ネットショップの開業は、数あるビジネスの中でも最も参入障壁が低い商売だろう。数百万、数千万円の準備資金を用意しなくても、数万円の資金さえあれば始めることができる。
そのためこれからEC業界で一旗揚げようと意気込んでいる事業者の方も多いのでは。
せっかく独立や企業の新規事業として、ネットショップを始めるわけですから、失敗しないためにもしっかりと順序立てて、成功のためのプロセスを用意していく必要があります。ということで、ネットショップの開業・始め方、運用について、ご説明していきます。
開業する前の事前準備
いきなりショップをオープンするのもよいが、失敗しないためには事前準備が必要だ。事前の準備をどれだけ入念に行えるかで、失敗のリスクを軽減することができる。
ショップを始める理由を考える
簡単に始めることができるネットショップだからこそ、途中で投げ出してしまうこともたやすい。ですがせっかく始める事業ですから、何のために始めるのか、続けていくのかを考えること、自分の中で哲学を持つということは大切だ。
素敵な商品が手元にあるから世の中に広めたい、知恵を活かしてネットショップをどんどん大きくしていきたいなど、理由は何でもいいが、まずはネットショップを運営する理由をしっかりと持っておこう。
資金計画を立てる
ビジネスは資金が命である。運営のための資金が尽きてしまえば経営はできない。だからこそしっかりと準備資金にかかる費用について、計画を立てておく必要がある。
詳細については「ネットショップの開業に必要な費用・用意しておきたい資金」の記事を参考にしてほしい。
ショップをオープンしてすぐに、山のように注文が入ることは無いと思っておいたほうがよい。たとえテレビで頻繁に取り上げられているような話題性・商品力のある品物だったとしても、まずは開業2~3ヵ月の売上金はゼロベースで考えておいた方が、気持ち的にも余裕をもって運営ができる。
開業資金については用意するシステムを無料のパッケージを利用するのか、一からシステムを構築するのかによっても変わってきますし、仕入れにかかる費用も業種によってさまざまだろう。ランニングコストについても、広告費をどれだけかけるのかによっても変わってくる。
自身がどういったタイプで運営していくのかは、用意できる資金を考慮した上で、後でご説明する内容を参考に考えてほしい。
サラリーマンの方は生活費を確保してから
もし現在会社勤めで、独立してネットショップのオーナーになろうという方であれば、収入がゼロになることでしょう。生きていくことは、どうしても支出が伴ってしまうので、会社を辞める前に向こう6カ月ほどの生活費を確保しておくとよいだろう。
開業後すぐに収入が生まれるとは考えにくい。徐々にお客様が増え、リピーターが生まれ、健全なショップ運営となっていくことを考えると、開業後しばらくの生活費にかかる出費は無視できない。
新規事業で行う場合は予算を意識
もともと実店舗があって、企業の新規事業としてネットショップをオープンする場合には、きっと会社として新規事業にかける予算が決まっていることだろう。だから限られた予算の中で、数ある手段の中から何を選択すれば効果的に販売に結び付けられるかを考えていく必要がある。
そうした手段についても、後にご紹介する内容を参考にしてほしい。
商材を考える
ネットショップは商材が無いことには始まらない。自身のショップで何を販売するのかを決める必要がある。
実店舗があり、販路拡大のためにネットショップを始めるという事業者ならば商材について困ることはないが、これからネットショップを新たに開業しようという方にとっては、重要な問題だ。
ものづくりが得意という方は、作家として自分で商品を生み出してもよいし、以前に在籍していた会社の商材を扱いたいのであれば、つてを頼って仕入れルートを確保しておこう。他にも海外に足を運んで買い付けに行ってもよいし、卸問屋と新規取引の契約を結んでもよい。
商材の仕入れに関しては、こちらの「ネットショップの商品仕入れ先・方法(卸問屋もご紹介)」の記事も参考にしてほしい。
ショップ名(サイト名)を考える
実店舗でもお店の名前を決めると思うが、ネットショップにはネットショップならではの決め方がある。例えば検索を意識した名前にするための考え方や、中小企業の場合は企業名をそのままサイト名にするのはよろしくなかったり…
