EC市場が拡大するとともに、それに付随するさまざまなサービスが生まれている。それらにはショップシステム構築や運営代行などがあるが、EC事業者専門のコンサルティングサービスもその中の一つ。
だがネットショップのコンサルティングは果たして必要なのだろうか? 「イーコマースと言っても要は物販なのだから、コンサルなんて依頼する必要ないんじゃないの」と考えている方もいますが、多くの場合コンサルティングを受けることで売上は上がる。それに数千年の歴史がある実店舗型の小売りと、始まって20年そこそこのネット通販は全くの別物だと考えたほうがよい。
コンサルティングが必要な企業とは
コンサルが必要ない企業があることも確かです。既にネット通販について熟知しており、新しいウェブサービスの流れについても敏感にキャッチしている事業者は、コンサルを依頼しても何も得られるものはないでしょう。ですが大半の事業者様はそうではありません。
「ネットショップの仕事は何するの?ECサイトの業務内容について」でもご説明しているように、ネットショップの運営はやることがたくさんあり、ついつい分析と改善をおろそかにしがち。中には分析手法すら知らない方がたくさんいることも事実。それに実店舗を抱えている企業では、そこまでEC事業に時間を費やすこともできない。
そうした日常業務に追われており、分析と改善がおろそかになっている企業はコンサルサービスを受けることで、得られるものが確実にある。余分なサービスを発注するのではなく、本来なら自社内でするべき業務を外部委託するイメージだろうか。
“餅は餅屋”という言葉があるように、ネットショップの仕組みを見直して売上げを上げていきたいなら、分析と改善提案を専門にしている企業に依頼した方が、はるかに高度な戦略をとることができる。もちろん無料ではないが、それ以上に多くの見返りが売上げとして返ってくるだろう。
コンサルは何をするのか
ではコンサルとは具体的に何をするのでしょうか。
現状の弱みを分析
まずはクライアントが運営するECサイトの弱みを分析する。この”弱み”とは、ユーザーが離脱しやすいポイントや、客単価が下がってしまう原因など、売上を目減りさせている要因のこと。
Googleアナリティクスなどのアクセス解析ツールを利用すれば、ページごとの離脱率やランディングページ(一番初めに閲覧するページ)などを知ることができる。改善提案だけではその根拠が不明確なので、しっかりとデータとして目に見える形で裏付けをすることが大事。
さらに売上げの推移を確認することで落ち込みの激しい月を調査したり、過去に好評だったキャンペーンなどのヒアリングをしたりすることも、効果的な施策をご提案する上で重要になってくる。
改善事項を提案する
ECサイトが持つ弱みを分析したら改善提案を行っていく。データ分析までは誰がやってもそこまで大差ないだろうが、改善提案にいたってはコンサルティング担当者の技量に左右される部分。担当者の知識と経験が重要になる。
例えば離脱率の著しく高いページが見つかったとする。この場合はそのページを改善することで、ページ回遊率を高めてユーザーをサイト内に留めることに成功する。
もしそのページが何かの特集記事なら、内容が既存のユーザーにマッチしていない可能性があるので、デザイン要素や商品の魅力の伝え方を変更していく必要がある。
また商品ページであれば、商品画像を差し替えたり、商品説明を改善してくこともあるが、その商品自体の取り扱いを中止するという選択肢も忘れてはいけない。売れない商品よりも売れる商品を並べていたほうが、売り上げは確実の伸びる。
このように弱みをカバーする改善策を、複数のある選択肢の中から、一番効果を発揮してくれるであろうものに絞ってご提案をしていく。
新しい手法もご提案
コンサルティング会社はウェブマーケティングの知識にも長けている。そのため時には新しい集客の仕組みをご提案することもある。
もしクライアントのECサイトでSNS運用をしていなければ、SNS運用を始めることをおすすめするのだが、SNSと言ってもFacebookやTwitterなど、その数も豊富である。その際にも提案先のECサイトのお客様層を考慮して、最も効果が期待できるツールをご提案する。
また近年ではコンテンツマーケティングのブームに乗って、ECサイトのメディア化をすすめる企業も多い。だがメディア化しようにも、どうすればよいかを知らない方もいっぱいいる。そうした事業者様にも、新しいマーケティング手法のノウハウをレクチャーする。
※ECサイトのメディア化については「ECサイト(ネットショップ)がメディア化を進める6つの理由」を参照
コンサルを受けるメリット
ネットショップのコンサルティングを受けるメリットは、新たな気づきを見出せることにある。
ネットショップはお客様と顔を向き合わせて行う商売ではないため「こうしたら売れるはずだ」とか「お客様もこんなサービスを求めているはずだ」のような独自の考えに、本人も気づかぬうちに固執してしまうことが多い。ただそれは当事者であるため、ある程度誰もが陥る思考であり、仕方のないこと。
そこを第三者目線で、冷静にデータから分析したコンサルティング担当者の提案によって、新たな可能性や道筋の気づきが生まれる。
経験と法則を入手できる
またコンサル担当は数々のショップを見ているため、売れるショップの方程式のようなものや、売れないショップに共通してみられるダメな部分を知っている。日常の業務に追われているショップオーナーが、コンサル担当と同じような経験を積むのははっきり言って難しい。
