コンバージョン率の平均は業種によって違うが目安は1%

どんな商売であれ、ビジネスマンは皆最終的なゴールのために営業活動を行っている。非営利組織ではない限り、そのゴールとは売上げにつながるための商品やサービスの購入だ。

そしてEC業界ではお客様が商品購入に至ることをコンバージョンと呼ぶ。コンバージョンとは変換や転換という意味があり、業種によって意味するものは異なるが、とにかくネットショップの場合は商品購入のことを指す。またお客様の総数に対し、実際に購入に至った数をコンバージョン率と表現し、ショップの健全性を計るための指標とする。
※コンバージョン率は場合によってはCVR(conversion rate)と表記されることもあるが、意味は同じ

コンバージョン率が高いお店ほど、お客様の心を掴むことができている良質なネットショップと言い換えることもできるが、果たしてその平均値とはどのぐらいなのだろうか…結果から言ってしまうと、業種や運営形態によってコンバージョン率は変わってくるため、適切な平均値など取りようがない。ただし、これからネットショップを始めようという方は、ひとまず1%を目標に開業するとよいだろう。

 

コンバージョン率が変わる要因

同じようにネット通販をしている企業でも、平均のコンバージョン率を出すのは難しい。取り扱う品や業種、集客手法など、以下に挙げるような要因で変わってくるからだ。

 

商品の希少価値によって変わる

知名度が低いながらも、希少価値の高い商品ばかりを揃えているショップがあったとする。例えば海外アーティストの手掛けたアンティークドールのような商材は、このタイプに当てはまる。

そもそも知名度が高くないということは、ネットショップへの来店数も少なくなる。ただしそれでもアクセスしてくれる人というのは、その商品に対して興味がある人と解釈できる。ただ何となく流れで覗いてみましたという人は、その他のショップよりも割合が低いだろう。

さらに希少価値が高く他のショップで購入することができなければ、もうその店で買うしか選択肢はない。もっと言えばその時を逃したら他の誰かが購入してしまい、売り切れてしまうかもしれない。するとコンバージョン率も格段に高くなる。

どこのショップでも取り扱っているような日用品であれば、お客様としてもそのショップで購入する必要もなければ、すぐに買う必要もない。もっと条件の良いショップで購入するという選択肢も生まれ、コンバージョン率は低くなる。

 

広告を使うかどうかでも変わる

ここで言う広告とはリスティング広告のことだが、広告を利用することでもコンバージョン率は高くなる。広告を踏むユーザーは「○○商品 購入」などのキーワードで検索していることが多く、明確に購入する意思を持っている。一方広告ではなく、自然検索によって流入したユーザーは、その商品を購入するのではなく、どんなものか調べようと思っていただけということも多い。

自然検索での流入が悪いことではなく、興味や関心を抱いているユーザーにサイトを閲覧してもらうことは、後にお客様になってくれる可能性があるためむしろ良いことなのだが、単純にコンバージョン率という面だけで言えば低くなる。

 

時期や季節によっても変わる

物販をしている人なら聞いたことあるだろうが、2月と8月は売上が落ちると言われている。これは根拠のない噂などではなく、実際に多くの商業施設ではこの2ヵ月は他の月と比較して、売上げの落ち込みが激しくなる。

この2月と8月の法則は多少なりともネットショップにも影響を及ぼす。やはりユーザーの購買意欲が下がっていては、ガンガン販促しても反応はいまいちだ。たまたまネットショップをオープンしたのが2月で、全くコンバージョンが生まれなくて落胆していたとしても、その月特有の傾向かもしれないので、過度に意識することはないかもしれない。

 

運営歴によって変わる

誕生して間もないECサイトよりも運営歴10年のネットショップの方が、多くの得意客を抱えている。リピーターは自分が欲しいものがあるときにだけ店に訪れ、お目当てのものを購入してくれることが多い。つまりリピーターが多ければ多いほどコンバージョン率も高くなる。

開業当初はコンバージョン率が低かったとしても、徐々に上がっていくことは極めて自然な流れである。まさに継続は力なりだ。

 

