ネットショップをこれから開業する方、仕事をする場所については既にお決まりだろうか。
「一人運営のネットショップなら部分的に仕事を外部委託しよう」でもご説明しているように、EC業務は外注を上手に利用することで、1人でも運営が可能だ。そのため作業場所については、一人運営で始めるなら自宅でも問題ないし、チームを組んでスタートさせるなら専用のオフィスを借りる必要があるだろう。
どのような場所を利用して開業するかは、経営方針や今後の展望を考慮しながら決めていけばよいのだが、どんな場所を選ぶかで、それぞれメリットやデメリットがある。
今回は、作業場所に応じた特徴についてご説明していく。
ネットショップの仕事に必要なスペース
まずはネットショップの仕事を遂行していく上で必要になるスペースのご説明から。商品を陳列してお客様を迎え入れる必要のある実店舗と比較すると、それほど広いスペースは必要としないし、立地も関係ないのだが、それでもある程度のスペースは必要になる。
PC作業スペース
インターネット上を主戦場とするネットショップはPCがないことには始まらない。商品情報のアップロードや画像の加工、お客様へのメール対応など、主な作業はPCで行う。机と椅子を一つずつ配置できるスペースは最低でも必要になる。
在庫管理スペース
「売る物がなければデータやスキルを商材として販売しよう」でご紹介しているような、自分のスキルやデータを販売している事業者でない限り、手元には商品在庫があるのが普通だと思う。
その在庫を保管しておくスペースも必要になる。またPCでの作業スペースと在庫スペースが離れすぎていると業務が円滑に進まないため、できるだけ近い場所に設置しておきたい。
写真撮影スペース
ネットショップの仕事には商品撮影も含まれる。もしプロのカメラマンに外部委託したり、どこかの専用スタジオを借りて撮影を行っているなら必要ないが、自社内で撮影まで行おうとするなら、撮影スペースも必要になる。
また本格的に撮影を行うなら照明などの機材も使用するため、大物の商材を扱っているショップならそれなりの広さが必要となる。撮影機材については「ネットショップの商品を美しく撮影するために必要な機材」を参考にしてほしい。
自宅
まずは自宅を事務所にする場合について、特筆すべき点を述べていく。
生活臭に気を付ける
お客様の元にお届けする商品在庫に、生活臭が染み付いてしまわないように注意してほしい。
もし商品が到着して、開封したらタバコ臭かったり、料理のしみついた臭いが漂ってきたら、お客様は嫌な思いをするだろう。ショップの評価も最低ランクに位置づけられ、リピーターになってくれる可能性は極めて低くなる。
生活臭はそこに住んでいる住民はなかなか気づかないものだが、他人は敏感に感じとる。特に布製品は匂いを吸収しやすいので、アパレル関係やシーツやタオルなどの寝具を販売している事業者は特に気を付けてほしい。
こまめに換気をしたり、掃除をするなどして、大切な商品を生活臭から遠ざけるようにしよう。
仕事にメリハリをつける
自宅を仕事スペースにすることで、勤務時間がだらだらになってしまう人がいる。良い意味で公私混同となるのならよいが、ついつい仕事をさぼってしまうようではいけない。
誰も見ていないからこそ、しっかりと自分を律する必要がある。勤務時間や休憩時間は必ず決めるようにして、仕事とプライベートのメリハリをつけるようにしたい。
ただ自宅を仕事場にすることは悪い面だけでなく、夜間の急なトラブルでもすぐに対応できるという利点もある。
住所公開のリスク
ネット通販の決まり事として、サイト内には特定商取引法の表記ページを設置しなければならず、そのページでは事業者の住所や電話番号を公開することが求められる。これは法律で定められているため、自宅を事業所としている場合でも「個人情報だから公開したくない」という理由では通らない。
実店舗で考えてみても、電話番号の公開できないお店なんて不信感満載だろう。ついつい何か悪いことをしているのでは…と思ってしまう。必ず住所や電話番号といった連絡先は公開するようにしよう。
バーチャルオフィスの利用
どうしても自宅の住所や電話番号を公開したくないなら、バーチャルオフィスを利用するとよい。月々数千円から高くても2万円ほどの費用で、住所や電話番号を取得することができる。もちろん法律には違反していないので、安全に使えるシステムだ。
その住所宛に荷物が届いたり、電話がかかってきても転送サービスを利用できるのも嬉しいポイント。バーチャルオフィスについては「ECサイトで住所公開が嫌ならバーチャルオフィスを利用しよう」の記事を参考にしてほしい。
専用オフィス
続いては専用オフィスを利用する上で知っておきたいこと。一企業として活動していくなら最も一般的な執務スペースとなる。
賃貸料が発生する
当たり前のことだが、自宅を事務所にするのとは違い、別途で賃貸料が発生する。賃貸料については立地によっても変わってくるため、都心に近づけば近づくほど高くなる。