繁盛するネットショップになるのは決して運ではない。緻密なデータ分析と、経験によって会得したテクニックと判断力をもって戦略を立てることが必須であり、それをしていけばどんなショップでも売れるお店に変えていくことはたやすい。
コンサルを利用することは、コンサル担当者の持つ経験やテクニックを入手することと同意義でもある。
企業のノウハウになる
コンサル担当と打ち合わせをしたり、協議を重ねていくことで、マーケティングのノウハウを自分のものにしていくことができる。
これは弊社の考えになってしまうが、ずーっとマーケティング面はコンサルにお任せというのはよろしくない。やはり運営方針を決めていくのは経営者であり、コンサルタントはあくまで経営のお手伝いである。
そのため売れるショップにするための法則をコンサル担当から学び、マーケティングを内製化して自社内で回していけるような体制をつくっていくのが理想だと考えている。
良質なコンサル会社を選ぶには
それでは最後に、良質のコンサル会社を選択するために気を付けるポイントについてご説明していく。
過去の実績はそこまであてにならない
コンサル企業はよく過去の実績を掲載しているが、それらを全くあてにしてはいけない、というわけではないが、全てを鵜呑みにして理解するのは危険だ。
例えばネットショップを運営する企業Aが、サイト立ち上げ早々にコンサルティングを依頼したとする。そこから売上げは伸びていくだろうが、果たしてその伸び率はどれほどコンサルの提案が寄与しているものだろうか。
立ち上げ当初のネットショップの売上げが次第に伸びていくのは当たり前のことである。だがコンサル会社としてはコンサルに入る前の売上げと比較して「200%売上が伸びました!」と大々的に宣伝する。すでに成熟したECサイトで、売上げも伸び悩んでいるときにコンサルが入って売上げを伸ばすなら分かるが、成功実績には立ち上げ当初のサイトが含まれている場合もある。
知識レベルは一つの指標
クライアントに良質の提案をするためには、知識量が豊富であることも大事。
それはなぜかと言うと、担当者が持っている数々の知識やテクニックから、クライアントの悩みを解決するのに、最も効果のある一つを選んでご提案するためだ。だから前提として担当者の知識量が少なければ、本当に良い提案を出してもらっているのかも分からない。
書籍やウェブサイトでアウトプットしているか
では担当者の知識レベルを知るにはどうしたらよいのか。まずはその担当や企業が知識をアウトプットしているかどうかを見るとよい。
一昔前であれば、コンサルタントは自身のブランディングのために書籍を出版してた。その書籍の中でコンサルタントについての考え方やテクニックを披露することで「御社にもこうした手法を使って売上アップの施策を提案できます」というアピールになる。クライアントとしてもしっかりと知識が豊富であることを把握できるため、ただのコンサルタントを名乗っている人間よりもよっぽど信用できる。
また現在ならウェブを利用して知識をアウトプットすることが容易になった。そのため弊社でも当サイトにて、ネットショップの開業や運営テクニック、支援ツール、メディア化対応といった切り口から、ネットショップオーナーにとってためになる情報を公開している。これも趣味でやっているわけではなく、弊社ではこれほどの知識量を持ち合わせていますという、一種のアピールなのである。
質の低いコンサルタントに依頼すると、時間もお金も無駄になってしまうので、事前の見極めは大事である。
知り合いの口コミも大切に
友人や知人に実際にコンサルサービスを受けた人がいるなら、その人の話も参考にしてみよう。当たり前のことだが、コンサル会社のウェブサイトにはその企業にとって都合の良いことしか載せていない。
そのため実際に売上げが向上したのか、対応は良かったか、どの程度の提案をしてくれたのかなど、知人の話からコンサル会社の技量を推測してもよいだろう。
おわりに コンサルサービスはこれからますます重要に
ネット通販の世界も時代の変遷とともに、どんどん新しいマーケティング手法が生まれている。
今から20年ほど前ならネット上に商品写真と簡単な説明文章、そしてカートシステムを用意しておけば事足りていたかもしれないが、現在ではユーザーの目も肥えてきて、そのような簡素なショップでは売れるショップにしていくことはできない。
売上げを作っていくためにはより緻密な戦略が必要になり、ウェブ技術の進歩とともに時代に合った施策を考えていかなければならない。そのため今後はますますコンサルサービスの需要が高くなっていくと考えられる。EC事業者としては、依頼するタイミングと業者を見極めながら、コンサルサービスを有効活用していこう。
もし実際にコンサル業者へ業務改善を依頼することをお考えなら「EC専門のコンサルサービスを提供している企業7選」の記事も参考にしてほしい。
【著者からの一言】
鍵谷 隆 -KAGIYA TAKASHI-
当記事は2016年ごろ、私がECサイトのコンサル経営をしていた時期にまとめたノウハウ集だ。そのため外部サイトへのリンクが切れていたり、Googleや各種ASPなどの外部システムの仕様変更などで状況が変わっている可能性があることだけは了承してくれ!
ただ商いの本質は変わることはない。ネットショップ運営でお困りの経営者や担当者なら、当サイトの記事も必ず役に立つはずだ。全てのEC関係者に幸あれ。検討を祈る!