ショップオーナーの皆さまは、ネットショップがかもしだす世界観についてどれだけ真剣にお考えだろうか。ただ何となくという理由でECサイトを構築しているのなら要注意。
「お客様が使いやすいネットショップにするための8つの施策」でも説明しているように、使いやすさ・操作の容易さを求めることも重要ではあるが、デザインを利用してショップの雰囲気を伝えることも、お客様に選ばれるショップにしていくには大切なこと。
繁盛しているECサイトを見ていると、どのショップも独自の空気感が演出されている。今回はデザインを利用したネットショップの世界観の伝え方について、ご説明していく。
世界観の大切さ
デザイン要素の前に、まずは世界観がどれだけ重要な役割をもたらすかの説明から。
世界観はショップコンセプトを具現化したものであり、一種の波長のようなもの。ショップの波長がお客様の持つ波長とマッチすることで、お客様から「このお店好きかも」と思ってもらえる。
一般的には、シンプルなデザインのネットショップよりも、個性的なデザインのネットショップの方が、熱狂的なファンを獲得しやすいと言われている。そして熱狂的なファンは何度もそのショップを利用するヘビーユーザーになってもらいやすい。ヘビーユーザーが増えることは、定期的な購買を見込むことができ、ショップの健全な運営につながるのだ。
ある程度の固定客が集まれば、新規顧客の獲得にかける作業を減らし、既存顧客の満足度を高めるための施策に時間を費やすことができるため、お客様の満足度は上昇してさらにリピートしたくなるという、好循環を生むことができるのだ。
個性の度合いを調整
ショップの個性を追求すればするほど、他ECサイトとの差別化が進み、コアなファンを獲得できる。ただし個性が強ければ良いという問題ではなく、逆に新規顧客の獲得が難しくなることや、サイトの使い勝手が悪くなるデメリットも含んでいる。
要はどこで折り合いをつけるかだ。90%のユーザーは無視してでも10%のユーザーに愛されるような、ヘビーユーザーを捕まえていくのか、7割ほどのユーザーが不快感を覚えることなく利用できるショップを目指していくのか。
取り扱う商材のジャンルやショップの方針で決めていけばよい。弊社として大衆向けではない、よりマニアックな商材を取り扱っている場合は、個性を強くしてもよいと考えている。
価格競争するなら個性は必要ない
もし価格面で他店と勝負するなら、個性を求めるのはやめて、使いやすさだけを追及したショップにしていこう。
お客様としても、そのお店が好きで買い物をしているわけではなく、ただ他店より安いからそのお店で購入しているだけである。世界観を表現したデザインを考えるだけ無駄な労力となってしまう。
ただし弊社では中小企業のECサイトでは価格面で勝負することは推奨していない。大企業と比較すると資本力に劣るため、価格勝負では必ず負けてしまう。そのため中小企業なら付加価値を上げて商品の単価を上げたり、メディア運用でユーザーに選ばれるショップづくりをしていくことをおすすめしている。
以下参考記事
デザインで表現するショップの世界観
ネットショップが個性を出していくことの重要性をご理解いただいたところで、本題に入っていく。ショップやブランドとしての個性となる世界観を表現していくには、デザイン上で大事なポイントが3つほどあるので、それらについてご説明していく。
ショップロゴ
ロゴは小さいながらも、ファーストビューでお客様の視線に入ることが多く、ショップのイメージを端的に表すものでなければならない。ロゴの仕上がりが秀逸だと、他ページを回遊しようと思い、ユーザーが直帰してしまう可能性を減少させることもある。
ロゴを作るときには、文字ベースにするのか、アイコンベースにするのか、どのような色を使うのか、どんな意味を持たせるのか、といったことを考えながら形にしていってほしい。
大企業のロゴだって、ただ何となくで作られているわけではない。それぞれに会社のストーリーやコンセプトを詰め込んでいる。「先生が学校で教えたくなる「あの企業ロゴに隠された秘密」」では有名企業のロゴ誕生秘話が掲載されているので是非読んでほしい。どれも興味深い内容となっている。