ただし弊社としてはネット通販の場合は、それほど立地にこだわる必要はないと考えている。場所を問わずお買い物できることがネット通販のメリットであり、サービスを提供する事業者がどこにあろうと消費者はそれほど意識はしない。
唯一消費者が気にするポイントを挙げるなら送料の関係で、その企業が同一地域にあるかどうかぐらいではないだろうか。
もし複数人で運営していく場合には専用のオフィスが必要になるだろうが、立地にはこだわらずに、賃貸料はできるだけ抑えてほしい。そうでないと低コストで始められるというネット通販の旨みが半減してしまう。
取引先との商談に応じれる
自宅を事務所にしていると、取引先関係者にご訪問いただこうにも、なかなか迎え入れにくい。しかし専用のオフィスを構えていれば、取引先との商談にも応じることができる。
ネットショップといえども、事業を大きく成長させたいなら企業間のつながりも大切にしていきたい。
マンションやアパートの一室でも可
専用オフィスといっても、オフィスビルを利用する必要はない。オフィスビルの敷金は賃料の6~12ヶ月分が相場であり、それに加え保証金が必要になることも多く、非常に高くなってしまう。そのためマンションやアパートの一室を賃貸するという手もある。
ただしマンションやアパートを賃貸する場合は、家主が事業所としての利用はNGとしていることも多いため、入居前には必ず事業所として利用することを申請しよう。もし看板などを設置したいなら、その旨も説明しておくと、後々のトラブルを回避できる。
レンタルオフィス
レンタルオフィスとは一つのフロアにいくつもの企業が入居するスタイルのオフィス。従来の日本ではあまり見られなかった形態だが、外資系企業が先導となって進めてきたと言われている。
自宅で仕事をすることに抵抗があり、プライベートと仕事を完全に切り分けたいという方もよく利用している。
賃貸料を安く抑えられる
複数の企業でフロアスペースをシェアするため、普通にオフィスをレンタルするよりも賃料を抑えることができる。立地面もそれなりに好条件の場所にあることが多い。
それにプリンタやコピー機なども用意されており、利用するのに追加費用が発生することもないのが一般的。汎用型の大型OA機器を用意するだけでも100万以上するので、それらを無料で使えるのは、小規模事業者にとってはありがたい。まさに今の時代に合ったオフィス利用の仕方とも言える。
商品の在庫スペースが確保できない
レンタルオフィスの場合、PCでの作業はストレスなくできるかもしれないが、ネットショップの運営に必要な在庫管理や商品撮影のスペースまで用意はされていない。
在庫を持つことのないショップの場合には有効に使えるだろうが、在庫ありきの物販型ECサイトにとっては、あまり役に立たないかもしれない。
コワーキングスペース
ここ2,3年で急激に増えてきたコワーキングスペースという名の執務スペース。コワーキングとは、複数の人間が一つの場所を共有して、それぞれが別々の作業をすることであり、それを行うスペースのことををコワーキングスペースと呼んでいる。
レンタルオフィスとは違い自社の空間という概念がなく、図書室のような開放的な空間をそれぞれの人間が自由に利用している。フリーランスや出張者の利用が多いことも特徴的。
使いたいときに使いたいだけ
コワーキングスペースの多くは、時間貸し制度が用意されている。1時間につき数百円程度で利用できるので、好きなときに使いたいだけ利用ができる。自宅での作業で行き詰まったら、コワーキングスペースに出向いて、いろんな人との意見交換をしてみると、新しいアイデアが出てくるかもしれない。
他者から刺激を受けるという点も、コワーキングスペースならではの利点。
また会員制度を用意しているコワーキングスペースも多く、月額費用を支払うことで24時間いつでも利用可能になる。
おわりに 働き方に応じて作業場所を切り分ける
自宅を事務所にするのも、オフィスビルを賃貸するのも、どれも間違いではないし、正解でもない。重要なのは事業の規模やショップオーナーの目指しているものによって事務所の形態を考えていくこと。
ネットショップの業務もそれなりにスペースは必要になるので、これから業務を始めようという方や、オフィス移転を検討しているなら、今回ご紹介した情報を参考にしてほしい。
【著者からの一言】
鍵谷 隆 -KAGIYA TAKASHI-
当記事は2016年ごろ、私がECサイトのコンサル経営をしていた時期にまとめたノウハウ集だ。そのため外部サイトへのリンクが切れていたり、Googleや各種ASPなどの外部システムの仕様変更などで状況が変わっている可能性があることだけは了承してくれ!
ただ商いの本質は変わることはない。ネットショップ運営でお困りの経営者や担当者なら、当サイトの記事も必ず役に立つはずだ。全てのEC関係者に幸あれ。検討を祈る!