何かしらの施策を行ったら、しっかりと成果になって返ってきているか、データを分析しながら検証をしていく。想定よりも効果が薄かったら、ペルソナが実際のユーザーとずれている可能性があるので、見直しをしていく。

これを繰り返すことで、お客さまの心に響く精度の高いアプローチが可能になる。

 

おわりに ターゲットの設定は必須

ネットショップもターゲットを明確にしておかないと、戦略を立てることができない。そしてターゲット設定は漠然としたものではなく、ペルソナを作っていくことでより明確になる。しっかりとペルソナを設定した上で、最も訴求効果の高い施策を打っていくようにしよう。


【著者からの一言】

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鍵谷 隆 -KAGIYA TAKASHI-

当記事は2016年ごろ、私がECサイトのコンサル経営をしていた時期にまとめたノウハウ集だ。そのため外部サイトへのリンクが切れていたり、Googleや各種ASPなどの外部システムの仕様変更などで状況が変わっている可能性があることだけは了承してくれ!

ただ商いの本質は変わることはない。ネットショップ運営でお困りの経営者や担当者なら、当サイトの記事も必ず役に立つはずだ。全てのEC関係者に幸あれ。検討を祈る!