ネットショップが売れなくなったと悩む人へ…その売り方古くないか?

近年になってクライアントとなるショップオーナーからよく聞くのが「最近ネットショップが売れなくなった…」という話。ただしその話をするオーナーのネットショップを分析するたびに「いつまで昔ながらの販売手法に頼って営業しているの」と思ってしまう。

ネットショップはウェブビジネスの一つであり、ウェブの世界は次々に新しい販売手法が生まれたり、トレンドが切り替わったり、変化のスピードが非常に速い。かつての繁盛店が売れなくなってしまった理由で多いのは、時代の変化に対応できずに、前時代的な販売手法に固執しているため。しかし売れなくなったと嘆くオーナーは、原因究明を無視して、景気が悪くなったとか外部環境のせいにしたがる。

景気が悪くなったとしても、売上げを伸ばしているショップオーナーは山ほどいる。はっきり言って自店の分析や売るための努力を怠っているに過ぎない。売れなくなったと嘆くオーナーは、現在のイーコマース事情をしっかりと理解し、今どきの販売手法を身につけていくべきなのだ。

 

ネットショップが売れなくなったわけ

冒頭では少々きつい言い方になってしまったが、確かにネットショップが売れなくなったというのは、半分間違いだが半分正解だ。正確に言うならば、売れなくなったというよりも、売りにくい環境になったということ。

経済産業省が平成27年に発表した”電子商取引に関する市場調査”では、B to C向けEC市場は右肩上がりで成長しており、2014年時点の市場規模は前年比 14.6%増の12 兆 7,970 億円となっている。さらに野村総研の報告では、2021年には25.6兆円にまで市場が拡大すると発表している。

EC市場が拡大している限り、売上げも伸びていくはずなのだが、売れないショップが出てくるのは、大きく分けて以下に挙げる2つの理由がある。

 

ネットショップの増加

もともとEC事業は参入障壁の低いビジネスだったが、近年では無料開業サービスなども登場し、さらに開業のハードルが低くなったことから、ネットショップの数は年々増えている。

自分のお店を持つことはとても簡単になった。昔なら制作会社にショップシステムの開発を依頼していたかもしれないが、今では高機能なASPを月々数千円でレンタルしたり、無料開業サービスを利用することで、0円からでもネットショップを持つことができるようになった。

モール系ショップに限っても、楽天市場では4万店以上、Amazonは18万店舗、Yahoo!ショッピングにいたっては40万店舗近いお店が出店をしている。これに独自ドメイン系のショップを合わせると、とてつもない数のショップが乱立していることになる。

これだけネットショップの数が増えれば、競合となる店舗が生まれてくるのは必然。今EC市場では、熾烈な顧客の奪い合いが繰り広げられている。だんだんとネットで物を買うことの抵抗が薄くなり、ネットショップを利用するユーザーの数も伸びているが、需要よりも供給過多になっていることから、顧客自体を捕まえるのが難しくなってきている。

 

売り方の多様化

先に説明したように、母数となるネットショップの数が増えたから売れなくなってきた…というのはよく聞く話だが、売れなくなった本質はそこではない。多くの場合はここで説明する、売り方の多様化にある。売れないショップは日々変化するウェブの世界についてこれなくなっているのだ。

ネットショップを始めるなら知っておきたい6つの噂と真実」の記事でも説明しているが、かつてのEC業界は出店店舗数も少なく、ネットショップをオープンすれば、特に努力をしないでもお客様が集まる時代があった。しかしそれも昔のこと。もはやネットショップが誕生した20年前のように、出店すれば売れるという時代はとうの昔に終わりを迎えている。

 

広告の時代へ

ただショップをオープンさせても顧客が集まらなくなったため、多くの店舗は広告を利用するようになった。クリック課金型のリスティング広告(PPC広告)がその代表だろう。

広告を使えば人が集まり、売り上げも伸びる。基本的な考えは間違っていない。しかし近年になって、広告を使っても売上げを伸ばすことが難しくなってきた。それには大きく二つの理由がある。

まず一つ目はユーザーのネットリテラシーが高くなってきたこと。人は広告を嫌うものである。インターネットで検索をしたときに、検索結果の最上部や右側に表示されるページが広告であることを認識するようになったため、意図的にそうしたページをクリックするのを避けるようになってきた。