サイト名も売上の良し悪しを左右する重要なキーワードとなるので、開業前にしっかりと考えておきたい。命名時には「ネットショップの名前を付けるときに意識したい3つのこと」の記事を参考に。
開業に必要な届け出を確認
ネットショップといっても何でも販売してよいというわけではない。実店舗と同じで販売するには許可が必要な商材もある。
知らなかったでは済まないので注意が必要だ。
※詳細については「ネットショップの開業前に取得したい免許や許可の届け出」を参照
食品を扱う場合
スナック菓子や缶詰などの加工食品を扱う場合は関係ないが、自家製のスイーツや漬物など、店主自ら手を加えて販売する場合には「食品衛生責任者免許」と「食品衛生法に基づく営業許可」が必要になる。
届け出場所は保健所。
中古品を扱う場合
古本やゲームソフト、リサイクルショップなどの、いわゆる中古品を扱う場合には、「古物商許可」が必要。ちなみに切手やチケットなどの金券を扱うショップでも、古物商許可が必要になる。
中古品の定義については「一度でも誰かの手によって使用されたもの」「使用されていなくても使用のために取引されたもの」「使用していなくても、なにかしらの手入れをされたもの」のいずれかに当てはまれば、中古品の扱いになることを覚えておこう。
届け出場所は警察署。
酒類を扱う場合
ネット通販のように酒類を都道府県をまたいで販売する場合には、「通信販売酒類小売業免許」が必要。
ただし家の中のあまったお酒をネットオークションなどで一時的に販売するには必要なかったり、許可を取っていても全ての酒類を販売できるわけでないなど、細かいルールが定められているのでしっかりと内容を確認しておくようにしよう。
届け出場所は税務署。
ペットを扱う場合
商材としてペットを選択する場合には「第一種動物取扱業」の届け出が必要。
これは犬や猫といった哺乳類、爬虫類、鳥類を販売する際に必要であり、両生類や昆虫、魚類の場合には必要ない。
届け出・登録は各都道府県の動物愛護センターや保護センターで行う。
その他にも医薬品を扱う場合や、海外からの輸入品を扱う場合など、さまざまな許可が必要になることがあるので、ネットショップを開業する前にしっかりと調べ、事前に届け出や許可の取得、登録を済ませておこう。
ネットショップのシステムを用意
事前準備にしっかりと時間をかけたら、販売するための中核にもなるシステムを用意していこう。ここでも予算の関係や集客の方法、メリットについて考えた上で、どのような出店方法を選択するのかが重要。
出店を検討する上でどのようなサービスを利用するかについては、こちらの「ネットショップ開業サービスを徹底比較!無料系からモール系まで」の記事も参考にしてほしい。
独自ドメイン店舗かモール系に出店するかを考える
ネットショップを始める際に、絶対に考えるのが独自ドメインでの出店か、楽天市場やヤフーショッピングのようなモール系に出店するのか…どちらが正解とか間違いとかはないが、参考までにそれぞれの特徴についてご説明していこう。
独自ドメインでの開業
独自ドメインとは「○○○.com」といったURLを、どこにも属することなく、オリジナルのものを用意するということ。ドメインはインターネット上の住所のようなものですので、実社会に置き換えると、ショッピングモールなどに入店することなく、自身の店舗を構えて商売をするようなイメージ。
このドメインの決める際には「独自ドメイン取得時に知っておきたい基本と意識するポイント」の記事を参考にしてほしい。
システムの用意が必要
独自ドメインで開業するからには、通販システムを自ら用意しなくてはなりません。
独自ドメインを使えて既存のシステムを用意してくれるASP(アプリケーションサービスプロバイダ)であれば、カラーミーショップやおちゃのこねっとが有名。テンプレートとしてシステムの枠が用意されていますので簡単に準備できますが、月額利用料を支払う必要がある。
逆にカートシステム含め、全てをオリジナルのつくりにしたいという場合は、ウェブ制作会社にショップシステムの設計を依頼しよう。数十万から数百万の制作費が必要になりますが、フルオーダーメイドで店主やブランドの個性を表現したネットショップが出来上がる。
また少しでもプログラムなどの知識があるなら、ワードプレスでWelcartやEC-CUBEを利用して自作するというのもあり。
