EC業界に限らずだが、商売する上で”決済”は欠かせないプロセスだ。どんな商売も決済手段を用意していなければ支払いが行えない。
ネットショップでも同様に決済システムを導入することは必須事項であり、考えるべきはどんな決済手段を用意するか? ということだろう。決済方法によっては導入費用が発生するサービスもあるので、やみくもに全ての決済手段を使えるように…というわけにもいかない。
そこで決済手段の重要度を加味して、導入しておくべき決済方法をランキングしていこう。
1位 クレジットカード決済
最もお客様に選ばれる決済手段がクレジットカード決済だ。お客様にとっても支払いのために外出する手間も省けるし、ショップ側としても商品代金の回収漏れがないので、非常に便利な決済方法といえる。
クレジットカードの導入には初期費用や決済額に応じた利用料が発生するが、それでもクレジットカードだけは導入しておいた方がよいだろう。
VISA、MasterCardに余裕があればJCBも
クレジットカードにはいくつかのブランドがあるが、VISAとMasterCardの二大ブランドの導入は必須だ。これに加え日本初のクレジットカードブランドのJCBも導入しておきたい。
ただしJCBの導入は別料金が必要になることもあるので、重要度的には必ずしもではないが、金銭的に余裕があるのなら導入したい。
手数料無料のSPIKE
SPIKEというクレジットカード決済サービスをご存知だろうか?
クレジットカードの導入はクレジットカード加盟店手数料が発生するのが常識だが、2014年頃から徐々に普及し始めたSPIKEは、VISA・MASTERに限り、月に100万円までの決済なら初期費用、月額利用料が無料で利用できる衝撃のサービスを展開している。
そんなうまい話あるわけない、怪しい…と思ってしまうが、どうやら大手企業が利用するビジネスプレミアムプランの手数料で、中小規模が利用するフリープランの手数料をまかなう仕組みになっているようだ。
EC-CUBE、カゴラボ、Magento、Live Commerce、楽天リピートといったプラットフォームに対応しており、数行のコードを実装するだけで簡単に導入できるそうだ。
【SPIKE】
https://spike.cc/
2位 金融機関への振込み
金融機関への振込みの一番の利点は、導入するための費用や、決済手数料が発生しないという点にある。個人の方であってもネットショップを始めるために銀行口座の一つぐらいは開設しているだろう。
金融機関名、支店名、口座種別(普通 or 当座)、口座番号、振込先名義人をお知らせすることで、お客様がATM端末から振込み処理を行う。
お客様側のデメリットとしては振込手数料がかかることと、ネット上で決済が完了せずに、外出しないといけない手間が発生する。その手間のせいで、ネット上で商品の購入を済ませたものの振込みに行く作業が面倒になり、商品に対する欲求が薄れ、入金がされないということもある。
3位 代金引換
一般的に代引きとも呼ばれている代金引換。クレジットカードを持っていない消費者で、わざわざ外出するのも面倒だと感じたり、足腰の弱くなってきた高齢者にとってはありがたい決済方法。
お客様は配送業者に商品代金と手数料を支払い、配送業者からEC事業者の口座に振込みがされる。
EC事業者は郵便局の口座を開設したり、運送会社と契約を結ぶことで代引き発送を利用できるようになる。
4位 コンビニ払い
セブンイレブンやローソンなど、日本の主要なコンビニで支払いができるコンビニ払い。日常でコンビニを利用する方にとっては、普段の買い物のついでに支払いもできるため、比較的利用者の多い決済方法だ。
特にクレジットカードを持っていない10代の若年層にとっては、最も選びやすい支払い方法になる。またコンビニは24時間営業していることが多く、深夜帯でも支払いが行えるという利点がある。
コンビニ払いの流れ
お客様は商品を購入する際に、どのコンビニで支払いを行うかを決められる。利用できるコンビニエンスストアの種類は以下の通り。
- セブンイレブン
- ローソン
- ミニストップ
- ファミリーマート
- セイコーマート
- サークルKサンクス
- デイリーヤマザキ
コンビニを選択すると支払い番号の通知が届くので、セブンイレブンの場合はその番号をレジで伝えたり、ローソンの場合は店内のロッピーに入力することで決済が完了する。
5位 ゆうちょ振替
銀行や信用金庫への振込みではなく、ゆうちょ銀行からゆうちょ銀行への送金は振替という扱いになり、手数料がかからないのだ。だからゆうちょ口座を持っているお客様としては、手数料がかかる銀行振込みよりゆうちょ振替を利用したい。
それに郵便局は日本全国にあるので、利用者が多いのも事実。三菱東京UFJ銀行やみずほ銀行と比較しても、ゆうちょ銀行は預金残高の面でもその差を大きく引き離している。
EC事業者としては、通常の金融機関の口座に加え、ゆうちょ口座も開設しておきたい。
6位 PAYPAL
PAYPAL(ペイパル)はクレジット決済代行サービスの一種で、海外ではメジャーな決済方法の一つだが、日本では導入が遅れている。PAYPALの導入は、PAYPALに直接アカウントを開設するか、各種決済代行サービスを利用する。
安心なクレジットカード決済
有名企業が運営する大手ショッピングサイトならまだしも、個人運営のネットショップでクレジット決済を利用したいときに、クレジット番号を教えることにためらいを覚えないだろうか。
商売は信頼関係のもとに成り立っているが、顔の見えないネット通販はどのような人物が運営してるかを知ることができない。もし入力したクレジット番号を悪用される可能性はゼロではないのだ。