そしてもう一つはリスティング広告の高騰。リスティング広告は入札形式で出稿料を調整するため、広告を出したい企業が多ければ多いほど広告料も高くなる仕組み。ネット通販に参入する企業が増加した今、広告費が高くなり、それが売上げを圧迫する事態が起きている。

ネットショップが売れなくなってきたと嘆くオーナーは、いまだに広告に頼っていることが多いのだ。

 

顧客に愛されるショップが売れる時代

現在はショップがお客様を選ぶ時代ではなく、お客様がショップを選ぶ時代。要はお客様に選ばれるショップにしていかなければ、繁盛店にすることはできない。いつまでたっても広告一辺倒では、膨大な広告予算を確保しても無駄になってしまうだろう。

そしてお客様に選ばれるためのショップとしていくためには、さまざまな戦略が用いられるようになった。ソーシャルメディアを利用したり、動画を利用したり、若年層の利用が多いECサイトならモバイル対応を進めることでユーザビリティを向上したりと。

自店で販売している商材と、それを利用してくれるユーザーの質を考えて、戦略を練っていく。これが今のEC業界で売上げを伸ばしていくために必要な考え方。

 

今どきの販売手法を身に付ける

先にも簡単に説明したが、いつまでも広告頼みの販売手法ではダメだ。ウェブの世界は変化も速いため、常にその時代のトレンドを把握し、自身のショップに取り入れられるかを検討していく必要がある。

例えば今から10年前にはウェブサイト上でアニメーションを表現するには、FLASHと呼ばれる技術が一般的だったが、現在ではHTMLベースでさまざまな動きを表現できたり、Youtubeなどの動画を埋め込むことが可能になったことから、FLASHを見る機会はほぼ無くなった。それでも未だにFLASHコンテンツをサイト内に用意していれば、ユーザーにとってはそれが非常に違和感を生む。

ネットショップも作ったときはその時代の最新の技術やマーケティング手法を取り入れているだろうが、時代とともに柔軟に変化していくことを忘れてはいけない。

 

最新のEC業界の動向を知る

まずはEC業界の動向を知ることを怠ってはいけない。敏感に情報をキャッチするのだ。そのためには通販業界誌などを購読するのも良いが、弊社としてはそんなものは必要ないと考えている。今や必要な情報はネット上に転がっている。EC業界の動向を追っているメディアサイトなら、無料で新鮮な情報をタイムリーにお届けしてくれる。

EC業界の動向を知りたいなら、ECzineやECのミカタなどのウェブサイトをこまめにチェックしておくとよいだろう。その他のサイトも「ネットショップ担当者ならチェックしておきたいウェブサイト13選」の記事にまとめているので、是非参考にしてほしい。

 

競合よりも心理的優位に立つ

今のネットショップで必要なことは、お客様にこのショップだから買いたいと思ってもらうこと。そのためには、価格ではなく心理的な側面で競合よりも上に立つことが求められている。

では何をすればよいのか…ユーザーとの接触頻度を増やして、より身近な存在になる必要がある。ただし接触頻度を増やすと言っても、メルマガを利用してバンバン売り込み攻勢をかけるというわけではない。もしそんなことをしてしまえば、嫌悪感を抱かれて二度とそのショップを利用したくないと思われしまうだろう。

接触頻度を増やすとは、こちらから売り込みをかけることではなく、ユーザーの方から来てもらうこと。「それができないから、困っているんだよ」と思うかもしれないが、その手段を間違えなければ難しいことでない。

従来は販売という目的に対し、広告という手段をとっていた。確かに明確な購買意欲を持っている人には、広告を出すことでお客様になってもらえる可能性は高いが、全てのお客様が”買いたい”という感情を持っているわけでもないし、インターネット広告は先にも説明したとおり、価格の高騰など多くの問題を抱えている。

今は購入意欲のある顧客を捕まえるのではなく、将来お客様になってくれそうな、その商品や業界に対して興味を抱いている潜在顧客を捕まえ、お客様予備軍としてファン化させる。そのためには商品の紹介ではなく、ユーザーが興味を持っている情報を提供していく。

例えば料理が好きなユーザーがいたとすると、そのユーザーに包丁やまな板といった商品情報ばかりを紹介するのが、従来のネットショップ的営業。今はそうではなく、正しい包丁の研ぎ方や、とっておきの料理レシピといった情報を公開していくことで、自然と料理が好きなユーザーが集まるようになる。