ショップデザインを考える
ショップのデザインは、サイトのコンセプトや世界観を表現するのに重要だ。ボタン一つでも角張った四角のボタンなのか、丸みを帯びたボタンを使用するかで、ユーザーがサイトから受ける印象は異なってくる。
デザイン面もウェブ制作会社やデザイナーに発注できるだけの予算があれば問題ないが、ショップオーナーが一人で作業するのなら、フリー素材を利用することで一からイラストを用意する手間を省くことができて便利だ。「ネットショップ運営に使えるジャンル別フリー素材サイト14選」で紹介しているサイトを参考にしてほしい。
ショップロゴを決める
独自ドメインのショップであれば、ロゴを作成してさらに独自性を表現してみよう。ロゴもショップデザインと同様、デザイナーに依頼できればよいが、低予算でECサイトを立ち上げるなら自作するというのも一つの手だ。
ロゴ制作については下記の記事を参考に。
独自ドメインのメリット
独自ドメインでネットショップを運営するメリットとしては、全てが会社の資産になるということ。
アップロードした写真、文章、商品ページなど、全てにおいて独自ドメインに属したコンテンツとなりますので、ショップ運営を止めない限りは、別企業の事情でいきなり店舗閉鎖ということも発生しません。
また制約を気にすることもありませんし、売り上げに対する手数料を支払う必要もありません。ショップオーナーの思い通りに店舗運営を行えます。
独自ドメインのデメリット
逆に独自ドメインで苦労するのは集客。SEO対策を緻密に行い、いかに検索順位を上げることができるかも、売上額を左右する重要な仕事。
集客については「ネットショップの集客に効果的な方法【有料・無料別に紹介】」の記事、SEO対策については「ネットショップのSEO対策で検索順位の上位表示を狙う方法」の記事も参考にどうぞ。
モール系に出店して開業
独自ドメインではなく、モール系にショップを出店して開業するのも一つの手。現在、楽天市場、ヤフーショッピング、ポンパレモールといったところが大手モール系でしょうか。
楽天市場は出店料や月額利用料の高さから、若干利用者が減少しているとのことだが、それでも国内の楽天ユーザーの数を考えれば「売れるモール」であることは間違いないでしょう。
ヤフーショッピングは2013年に出店料無料を発表してから、急激に出店者数を増やしており、既に楽天に参入している事業者数を超えて、日本一のモールに成長しました。ポンパレモールはまだまだこれからという面もありますが、リクルートが運営者ということで今後の動向に注目。
モール系出店であれば、楽天を軸にして、ヤフーショッピングやポンパレモールへの複数出店というのも、検討の余地は十分にある。
モール系出店のメリット
大手モール系に出店するメリットは、なんと言ってもその集客力。SEO的な対策を施さずとも、お客様が勝手にやってきてくれます。そのために高い出店料や利用料を払っているわけですから、そのぐらいのメリットを受けられるのが当然といえば当然なのですが。
ネットショップについてそこまでの理解が無い方ならモール系に出店することで、あまり難しいことを考えることもなく、ショップ運営ができてしまいます。
しかし近年になって、EC事業者が劇的に増加していることから、出店したのはよいがお客様が集まらずに、モールへ支払う経費の方が上回っているという声も耳にします。
どうやら、これからの時代はモール系の集客力を活かしながらも、独自の集客力を身につけていかないと戦っていけないようです。こちらの「楽天やヤフーショッピングなどのモール系ショップもメディア化対策を進めよう」の記事も参照ください。
モール系出店のデメリット
モール出店のデメリットとしては、高い出店料や手数料にある。
出店無料、ロイヤリティ無料をうたっているヤフーショッピングでも、商品が売れたら、Tポイント原資、アフィリエイトパートナー報酬原資、決済サービス手数料などのような名称で、数パーセントは手数料が発生する。
それにモールが閉鎖になった場合には、店舗も連動して閉鎖になりますので、リスクヘッジという意味でも、複数店舗のモールに出店するのがおすすめ。
BASEへの出店という道も
近年話題になっているBASEに出店するという道もある。
BASEとは、出店料もシステム利用料も無料で、必要なのは決済にかかる手数料のみという、低コストでネットショップを始めることのできるサービス。
