一人運営のネットショップなら部分的に仕事を外部委託しよう

EC事業をこれから始めるけど、まずは一人で始めて反応が良ければスタッフを雇って事業を大きくしていこうと考えているオーナーの方も多いのではないだろうか。

実際ネットショップの立ち上げは初期費用をそこまで必要としないため、ランニングコストとしても最も経費が掛かるのが人件費と言ってもよいだろう。

ネットショップの仕事は「ネットショップの仕事は何するの?ECサイトの業務内容について」でもご説明しているが、売上げを上げていくにはやることが盛りだくさん。全てをこなそうと思えばとても一人運営ではやっていけない。

もし一人でネットショップを立ち上げるなら、部分的に作業を外部委託(アウトソーシング)してはいかがだろうか。今回はその点についてご説明していく。

 

外部委託(アウトソーシング)できる作業

数あるネットショップの業務の内、どんな作業を外部委託できるかだが、単純な作業からクリエイティブな仕事までさまざま。大抵のことは任せられるため、店主が苦手とする部分や、一人ではまかないきれない作業を依頼するようにしたい。

 

商品ページ構築

写真撮影

ネット通販にとって重要度の高い商品写真。この写真が雑な仕上がりになってしまうと、商品の魅力も半減してしまう。撮影を委託する場合は1カット当たり数百円で撮影してくれる。もし商品点数の少ないショップであれば経費もそこまでかからないため、プロのカメラマンに依頼してもよいだろう。

商品写真へのこだわりのために、撮影するスタジオを借りたりモデルを起用したいなら、場合によっては一括で撮影を依頼したほうが安く済む場合もある。どのようなシチュエーションの写真を撮るかによって切り分けていこう。

自前で撮影する場合には、以下の記事を参考にしてほしい。

 

商品説明

商品説明文を書くのが苦手なら、専門のプロライターにお願いすることもできる。プロにお願いした文章は、一定のルールのもとに文章を組み立てているため、素人が書いたものよりはるかに読みやすい。

しかし弊社としては、商品説明は店主自ら考えて書いたほうがよいと考えている。いくらプロにお願いしたとしても、その文章から商品への愛を感じることはできない。店主の熱量が商品説明から伝わることで、お客様の中に共感が生まれるのだ。

どうしても自分一人ではできない場合は、プロの組み立てた商品説明に店主が後から肉付けしていくようにして、併用していくとよいだろう。

魅力的な商品説明に仕上げるコツは「商品の魅力を伝える説明文章で訴求力を高める3つの要素とは」を参考にしてほしい。

 

商品アップロード

商品データのアップロードは商品数が多くなればなるほど面倒になる。特にネットショップの立ち上げ時には苦労する。

お使いのシステムに一括アップロード機能があれば作業負担も減るのだが、無料開業サービスのBASEを利用していると、一点一点商品のアップロード作業を行わなければならない。こうした「誰がやっても効率の変わらない作業」はアウトソーシングすることで、ショップオーナーは事業計画や全体のディレクションなど、クリエイティブな業務に集中することができる。

 

集客

リスティング広告

集客の要となるクリック課金型のリスティング広告。具体的な作業内容は、キーワードの需要を調べ、キャッチーな広告文章を組み立て、入札単価を設定して出稿依頼を出す。その後は効果検証を行い、より反応のよい広告に改善していく。

文字にしてしまえば単純だが、費用対効果の高い広告を出稿するためにはある程度のテクニックが必要になる。そのためリスティング広告を代行する企業も多い。

もし店主自身で広告運用をしていくなら「リスティング広告の基本と効果的な運用方法について」の記事を参考にしてほしい。

 

SNS運用

ソーシャルメディア運用は今の時代ならではの集客手法。公式Facebookページを運用している企業も多く、お客間との心の距離が近くなり、ショップのブランディングやリピーターを作っていくツールとして有効に使える。無料で利用できるところも、経費を抑えたい中小企業にとっては嬉しい。