そうしてユーザーをファン化させていけば、ユーザーに”買いたい”衝動が生まれたときには、普段から自分にとって有益な情報を公開しているサイトで購入してくれるようになる。もちろん中にはせっかく育てたユーザーが別のショップで購入してしまうこともあるが、それでも全体として見れば、心理的に優位に立つことでお客様に選ばれるショップとなる。

テレビショッピングでおなじみの”ジャパネットたかた”も決して商品が安いわけではないし、自社開発した商品を扱っているわけではない。比較すればもっと他店でお値打ちに購入することは簡単だ。しかしユーザーは”ジャパネットたかた”に馴染みがあるから、そこで購入するのだ。

こうしたファン心理を利用することが、選ばれるショップにしていくための秘訣である。具体的な手法については、以下に挙げていく。

 

SNSツールの利用

弊社でもクライアントの売上げ改善の提案時に、必ずおすすめしているのがSNSツールの利用だ。何が嬉しいかって、無料で利用できること。

ただし面倒だからという理由で、運用を怠ってはいけない。SNSの公式アカウントはあるものの、更新をストップしている企業はいくつもある。一度の投稿など数分で済んでしまうので、それほど負担にはならないはず。SNSツールの重要度をしっかりと理解し、仕事の一環として更新を続けていくことが大事だ。

上手に運用すればユーザーをよりディープなファンにしていくことができるし、SNSは拡散機能が優れているため、投稿がヒットすれば何千、何万というユーザーに自店を知ってもらうきっかけにもなる。

SNSの利用については、以下の記事を参考にしてほしい。

 

コンテンツマーケティングに挑戦

もうひとつ今どきのネットショップの戦略と言えば、コンテンツマーケティングだ。今までネットショップの武器といえば商品そのものだったが、これからはユーザーの欲求を満たしてあげるコンテンツを武器にして戦っていこうという考え方。

使い方次第では、新規顧客の開拓からリピーターの創出まで、あらゆる効果を発揮してくれる。コンテンツマーケティングについては「EC業界でも今後はコンテンツマーケティングが加速する時代に突入」の記事でも詳しく説明しているので、参考にしてほしい。

EC業界では”ECサイトのメディア化”と呼ばれることもある手法。ECサイトにメディア機能を追加、もしくはECサイトへ送客するための独自メディアを持ち、そこでユーザーが求めている情報を発信していくことで、お客様に愛される企業になるという考え方。

もしとある商品の購入を検討しているお客様がいたとしたら、その商品の評判や、おすすめの使い方を紹介することで、お客様との接点が生まれ、有益なサイトであることが認知される。お客様の悩みを解決したところで、そのまま商品ページに誘導してあげれば、商品を購入してくれるかもしれない。

またアニメ関連のグッズを販売しているショップなら、そのアニメに関する豆知識や知られざる情報などを記事として配信していくことで、そのアニメが好きなユーザーが次第に集まってくる。ユーザーとしては自分が興味のある情報を提供してくれるメディアなのだから、更新があるたびにアクセスしたくなる。そしていつの日かグッズが欲しいと思ったときには、そのメディアから導線が張られているショップで商品を購入してくれるだろう。

 

おわりに 売れなくなったのは改善を怠ったせい

EC市場が拡大している限り、ネットショップが売れなくなったというのは、もはやショップオーナーの怠惰に対するいいわけでしかない。その時代に合ったマーケティングを突き詰めていけば、売れるショップにしていくことは簡単だ。

しかしいくら情報を得て、自分なりに解釈し、いくつかの施策を講じても、進むべき方法を間違えていては意味がない。そんな時にはネットショップのマーケティングを専門にしている、コンサルの力を頼るのも良いだろう。

今繁盛しているショップオーナーも決して他人ごとではない。常にその時代に合った運営ができるように、変化することを面倒だと思わずに挑戦していく姿勢を大事にしよう。


【著者からの一言】

profile

鍵谷 隆 -KAGIYA TAKASHI-

当記事は2016年ごろ、私がECサイトのコンサル経営をしていた時期にまとめたノウハウ集だ。そのため外部サイトへのリンクが切れていたり、Googleや各種ASPなどの外部システムの仕様変更などで状況が変わっている可能性があることだけは了承してくれ!

ただ商いの本質は変わることはない。ネットショップ運営でお困りの経営者や担当者なら、当サイトの記事も必ず役に立つはずだ。全てのEC関係者に幸あれ。検討を祈る!