無料で使えるわりに、これでもか!というぐらい機能が充実しているため、勉強がてらネットショップを始めるにはもってこい。もちろんBASEを軸にしてネットショップを運営していくというのもありです。
しかし無料で始められる分、集客力に難ありといったところ。楽天ほどのSEO力はありませんが、それでも独自ドメインで一からショップを構築するよりも集客はできるかもしれません。
BASEについて興味がある方は、下記の記事もご覧ください。
ショップの環境構築
ネットショップのシステムを用意できたら、次はお客様が気持ちよく買い物できるような環境を構築していきます。
送料の設定
送料はネット通販ならではの考え方。基本はお客様から実際に必要となる送料分だけを頂戴するものですが、複数個の商品を注文いただく場合は同梱して送付できますので、どうしてもシステム上正確な計算ができないという面もある。(大きさがバラバラの商品であればなおさら)
ですので細かい部分はお客様が負担するのか、お店側が負担するのか、ショップの運営方針に合わせて設定していこう。
送料無料
送料無料は間違いなくお客様の購入率を高める施策として有効。
お目当ての商品を別企業が展開するネットショップでも販売しているのを見つけた場合、よほどの理由がない限りは送料無料のショップを選びますよね。ですが全品送料無料とするのは経営上難しいかもしれませんので、一部の商品だけとか、期間限定のキャンペーンとして送料無料とするのもあり。
○○円以上送料無料
「1万円以上お買い上げで送料無料」としているお店よく見ますよね。これは客単価を上げる施策として有効。
お客様としてもあと少しで送料が無料になると分かれば、そんなに欲しくない商品だとしても、商品総額の調整のために何かしら購入したくなります。無料の基準をいくら以上とするかは、ショップ運営を始めてから、そのお店の平均客単価より少し上の額に設定するのがよいだろう。
決済方法の設定
決済方法は最低でも、銀行振込とクレジットカード払いは用意しておきましょう。銀行振込であれば代行費用も発生しないので誰でも用意できます。クレジットカード決済については導入に費用が発生します。日本で使用頻度の高いカードはマスターカード、VISA、JCBの3種ですが、JCBを導入するにはさらに費用が必要。
それに加え代金引換やコンビニ決済も、比較的利用頻度の高い決済方法になりますので用意しておきたい。その他の「電子マネー決済」や「ネット銀行決済」、「PAYPAL」などは余裕があれば用意しておく程度で大丈夫でしょう。
決済の導入には「ネットショップに導入したい決済方法を重要度順にランキング」を参考に。
配送方法の設定
配送方法についても、お客様が選択できるようにしておくとよい。
日本郵便、ヤマト運輸、西濃運輸などの配送事業者から、日本郵便の中にもレターバックやゆうパックなど、追跡や補償などのサービスが付いているかいないかで金額が変わってきます。
こうした細部にまでお客様の要望を反映できるショップは、非常にお客様思いで好感をもたれやすいショップともいえる。
配送手段については「ネットショップで使える主要配送業社の提供サービスをご紹介」を参考に。
商品ページのつくりこみ
ショップの環境を整えたら、次は商品ページを用意していこう。
お客様の購入に関わるページなので、商品ページのつくりこみの出来次第で、売上額にも左右してくる重要作業だ。
商品写真
商品写真はネットショップの運営をする上でとても大事。
ネット通販の場合、お客様は実物を手に取って確かめることができないため、商品説明の文章と写真でしか商品について知ることができない。それに写真は文章とは違い、パッと見て瞬時に理解できるものなので、「この商品気になるな、もうちょっと知りたいな」と思わせるにも有効。
商品写真をより魅力的に撮影するには下記の記事も参考にしてほしい。
写真でできるだけ多くの情報を伝える
商品写真はできるだけ多く用意するようにしよう。ワンカットだけでなく、さまざまな角度・アングルから撮影した商品写真を用意してほしい。そして商品の大きさのイメージを伝えるためにも、ショップスタッフが実際に商品を手に取った様子も写真に収めるようにしよう。