基本的にはプロに頼むとデザイン性の優れたロゴに仕上がるが、プロのデザイナーに依頼すると、ロゴ一つでも数万円は必要となる。有名デザイナーなら数十万円から数百万円が相場になることも珍しい話ではない。
ロゴ一つにそこまでの費用を払いたくないなら、自作することも可能だ。もしご自身でロゴを作成したいということなら、「無料でショップのロゴを作成するための方法と6つのサービス」を参考にしてほしい。自作ではなくプロに依頼するなら「ショップロゴを外注する際に意識する作業指示のポイント」を参考にしてほしい。
ショップカラー
色は太古の時代より人の心理を操作するための一種のツールとして利用されてきた。近年では色の力を利用して心理療法を行うカラーセラピーと呼ばれる分野もあるぐらいだ。
ネットショップの世界観を表現する際にも、色は有効に使える。下記に色が持つ力の一例を示す。
- 黒: 高級感やダークな印象を与える
- 白: 清潔感を与える
- 赤: 活気ある色で購買意欲を刺激する
- 青: 誠実さや冷静さを表す
- 黄: 活力を与える
- 緑: エコロジーを表現する
ショップで取り扱っている商材や、オーナーが表現したい世界観に合わせて、メインカラーを決めていくようにしよう。ただし「食品・食材を扱うECサイトで使える売上を上げるための施策」でもご説明しているが、青は食欲減退の効果があるため、食品を扱うECサイトで青を多用するのは控えよう。
色についての詳細は「サイトのメインカラーを決める際に役立つ色の印象について」の記事も参考にしてほしい。
フォント
フォントもサイトの世界観を表現するのに重要な役割を持っている。ウェブサイトで使用するフォントの設定は、プログラムによって変更が可能なので、御社の持つ雰囲気に一番マッチするフォントを選ぶとよい。以下では無料で使える日本語のウェブフォントを一部ご紹介してく。
JKゴシックL
女子高生が書いたかのような、ちょっぴり可愛らしい書体になっているJKゴシックL。それほど読みずらいわけでもなく遊び心を感じさせてくれる。
女子中高生向けのアイテムを販売しているショップなら相性よく使えるだろう。
ちはやフォント
女性が手描きしたような書体のフォント。サイト全体がどことなく優しい感じに包まれ、ほっこりとした印象を与えられる。人の気配を感じられるネットショップとなる。
お客様レビューやスタッフのおすすめなど、部分的に利用することで、手書きフォントの効果を最大限発揮できる。
はんなり明朝
上品でありながら、角の立たない優しさを感じることのできる”はんなり明朝”。はんなりとは「落ち着いた華やかさがあり、上品に明るく陽気なさま」を表す京ことばであり、まさに”はんなり”を具現化したフォントとなっている。
日本の伝統的な商品や、ギフトを専門に扱うECサイトで使えそうである。
飴鞭ゴシック
とにかくインパクトを与えたいなら、ちょっぴり変わったこちらのフォント。なかなかパンチの効いたフォントであり、非常に個性的。目玉商品をアピールしたときにも使えそうである。
おわりに デザインを上手に使って個性を表現
サイトデザインを上手に利用することで、ショップの世界観やコンセプトを言葉なくして直感的にユーザーにお伝えすることができる。
いまいちサイト全体の雰囲気がぼやけてしまっている場合は、まずはショップコンセプトを明確にし、それを具現化していくためにはどういった色使いをしていくのか、角張ったロゴにするのか丸みを帯びたロゴにするのか、どのフォントを採用するのかなどを決めていき、お客様に選ばれるショップデザインを構築していこう。
【著者からの一言】
鍵谷 隆 -KAGIYA TAKASHI-
当記事は2016年ごろ、私がECサイトのコンサル経営をしていた時期にまとめたノウハウ集だ。そのため外部サイトへのリンクが切れていたり、Googleや各種ASPなどの外部システムの仕様変更などで状況が変わっている可能性があることだけは了承してくれ!
ただ商いの本質は変わることはない。ネットショップ運営でお困りの経営者や担当者なら、当サイトの記事も必ず役に立つはずだ。全てのEC関係者に幸あれ。検討を祈る!