SNS運用の代行を請け負っている企業もたくさんあるが、弊社としては商品の説明文章と同じく、店主自らが運用してほしい。SNSはECサイトでは表に出てこない裏の情報を知れることが醍醐味でもあり、そうした情報は店主でないと発信できない。

各種SNSについては「ECサイトの販促には無料で使える6つのSNSをフル活用しよう」を参考にしてほしい。

 

メディアサイト運用

近年になって注目を浴びている「ECサイトのメディア化」。詳しくは「ECサイト(ネットショップ)がメディア化を進める6つの理由」をご覧いただきたい。

コンテンツマーケティングとよばれるマーケティング手法で、広告とは違い費用をかけることなく集客につなげることができる。そしてユーザーをファン化することで、競合他社には負けない、選ばれるショップとすることが可能だ。

ただ費用は掛からないが、メディア運用は手間がかかる。その手間を請け負うサービスを提供している企業も増えているので、メディア運用をお考えなら、記事制作の外注も検討してみよう。

 

運用

配送

配送サービスを専門に代行している業者もある。自社商品を配送業者に預け、注文が入り次第、お客様の配送先住所情報をお伝えすることで、配送を代行してくれる。配送代行業者の中にはラッピング作業もサービスに含んでいるところもあり、梱包作業も緩衝材を詰めながら丁寧に行ってくれる。

注文数が多くなってくると商品の梱包・配送作業の負担も大きくなるので、アウトソーシングを検討するのもよいかもしれない。

 

運用全般

その他運用全般を請け負っている企業もあり、実店舗を持っていて、おまけ的にEC事業に参入しようという方には嬉しいサービスだ。運用のほぼ全てを外注することで、経営者としては経営方針のことだけを考えることができる。

多くの業者は成果報酬タイプを採用しており、売上げに対する歩率を、報酬として支払う仕組みになっている。

 

越境ECなら翻訳作業

アメリカや中国など海外のお客様を相手にネット通販を行う越境ECなら、言語の翻訳作業が必須となる。もしショップオーナーが語学に堪能な方であれば問題ないが、そうでないなら誰かに翻訳作業を依頼する必要がある。

ただ翻訳にかかる費用は高い。日→英の翻訳でも専門業者に依頼すると日本語一文字に対して10円以上のコストがかかることが一般的。専門的な内容であればよりコストは高くなる。

ただし言語翻訳は越境ECにおいて必須の対応になるため、翻訳コストを見越した上で事業計画を立てるようにしておこう。

 

外部に委託する場合に気を付けること

外部に作業委託する際に気を付けてほしいことがある。それは「作業指示は細かく伝える」ことである。

よくあるNGな発注依頼が、作業の大枠を説明しただけで「あとはお任せで」というスタンス。発注者としては「プロなんだからどうにかなるでしょ」と考えているだろうし、委託される方も好きに作業ができるので楽なのかもしれない。

これで店主の思い通りの仕上がりになって納品されればよいのだが、大抵の場合は店主が想定していたものとは違ったものが出来上がり、トラブルへと発展する。

そうならないためにも、依頼の段階で事細かに作業指示を出しておく。すると委託される側もやるべき作業が明確になり、発注者としても納品後に依頼した事項に対してしっかりと作業がされているかをチェックしやすくなる。

 

どこに委託を頼むか

外部委託と言っても、どこの誰に頼めばよいのだろうか…? 一昔前なら専門業者に依頼するのが一般的であったが、現在ではクラウドソーシングという手もある。

 

クラウドソーシング

クラウドソーシングとはインターネットを利用して、不特定多数の人に向けて案件内容を募集し、それに対応できる人材に仕事を発注する、新しいアウトソーシングの形。

クラウドソーシングの発注先はフリーランスの個人が多いため、専門業者にアウトソーシングする従来のやり方よりも金額を安く抑えることができるのは嬉しいポイント。発注する際の金額については、双方の提案と合意によって決まるため、定価のような概念はない。