また商品に傷などがある場合には、マイナスポイントであってもしっかりとお伝えすることが大切。後のクレームの原因になってしまいますし、お客様としても傷ものの商品が届いたらがっかりしてしまう。そんなショップは二度と利用しないでしょう。
使用イメージがわく写真
さらに購入に結び付けるには、その商品をどう使うのか、使用イメージがわくようなカットの写真を用意すること。
いいなと思う商品があれば、自分の生活の中でどのような場面で使おうか、購入する前に想像しますよね。その想像をイメージ写真によって手助けしてあげることで、購入という行動に結び付きやすくなる。
アパレル関係であればモデルが着用している写真が必要になりますし、家具であれば実際にモデルルームにコーディネートした写真があるとよい。
撮影時の不備を補正する
できれば自然光を利用して商品撮影を行いたいところだが、撮影日の天気が悪くて全体的に暗い感じの写真になってしまうこともあるだろう。またデジタル画像にしたことで、実物と比較して少々色味が異なってしまうこともある。
そんな時には画像加工ソフトを利用して、撮影時に足りなかった光の加減や色味の補正を行おう。過度な加工処理は良くないが、補正程度であれば商品の魅力を100%伝えるという意味では効果的。
画像加工ソフトについては「商品写真の加工に使える無料画像加工ソフト7選」でフリーソフトをご紹介している。
商品説明
商品画像でいいなと思わせ、商品説明で「この商品購入しよう」と思ってもらえるような説明を心がけよう。
そして主な商品説明は、「商品仕様」「メリット」「ベネフィット」の構成でつくられると考えていただければよい。これら3つの要素については以下でも簡易的に説明してるが、詳しく知りたい場合は「商品の魅力を伝える説明文章で訴求力を高める3つの要素とは」の記事を参考にしてほしい。
商品仕様
商品仕様は商品のサイズや重さ、素材などの情報を記載しよう。表形式にして記載するとお客様にとって見やすいレイアウトとなる。
サイズでも高さ、奥行、幅など、できるだけ細かい部分まで記載する。そしてcmなのかmmなのかといった単位の記載も忘れないようにしよう。
メリット
メリットとは商品の質の高さや、優れている部分など、アピールできる点を説明する項目。
革小物であれば「職人が全て手縫いで仕上げています」や、カー用品であれば「ガソリンの燃費が30%向上するタイヤ」、お米であれば「無農薬で有機肥料のみで育てました」など、商品について特筆すべき点を記載していく。
その他にも「日本で30個の限定生産」や「当ブランドの販売ライセンスは当社だけ」などの宣伝文句もアピールしていこう。
ベネフィット
ベネフィットとは、お客様が商品を購入することで得られる利益のこと。実社会ではセールスの上手な販売ほど、このベネフィットの提示がしっかりとできている。
上のメリットの項で説明した革小物なら、「総手縫いで仕上げているから、縫い糸がほつれにくく、革の質感変化を楽しみながら長きにわたってお使いいただけます」や、タイヤの例であれば「燃費が向上するから経済的にも助かり、浮いたお金をレジャーに使えます」など。
お客様レビュー
仕様・メリット・ベネフィットに次いで、商品ページで有効な役割を果たすのが、実際のお客様から頂いたレビュー情報。
商品説明はあくまでショップ側が一方的に説明するものですので、商品に対する第三者からの評価を知ることができると、より前向きに購入を検討できる。レビューを集めるには「商品ページに記載したいレビュー・お客様の声の集め方」を参考にしてほしい。
新発売の商品で、まだお客様がいないうちは、スタッフによる使用した感想を載せておきましょう。
日々の運用・データ分析
ショップの環境を構築し、商品をアップロードすれば、次第にお客様もやって来ることでしょう。
そして、仕入れ・受注・発送・在庫管理などのオペレーションにも慣れてきたら、ネットショップの健全性を評価するために「客数」「平均客単価」「コンバージョン率」の3つの数字を意識するようにしましょう。
ネットショップの売上はこの3つ数字の掛け算によって算出できますので、それぞれの数字を高めていくことが求められます。
それぞれの数字についてはこちらの「ネットショップの売上げを上げるために意識する3つの数字」を参照ください。
集客
お客様が来てくれないことにはショップは運営できません。