そんな不安を解消するのにPAYPAL決済は効果を発揮する。お客様とEC事業者の間にPAYPALが介入することにより、EC事業者にクレジットカード番号を教える必要がなくなるのだ。さらに届いた商品に不備があった場合の補償など、買い手にとって安心して買い物できる環境が整っている。
越境EC事業者なら必須の決済ツール
PAYPALはアメリカの企業が運営しているため、取扱いの通貨は円だけではない。ドルやユーロはもちろん、イギリスのポンドやロシアのルーブルなど、計22の通貨に対応している。
海外に向けて日本の商品を販売している越境EC事業者なら、PAYPALは絶対に導入しておきたい決済サービスだ。
7位 ネット銀行決済
楽天銀行やジャパンネット銀行などのネットバンク口座を開設しているお客様に選ばれるのがネット銀行決済。
通常の銀行振込みは、わざわざATM端末まで行く必要があるが、ネット銀行決済の場合はお買い物と同時にウェブ上で支払い処理を完結させられることが魅力である。
クレジットカード決済と同様、購入から決済完了までをノンストップで行えるため、未入金のまま放置になることが少ない。
ネットバングの口座利用者が少ないため7位という順位にしているが、ネットバンクの利用者の増加とともに、将来的に重要度が高くなってくるかもしれない。
Pay-easy(ペイジー)の利用も可能
決済代行サービス事業者によっては、ネット銀行決済を導入することでPay-easy(ペイジー)の利用が可能になることもある。
Pay-easyとはもともと税金や公共料金の支払いを電子決済するために誕生したサービスで、近年ではEC業界でも利用されている。国内ほぼすべての金融機関のインターネットバンキングで支払いができる。
お客様が決済方法にPay-easyを選択すると収納機関番号が送られてくるので、それをネット銀行の管理画面から支払いを行う(各金融機関のPay-easy対応ATMでも支払いが可能)。
8位 ウォレット決済
インターネット上で管理するお財布から支払いを行うのがウォレット決済だ。
大手ウォレットサービスのYahoo!ウォレットを例に説明すると、ユーザーはYahoo!ウォレットのアカウントに対してクレジットカードや銀行口座の登録をしておくことで、Yahooを通して支払いを行える。
お客様としては決済時にクレジットカード番号や銀行口座の入力をする必要がなく、Yahoo!ウォレットであればYahooJapanのIDとパスワードのみを入力すれば済むという気軽さがある。
9位 電子マネー決済
実社会ではEdyやSuicaといった電子マネーがコンビニや飲食店で利用されることが多くなったが、ネットショップでも導入が進んでいる。特に音楽やゲームなどのデジタルコンテンツを販売しているEC事業者にとっては相性のよい決済方法である。
ただし年配の方は電子マネーの使用に抵抗があるようで、若年層での利用が進んでいることも特徴の一つだ。若年層向けのデジタルコンテンツを販売しているショップであれば、是非導入しておきたい決済方法だろう。
10位 スマートフォンキャリア決済
ネットショップで購入した商品の支払いを、スマートフォンの利用料金にまとめて請求するのがスマートフォンキャリア決済だ。
携帯電話各社でそれぞれ独自サービスを展開しており、サービス名は以下の通り。
- au: auかんたん決済
- SoftBank: ソフトバンクまとめて支払い
- dokomo: ドコモ ケータイ払い
本来なら各携帯会社と契約を結ばなければならないが、決済代行サービス事業者を利用することで、どのキャリアでも決済を一本化できる。
スマートフォンの普及が加速している現代のニーズに合った決済サービスかもしれないが、まだそれほど利用者は多くない。導入にも手間がかかるので、まずはその他の決済方法を優先した方がよいだろう。
決済の導入はコンバージョン率にも影響する
ネットショップの決済方法のバリエーションは、コンバージョン率にも影響する。
クレジットカード決済がしたいのに、できなければ他のネットショップを利用しようと思うだろう。
お客様にとっては商品さえ届けばどの店舗で購入してもさほど変わらないので、メーカー生産の商品であれば(自社開発商品でなければ)、ある程度の決済方法は導入しておくべきである。
そして決済方法の導入は、ネットショップの商品タイプや利用者層も考慮して、店舗独自の重要度でランク付けしていくことが大切だ。高齢者の利用が多ければ代金引換やゆうちょ振替の需要は高くなるだろうし、若年層の利用が多ければネットバンキング決済が多くなるかもしれない。
なんでもかんでも導入してしまえば月額利用料が高くなってしまうので、しっかりと自社のショップの特徴を分析した上で、絶対に必要なもの、余裕があれば導入したいもの、不必要なものを切り分けていきたい。
おわりに これからネットショップを開業するなら
ネットショップをこれから始めるという方であれば、まずは「クレジットカード決済」「銀行振込み」「代金引換」の3種類は用意したい。それに余裕があればコンビニ払いやゆうちょ振替、ネットバンキングを検討していこう。
ネットショップの運営が軌道に乗れば、決済サービスの向上という意味でも「かご落ち率(商品をカートに入れたけど購入に至らない率)」を意識しながら、新たなサービスの導入を検討していこう。
【著者からの一言】
鍵谷 隆 -KAGIYA TAKASHI-
当記事は2016年ごろ、私がECサイトのコンサル経営をしていた時期にまとめたノウハウ集だ。そのため外部サイトへのリンクが切れていたり、Googleや各種ASPなどの外部システムの仕様変更などで状況が変わっている可能性があることだけは了承してくれ!
ただ商いの本質は変わることはない。ネットショップ運営でお困りの経営者や担当者なら、当サイトの記事も必ず役に立つはずだ。全てのEC関係者に幸あれ。検討を祈る!