ネットショップの魅力は、他の商売と比較して開業費用を安く済ませることができる点。
実店舗での開業だと店舗の敷金や保証金などで、初期費用として数百万円は必要になる。対してネットショップの場合は、無料の開業サービスを利用することで、極端な話0円でも自分のお店を持つことができる。
とは言ってもそれは机上の空論であり、実際にはデータやスキル販売ではなく、物販をしていくなら最初に在庫を抱える必要がある。そしてネットショップの開業準備に一番費用がかるのが、商材を揃えること。
※ネットショップの開業費用については「ネットショップの開業に必要な費用・用意しておきたい資金」を参考にしてほしい。
ただし商材を仕入れる費用が必要なければ、もっと開業のハードルは低くなる。今回は在庫を持たずしてネットショップ運営を始められる3つの方法についてご説明していく。
受注生産で販売する
ハンドメイド作家さんやクラフトアーティストなど、自身で何かを作り出すことができる能力があるなら、受注生産体制でネットショップを運営していくとよい。そうすることで在庫を抱えることなく運営ができる。
個人でものづくりをする方でなくても、商品を自社開発をしている企業のECサイトでも問題ない。
ハンドメイド作家さんがネット通販を始めるなら「ハンドメイド品を販売したい作家さんが選ぶネットサービス」の記事も参考にしてほしい。
最低一つは用意しなければならない
無在庫販売ができるとはいえ、ネット通販をするなら商材写真の撮影がどうしても必要になる。そのため開業時に最低一つはサンプルとなる商品を用意して、商品撮影を行わなければならない。
ただしその一つも無駄にするわけではなく、注文が入れば発送すればよい。開業の手間が一つ増えるという話だ。
できたてホヤホヤをお届けできる
受注生産ということは、注文者にはできたてホヤホヤの品物をお届けすることができる。食品ではないため熱々ホクホクというわけではないが、商品は完成した瞬間から劣化が進むため、一番良い状態で配送できる。
特にレザーアイテムなどは経年変化という、時の経過とともに変化する革の質を楽しむという醍醐味がある。そうした商品は完成してすぐに入手できるのは、お客様としても嬉しい。
お届けまでに時間がかかる
受注生産のデメリットとしては、注文が入ってから制作に取り掛かるため、配送までにある程度の時間を要することである。すぐにでも欲しいと思っているユーザーは、即日配送が可能な別のショップで似たような商品を購入してしまうかもしれない。
在庫があれば購入してくれたであろうお客様を逃してしまうことで、機会損失が生まれる。
販売委託で窓口となる
在庫を持ちたくないなら、他の商店の商品を委託販売する形式でもよい。自身のECサイトに注文が入り次第、商品を生産している事業者に発送先住所を連絡し、そのまま直送してもらう。イメージとしては販売窓口の役割。
収益の仕組みとしては、販売手数料でまかなう。売上げに対するパーセンテージを販売委託手数料として頂戴することが一般的。手数料の割合については取引先との交渉で決めていけばよいが、30%を超えると「ちょっと高いな…」という感情から、取引してくれる業者も少なくなる。
商品数をリスクなく増やせる
委託販売できる業者との契約をいくつも結ぶことで、自社のECサイトで取り扱うことのできる商品数を、リスクなく増やすことができる。単品で徹底的に勝負するのも一つの手だが、商品数が増えることはよりコンバージョンしやすくなる施策として有効である。
ただ取り扱う商品のテーマがブレブレになっては誰のためのお店なのかが分からなくなってしまうので、手作りアイテムや革小物といった、一定のテーマにまつわる商品にしぼって品数を増やしていくとよい。
取引先との連携が面倒
取引先や商品数を増やし過ぎると、取引先との在庫連携が大変になるというデメリットも発生する。そのため取扱いの商品は通年で一定の供給量がある商材が理想である。
在庫がなくなったときの連絡や対応については、取引先との交渉時にしっかりと決めておくようにしたい。
ドロップシッピングを利用する
ドロップシッピングとは、上記でご説明した委託販売のようなスタイルだが、その違いは自身で企業と取引を結ぶ必要がないこと。ドロップシッピングを提供しているASPがあり、そのASPがすでに複数の企業と取引契約を結んでいるため、EC事業者としてはそのASPを利用してECサイトを立ち上げることで、豊富な商品を取り扱うことができる。
手間も負担も少なくして販売委託ができるため、サラリーマンや主婦の副業として利用されることが多い。
販売価格は自由に決められる
利益の仕組みとしては「販売価格 – 商品個別の卸値」であり、卸値についてはASPによって商品ごとに決められているため、EC事業者にはどうすることもできない。ここが自社で生産企業と直契約を結ぶことのないドロップシッピングのデメリットでもある。
ただし多くのドロップシッピングASPでは、販売価格はショップ運営者が独自で決められることが多い。もし相場よりも高値で販売することができれば、利益率が高くなるという嬉しいシステムになっている。
しかし実際問題は消費者も馬鹿ではないため、あまりに高い販売価格を設定しても全く売れない。特にネット通販は価格の比較が容易なため、同じ商品ならより安いお店で買おうとするだろう。
他店舗と商品構成が被りやすい
同じドロップシッピングASPを利用するEC事業者が複数社いれば、取り扱う商品も似たようなものになってくる。そのため商品構成ではショップの個性を出しにくくなる。
また上の項でも説明しているが、複数のネットショップで同じ商品を取り扱うことで、より価格競争に巻き込まれてしまう可能性が高くなる。
ネガティブな評価が多い
リスクをとることなく商材が確保でき、手間をかけずに委託販売型のECサイトを開業できるドロップシッピングは、一見すると素晴らしいシステムのように感じるが、ネガティブな噂が蔓延していることも頭に入れておきたい。
ドロップシッピングは儲からないと言われていることも多く、詐欺まがいの事件が起きていることも確かで、過去にはドロップシッピングを提供する事業者側に逮捕者が出たこともある。
どうしてもドロップシッピングを利用するなら「もしもドロップシッピング」のような大手ASPを利用することや、なによりも「楽して儲けることはできない」という意識を持っておくことが大切。世の中商売は簡単ではなく、楽して利益を生み出そうと思うから、現実との落差にがっかりしてしまう。
ドロップシッピングで利益を出すことはできなくはないが、それなりの努力が必要なのは絶対である。
おわりに 無在庫販売はリスク低減につながる
無在庫でネットショップを運営するということは、売れ残りをゼロにすることができる。せっかく仕入れた商品も売れ残ってしまうと、仕入れに掛けた費用が無駄になってしまう。そしてそのロスした費用はどこかの売上げで賄わなければならない。
通常は売れ残りのことも考えて販売価格を決めるものだが、在庫を抱えることがなければ、そのようなことも必要ない。ある意味適正価格で消費者に提供できるとも言える。
もしリスクを抑えてEC事業をスタートさせていきたいという方は、無在庫販売に挑戦するのも一つの手である。そして反応がよければ在庫を抱えて効率よく販売を行っていくのもよいだろう。
【著者からの一言】
鍵谷 隆 -KAGIYA TAKASHI-
当記事は2016年ごろ、私がECサイトのコンサル経営をしていた時期にまとめたノウハウ集だ。そのため外部サイトへのリンクが切れていたり、Googleや各種ASPなどの外部システムの仕様変更などで状況が変わっている可能性があることだけは了承してくれ!
ただ商いの本質は変わることはない。ネットショップ運営でお困りの経営者や担当者なら、当サイトの記事も必ず役に立つはずだ。全てのEC関係者に幸あれ。検討を祈る!