B to C型の商売をしているなら、絶対になくてはならないのが接客。喫茶店に入ればウェイターやウェイトレスが注文を取りに来てくれるし、お店を出るときには「ありがとうございました」と頭を下げてくれる。商売の基本はお客様の欲求を満たすことであり、そのサポートとして接客はどうしても必要になる。
だがネットショップの場合はどうだろうか? オーダーを伺うためにお客様の横に立つ必要もなければ、感謝の言葉を発しながら頭を下げる必要もない。全てがシステムによって自動化されているからだ。
しかし、だからと言ってネットショップに接客が必要ないという結論には至らない。ネットショップの接客とは、ユーザーの思考を読んで、サービスを先回りで用意する。見方によっては実店舗よりも高度な接客スキルが必要になることを覚えておいてほしい。
ネットショップは接客をおろそかにすると離脱につながる
アパレルを販売している商店なら、実店舗の場合はお客様に「この服の色違いはありますか?」と聞かれれば、色違いの品物を探して答えればいい。それでお客様も満足するし、この接客自体何もおかしいことではない。
しかしそれがネットショップだったら、お客様の近くにはその服の色違いがあるかどうかを、訪ねるスタッフがいない。そうすると同じショップの中で色違いの品物を探すか、検索画面に戻って「商品 青」などのように、再度お目当てのアイテムを販売しているショップを探すかの二択になる。
ここで後者の選択をした場合、それはお客様の離脱だ。もし色違いのアイテムがあったとしても、このようなケースでは機会損失が生まれてしまう。
仮説をもとに接客をする
先の色違い商品の例では、ネットショップ的接客が全くなっていない。ネットショップの接客とは、仮説がすべてである。
ショップ側としては商品情報をアップロードする際に「この商品を見たお客様は、色違いがあるかどうかも気になるのでは?」や「もし色違いのアイテムを探しているユーザーには、これじゃないと思われてしまうな…」とユーザーの思考を先読みし、それに対する仮説を立てることが重要である。
「商品説明の中に、ショップ内で取り扱っている色のバリエーションも記載すればお客様の知りたいことを補完できる」や「色のオプション機能を付けることで、同一ページで色違いのアイテムも購入できれば、離脱を防げるな」といった仮説のもと、施策を講じていくことがネットショップ的接客なのである。
仮説には検証がつきもの
仮説を立て、施策を講じたら検証をするのが商売の鉄則である。実店舗での接客であれば、もし自分のとった行動がお客様の求めているものでなかったとしたら、お客様の顔色や言動によって間違いに気づくことができる。
しかしネットショップの場合はそうしたリアルタイムでの判断ができないため、アクセス解析などのデータ分析から、仮説に対しての施策がうまく機能しているかどうかを検証していく。
「ネットショップって意外に面倒じゃん…」と感じるオーナー様もいるかもしれないが、自店を繁盛店にしていきたいなら、こうした細かい施策や分析は欠かせないものであり、それらが積み重なって使い勝手の良いネットショップであると認識されるのである。
ネットショップ的接客の一例
お客様の思考を先読みして、使い勝手の悪いショップだと思わせないためには、ショップで取り扱っている品物のジャンルや、お客様の質によっても変わってくるが、一般的には以下に挙げるようなポイントを意識するとよい。
すぐに問合せしたいと思う方のために連絡先をすぐわかる場所に
商品について不明な点が出ないように、しっかりと商品説明を記載しておくべきであるが、それでもお客様によっては不明点の残る内容になっているかもしれない。そうした状況になった場合、お客様は「電話でもいいのですぐに確認したい」と思うことが予想される。
だからネットショップの連絡先は、どのページにいても分かるようにしておくことが望ましい。たとえばサイトのヘッダーあたりに「商品の在庫やお届けまでの日数など、ご不明な点があればお気軽にご連絡ください」という文言と併せて、電話番号を載せておくと良いだろう。
初めてショップを利用する方のためにショップルールを一覧でまとめる
ネットショップにおいてランディングページとなるのは、トップページではなく商品ページになることが多い。これは商品名で検索をかけたユーザーが、検索経由で訪れる可能性が高いからだ。
この場合、その多くは初めてショップを利用する新規顧客だと想定できる。商品写真をチェックし、商品説明を読んで「欲しいな」と思ったときに、ユーザーが次に気になるのは送料やお届けまでの日数などのショップ独自のルールだ。
これは楽天市場に出店しているショップに多いのだが、送料などのユーザーにとって気になるショップルールが、どこに記載されているのかが分からないことがある。こうすると先程まで欲しい気持ちでいっぱいだったユーザーの気持ちもげんなりしてしまう。しかし商品説明の末尾に「送料やお届け日数などの説明はコチラのページをご覧ください」と一言あったらどうだろうか。「そうそうちょうどそれが知りたかったんだよ」と思う人が多いだろう。