また業務を細分化してそれぞれのプロに依頼することも可能。例えば商品の撮影はプロのカメラマンに依頼し、商品説明文章はプロのライターにお願いするといったように。

そこで有名クラウドソーシングサービスを2社ほどご紹介してく。

 

クラウドワークス

2014年に株式市場に上場を果たした株式会社クラウドワークスが提供するクラウドソーシングサービス。会員数は80万人を超えており、仕事の依頼総額も467億円を突破。現在急激に成長しているサービスだ。

依頼できる仕事の数は188種類と豊富で、ECサイトの構築から運用まで、あらゆる業務を委託できる。

クラウドワークス公式サイト: http://crowdworks.jp/

 

ランサーズ

依頼総額は公式サイトによると、2016年4月時点で798億円となっており、規模としては前述したクラウドワークスよりも大きい。141カテゴリの業務を依頼できるようで、こちらもECサイト運営におけるさまざまな業務をカバーできる。

ランサーズ公式サイト: http://www.lancers.jp/

 

その他専門業者

従来のアウトソーシングのように、専門の外部業者に依頼することも決して悪いことではない。専門業者に依頼するメリットとしては仕上がりの保証してくれること。高いお金を払ってプロにお願いするので当たり前といえば当たり前のことだが…

クラウドソーシングの場合は発注相手の経歴を知ることが難しいので、下手をすると経験の少ない相手に発注してしまい、納品されたものの仕上がりがイマイチ…という結果になるリスクもはらんでいる。

確実に質の高い仕事を依頼したいのなら、多少費用はかけても専門業者に依頼するのがベターである。

 

外部委託するメリット

スタッフを増員するのではなく、外部委託するメリットについてご説明していく。

 

品質を高める

「餅は餅屋」という言葉があるように、やはりその道のプロがする仕事は質が高い。EC業務の全てを一人でこなすこともできないことはないが、時間が有限である限りそれぞれの作業にかける時間も分散してしまい、中途半場な仕上がりになってしまうことが多い。

だからオーナーが苦手とすることは部分的にでもその道のプロに依頼する。一時的に必要となるスキルなら、自分で一から技術を習得するよりも効率のよいやり方だ。

 

人件費の節減

デザインが必要ならデザイナーを雇ったり、運用を任せるにはオペレーターを雇えば済む話だが、その人たちに恒久的に専門的な仕事を与えられるとは限らない。

1ヵ月の業務中に3日間だけ必要になる専門職があるならば、人を雇って1か月分の賃金を支払うよりも、一時的に外部委託した方が結果的に人件費の節減につながる。

任せたいときに必要な分だけ、これがアウトソーシングを利用する最も大きなメリットである。

 

おわりに アウトソーシングは上手に利用する

一人でネットショップ運営に取り組んでいるオーナー様にとっては、作業の外部委託は是非やっておきたい施策ではないだろうか。そして作業を外注していくなら、現在抱えている作業を細分化して、どの業務を自分で行い、どれをアウトソーシングするかを明確に決めていく。

そうすることでランニングコストなどの予算規模や、オーナーが求めているショップのクオリティも見えてくる。クラウドソーシングなどの新しいサービスも利用しながら、上手にショップ運営を行っていこう。


【著者からの一言】

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鍵谷 隆 -KAGIYA TAKASHI-

当記事は2016年ごろ、私がECサイトのコンサル経営をしていた時期にまとめたノウハウ集だ。そのため外部サイトへのリンクが切れていたり、Googleや各種ASPなどの外部システムの仕様変更などで状況が変わっている可能性があることだけは了承してくれ!

ただ商いの本質は変わることはない。ネットショップ運営でお困りの経営者や担当者なら、当サイトの記事も必ず役に立つはずだ。全てのEC関係者に幸あれ。検討を祈る!