実店舗であれば店舗自体が宣伝効果を果たしてくれますが、ネットショップは砂漠のど真ん中にぽつんと小さなお店を出すようなもので、何の努力もしなければお店自体を見つけてもらうことさえ難しい。(モール系に出店している事業者は別ですが)
だから一にも二にもネットショップは集客との戦いでもあります。
先にもご紹介しましたが、ショップへの集客に有効な手段はこちらの「ネットショップの集客に効果的な方法【有料・無料別に紹介】」も参考にしてください。
コンバージョン率
コンバージョンとは目的のことであり、ネットショップの場合ですと商品を購入してもらうことがコンバージョンとなります。そしてコンバージョン率は総客数に対してコンバージョンした割合のこと。
10名のお客様がいらっしゃって、1名のお客様に商品をお買い上げいただいた場合、コンバージョン率は1割(10%)ということ。
このコンバージョン率が高ければ高いほど、良質なネットショップと言い換えることができ、その裏にはさまざまな策が施されている。決して表に出るようなものではありませんが、ショップオーナーの努力の結晶が数字になって現れる部分。
コンバージョン率を高める手段については、こちらの「コンバージョン率の高いECサイトにするための13の施策」も参考にしてください。
平均客単価
平均客単価を高めるということは、販売にかかる労力を抑えることにもつながり、健全なショップ運営を目指すには意識しておきたい項目。
コンバージョン率と同様、客単価を向上させるための施策も実に多くありますので、検証を繰り返しながら、さまざまな策を試していきましょう。
客単価を上げる手段については、こちらの「ネットショップの客単価を効果的に上げるための7つの方法」を参考にしてください。
効果測定・改善
ネットショップの運営が軌道に乗れば、あとは上の項で紹介した、「客数」「平均客単価」「コンバージョン率」の数字をいかに高めていくことができるか、データ分析しながら策を打ち、効果測定しながら改善していく。
他のビジネスと同じで、ネットショップの運営も結局はPDCAサイクルの繰り返し。(P: Plan・D: Do・C: Check・A: Action)
データ分析にはGoogleアナリティクスなどのアクセス解析ツールを使用することで、PV数、セッション数、ユーザー数などの基本的な数字から、コンバージョン率の確認や、ショップ利用者の年齢層の分析、アクセス端末の確認まで、実に多くのことが確認可能。
Googleアナリティクスの使い方は「GoogleアナリティクスでECサイトをデータ分析する基本の4点」を参考にしてほしい。
さまざまな数字から、売れるネットショップを目指して改善を続けていこう!
情報収集
ウェブサービスの世界はトレンドの変化も早い。集客の仕組みやマーケティング手法など、どんどん新しいテクニックが登場する。
こまめに情報収集しておかないと、後発でオープンする他社のECサイトにいつの間にか売上げも抜かれ、お客さまも流れていってしまった、ということにもなりかねない。
そうならないためにも、業界の動向や新しく登場するノウハウは抑えておきたい。「ネットショップ担当者ならチェックしておきたいウェブサイト13選」を参考にしながら、常にEコマースの流れにアンテナを張っておこう。
おわりに
以上がネットショップを開業・始めるところから、安定した運用をしていくために意識しておくべきこと。
今はEC業界も厳しい時代。もはやかつてのようにネット上に出店すれば売れる時代ではありません。しっかりと繁盛するネットショップにしていくためのプランニングは欠かせません。
しかし目的意識をしっかりともって、適切な手段を選択していけば、売上げの出るショップを作っていけることも事実。
事前準備の段階からネットショップの運営は始まっていますので、必要なものと不必要なものを切り分けながら、ショップ運営をしていきましょう。
【著者からの一言】
鍵谷 隆 -KAGIYA TAKASHI-
当記事は2016年ごろ、私がECサイトのコンサル経営をしていた時期にまとめたノウハウ集だ。そのため外部サイトへのリンクが切れていたり、Googleや各種ASPなどの外部システムの仕様変更などで状況が変わっている可能性があることだけは了承してくれ!
ただ商いの本質は変わることはない。ネットショップ運営でお困りの経営者や担当者なら、当サイトの記事も必ず役に立つはずだ。全てのEC関係者に幸あれ。検討を祈る!