送料や発送までにかかる日数、ギフト対応などの独自のショップルールは一覧にしてまとめておき、そのページに絶妙のタイミングで誘導できるようなアナウンスをすることが理想である。ユーザーに知らせたいショップルールについては「決済画面に進む前に知らせておきたい5つのショップルール」の記事を参考にしてほしい。
あらかじめユーザーが気になることをFAQとしてまとめておく
ユーザーが商品に対して感じるであろう不安や疑問を網羅しておくという意味では、FAQ方式を採用すると、自然な見せ方ができる。
FAQとは「Frequently Asked Questions」の略であり、「よくある質問」と言ったほうが分かりやすいだろうか。お客様が抱くであろうクエスチョンを想定し、アンサーを用意する。
例えば「Q.ここで紹介されている以外のカラーはありませんか?」というクエスチョンに対し「現状は当ページで紹介しているだけですが、ご連絡をいただければ取り寄せして発送が可能です」といったアンサーを記載する。こうすることでユーザーの疑問を解決することができ、すこしでもユーザーの離脱やショップに対するマイナスのイメージを防ぐことができる。
FAQについては「商品を買ってもらいたいなら買わない理由をつぶせ!FAQの事例」でも詳しく説明しているので参考にしてほしい。
以上ではネットショップ的接客術の3件の例をご紹介したが、考えれば考えるほど、接客に必要な要素は尽きることはない。ショップの商品とお客様の質を見つめ直し、思いつく限りの仮説を立て、それに対する施策を講じていこう。
オンライン接客ツールが革命を起こす
ここまでネットショップの接客とは、ユーザーの思考を先読みすることであると説明してきたが、実は今ネットショップの接客に革命が起きている。それがオンラインチャットツールの登場だ。
ユーザーがECサイトにアクセスすると、画面の右下あたりにぴょこんとチャットウィンドウが登場し、ユーザー側で何か気になることがあれば、すぐにショップ店員に疑問を投げかけることができる。それでいてチャットツールだから、メールでの問い合わせよりもレスポンスが早く返ってくる。実店舗での会話と同じように、接客ができる優れものである。
電話やメールでの問い合わせのいいとこ取り
電話での問い合わせの場合は、すぐに返事を聞けるが、電話するという行為自体を躊躇してしまうお客様も多い。メールでの問い合わせの場合は、心理的障壁は低いが、いつ返答がもらえるのかが分からない。しかしチャットツールなら、その気軽さからそれほど身構えて質問をする必要もなく、返事も早く返ってくる。
このチャットツールは、電話やメールでの問い合わせのいいとこ取りのシステムと言ってもよい。
新たな接客の形を実現
オンライン接客ツールはただのチャット機能だけでなく、お客様の質をリアルタイムで分析し、そのお客様に対して最適な策を講じることも可能になる。
たとえばECサイトの滞在時間が長く、なかなか離脱しないユーザーは”その商品を購入することを悩んでいる”ことが推測できる。そうしたお客様に、当日利用限定のクーポンを配布することで、買うきっかけを与えてあげることができる。オンライン接客ツールを導入することで、こうした新しい接客の形が実現するのである。
今後はオンライン接客が当たり前になる
ネットショップでのオンライン接客は、日本では現状あまり見られないが、お隣の国、中国ではもはや必須のツールになっているという。アメリカでも普及が進み、多くのECサイトでオンライン接客機能を見かけることが多くなった。
この流れは確実に日本のEC業界にも訪れるだろう。今後は画一的な接客ではなく、お客様一人ひとりに最適な接客を施すことが、必須の対策となってくるだろう。
オンライン接客ツールについては下記のサイトで紹介しているので、参考にしてほしい。
おわりに 質の高い接客はコンバージョン率を高める
実店舗に限らず、ネットショップであっても接客が優れているお店はコンバージョン率が高くなる。接客で大切なことは、いかにお客様思いの思考で、使いやすいショップにできるか、ということ。そのためには、お客様の立場、目線で自身のショップを見つめ直すことが大事である。もしかしたら使い勝手の悪いところが見つかるかもしれない。
さらに今後はオンライン接客ツールの登場で、ネットショップの接客は新たな局面をむかえることが予想される。常に技術的な革新には敏感にアンテナを張り、ショップにとって良いと思える施策はどんどん取り入れることを検討していこう。
【著者からの一言】
鍵谷 隆 -KAGIYA TAKASHI-
当記事は2016年ごろ、私がECサイトのコンサル経営をしていた時期にまとめたノウハウ集だ。そのため外部サイトへのリンクが切れていたり、Googleや各種ASPなどの外部システムの仕様変更などで状況が変わっている可能性があることだけは了承してくれ!
ただ商いの本質は変わることはない。ネットショップ運営でお困りの経営者や担当者なら、当サイトの記事も必ず役に立つはずだ。全てのEC関係者に幸あれ。検討を祈る!