スタッフの力の入れ方で変わる

これは説明するまでもないが、ショップオーナーがどれだけコンバージョン対策に力を注いでいるかで全く変わってくる。世の中には売れるショップと売れないショップがあり、それを平均化しては何の意味もない。

実店舗を構えており、ネットショップはおまけ程度に運営している人と、ネットショップ一本にかけている人では、講じている施策の数も圧倒的に違うだろう。どんどん新しい施策を打ち、改善をかけているショップの方が、全く同じ商品を全く同じ価格で販売していたとしても、コンバージョン率は高くなる。

 

コンバージョン率の目安

環境や運営歴によってコンバージョン率が変わってくることをご説明したが、目安となる数値がないと事業計画を立てていく上でも困ってしまう。ということで、弊社ではクライアントの相談に対しても、おおよその目安として3%、2%、1%という基準を設けるようにしている。

 

3%

コンバージョン率が3%ということは、100名のお客様がアクセスしたら3名は購入にいたる計算となる。ここまでパーセンテージが高ければ上出来であり、いわゆる”売れるショップ“と言ってもよい。

これ以上コンバージョンアップのための施策を続けるよりも、集客や客単価向上といった施策にパワーを使った方がよいだろう。

 

2%

2%のコンバージョン率ならまぁまぁ。しっかりとコンバージョン対策が取れているだろうから、あとは質の高いリピーター顧客をいかに集められるかで、もう少し高めることもできる。

下記の記事を参考にしながら、リピーターを作っていく施策に力を入れていきたい。

 

1%

冒頭でも簡単に説明したが、これからショップを開業するなら、まずは1%を目標にして計画を立てていくとよい。ショップをオープン後すぐは身内からのご祝儀オーダーが入るだろうが、それらは抜きにして、新規のお客様からの注文で統計を取るようにしよう。

もし1%以下ということであれば、コンバージョン率を高めるための施策が必要だ。下記の記事を参考にしながら、お客様がお買い物しやすい環境を作っていくようにしてほしい。

 

メディア化対応でますますコンバージョン率は低くなる

上記では弊社が考えるコンバージョン率の目安について記載したが、ECサイトのメディア化に取り組んでいる事業者は参考にしてははいけない。なぜならメディア化するとコンバージョン率は1%以下になることも平気であるからだ。

メディア化とはユーザーにとって有益なコンテンツを配信することで、常日頃からアクセスしてもらい、他EC事業者よりも心理的優位に立つことが第一だ。そうしてファンをつくり、いつかのタイミングでお客様になってもらう。

メディア化対応で成果を出すためには、常日頃からメディアなりECサイトなりにアクセスしてもらい、コンテンツを楽しんでもらう必要ある。コンバージョン率は「購入数 ÷ 総アクセス数 × 100」で求めるわけだから、総アクセス数が増えればコンバージョン率も低下する仕組みになっている。

もし集客の仕組みとしてメディア化対応しているのなら、ショップへの送客数やメディア運用開始前との売上高の比較などで、その成果を検証しよう。

 

おわりに コンバージョン率は一つの目安

これまでご説明してきたように、コンバージョン率は絶対にこの数値が正しいというようなものではなく、状況に応じて適切な数値は変わってくる。そのため平均値についても出しようがない。ただし一つの目安として、開業後は1%、そして3%に近づけるように改善を繰り返していくとよいだろう。


【著者からの一言】

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鍵谷 隆 -KAGIYA TAKASHI-

当記事は2016年ごろ、私がECサイトのコンサル経営をしていた時期にまとめたノウハウ集だ。そのため外部サイトへのリンクが切れていたり、Googleや各種ASPなどの外部システムの仕様変更などで状況が変わっている可能性があることだけは了承してくれ!

ただ商いの本質は変わることはない。ネットショップ運営でお困りの経営者や担当者なら、当サイトの記事も必ず役に立つはずだ。全てのEC関係者に幸あれ。検討を祈る!