原価率を抑えて利益率を高くするなら自社で商品開発をせよ

原価率や利益率を考えること、これは商売をする方なら避けては通れない問題。
商売の基本は安く仕入れて高く売ること。この考えは、第一次産業だろうと飲食店だろうとサービス業だろうと、仕入れるものや売るものは違えど基本は同じ。

この大原則はネットショップにも共通して言えることであり、徹底してそこを追及することで、利益率を高く保ち、健全なショップ運営をしていくことができる。そしてそのためには自社で商品開発をしていくことが有効である。

 

利益率を高くするには

やみくもに販売価格を上げるのはNG

利益率を高くする一番簡単な方法は、販売価格を上げてしまうこと。1000円の原価に対して、販売価格が2000円のところを、3000円に値上げしてしまえば、利益率は高くなる。

しかし消費者もばかではない。その商品の質に見合った価格を察知することもできるし、ネットを使えば同じような商品を販売しているショップを見て、相場となる価格を把握することもたやすい。消費者のことを無視して販売価格をつり上げても、結局誰も買わずに売上が伸びないという結果になってしまう。

 

原価を抑える

販売価格の調整以外で利益率を高くするためには、仕入れにかかる原価率を抑えるのがベストだ。

ものづくりをしているメーカーの場合、定価1000円で販売するアイテムがあったとして、生産原価が600円かかるところ、生産原価を400円に抑えることができたら、そっちの方が絶対にいい。原価を400円に抑えることができれば、定価1000円との差額の600円が粗利になるのだから。

ただし原価を下げることは、たやすいことではない。1つのアイテムを生産するのにかかる原価は、研究開発や設備機器の投資、業務効率の改善などの企業努力が必要になる。だがその努力をするからこそ、利益が生まれるのである。

 

メーカー仕入れのショップはどうすればよいか

自社でものづくりをしている企業なら、先に説明したように原価に対して融通を利かせやすいが、メーカーや卸業者から商材を仕入れて物販している小売店の場合、以下に挙げる二つの理由から、なかなか原価率を調整するのが難しいという現状がある。

  • メーカーの小売希望価格は決まっている
  • 掛け率はメーカーが指定する

そのため末端の小売店として利益を上げたければ、コンバージョン率の改善や集客システムの構築などの努力に限られてくる。

ただし小売店でも自社で商品開発をすることで、原価率を自由に調整することができる。商品すべてをオリジナル商品にする必要はないが、一部の売れ筋商品だけでも自社で開発したアイテムにするとよいだろう。

 

商品開発で原価率をコントロール

自社で商品開発をするということは、販売価格を自由に設定できるということ。つまり原価に対する利益率の調整がきくので、仕入れにかかる費用が売上を圧迫してしまうという、小売店ならではの悩みを解決することにつながる。

具体的な原価率は商材にもよるが、一般的にはメーカー仕入れの商品の原価率は5割ぐらいだろうが、自社開発することで原価率を3割程度に抑えることができる。

小売店の店主にとっては原価率を抑えること、これは嬉しいポイントだ。ただしいくら原価率を抑えたいからといっても、廃棄処分になるはずのものを不正に仕入れたり、商品の品質に見合わないような著しく高価な価格設定をしてはいけない。あくまでも誠実に、本当に良いものを作ってそれに見合う価格設定をして勝負する、ということが大切。

 

商品開発はどこに依頼するか

生産機能を持っていない小売店がオリジナルのアイテムを開発するなら、製造・生産をどこに依頼をするかが問題になってくる。

品質にはこだわらないが、とにかく安く作りたいということであれば、東南アジア付近の工場で作ってもらうのがよいだろう。それとは逆に、ある程度高くなってもよいので、品質の高いものを作りたいということであれば、やはり国内生産が望ましい。

国内であれば製造業者がOEM開発(他社の商品開発)を請け負っていることも多いので、その業種について「○○ OEM開発」のような単語で検索すると、すぐに見つかるだろう。

弊社としては、販売価格を自由に設定できるのなら、ある程度質の高いものを作っておいて、それなりの価格を設定した高単価商品として販売するべきだと考えている。「商品の付加価値を高めて販売単価、魅力度の底上げを行おう」の記事でも説明しているが、付加価値を高めことは、客単価を向上させる施策にもなる。

 

自社独自商品を展開している企業の成功例

大手スーパーやコンビニのPB商品

近年になってPB商品をよく見るようになった。
※PBとは(プライベートブランド)の略。

従来であればスーパーやコンビニが商品を販売すために、どのようなプロセスを必要としていたかは以下の通り。

  • 1.生産者がいて
  • 2.卸業者がいて
  • 3.仲介業者がいて
  • 4.小売店に並ぶ

このように、生産者から店頭に並ぶまでにはいくつもの業者を挟んでいるのだ。

そして中間業者を挟めば挟むほど、手数料がかかってしまい、小売店としては仕入れ価格が高騰してしまう。かと言って、卸業者や仲介業者が無駄というわけではない。生産者や製造業者にとっては小売店よりも卸業者との取引の方が安心であり、物流を円滑に進めるには欠かせない存在だ。

 

近年多くなったPB商品とは何か

PB商品とは、中間業者を挟まずに「1.生産者・製造メーカー」と共同でものづくりを行い、そのまま「2.小売店」に並ぶ仕組み。

この商品を従来の流通経路を利用した商品と同じ価格で販売したらどうなるだろうか…原価率はPB商品の方が低いので、もちろんPB商品の方が利益率は高くなる。ただし同価格で販売すれば、消費者としては「安心感」という面で従来のブランド商品を選ぶだろうから、PB商品は少しだけ値段を安く設定する。

しかしそれでも従来型の商品よりも原価を抑えられることによって、小売店としては利益率の高いまま商品を販売できる。消費者にとっても、小売店としても嬉しい仕組みである。

 

大手雑貨店

2000年代より増えてきた雑貨店。最近はイオンなどの総合ショッピングモールでも雑貨屋が多数入店している。そして雑貨店も自社商品開発に力を入れている業種の一つ。オリジナル商品を開発する理由としてはさまざまだが、その中にもやはり利益率の改善ということがある。

従来であれば定価に対する仕入れ率が5割程度だったものが、自社商品を開発することで、3割程度に抑えることができたとする。雑貨店は主に雑貨を製造するメーカーや卸売業者から仕入れることがほとんどなので、こうして利益率を改善することは、企業にとって最重要課題なのである。

無印良品やフランフランなどの大手雑貨店が積極的に商品開発を行っているのも、そうした理由がある。

 

おわりに 自社開発するなら質の高いものを

今まで原価率が高いことに頭を抱えていた経営者の方は、自社オリジナルのアイテムを作ってみてはいかがだろうか。利益率が改善されることもそうだが、他社との差別化を進めることにもつながり、ショップの個性を表現できる。

商品開発については、下記の記事も参考にどうぞ。


【著者からの一言】

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鍵谷 隆 -KAGIYA TAKASHI-

当記事は2016年ごろ、私がECサイトのコンサル経営をしていた時期にまとめたノウハウ集だ。そのため外部サイトへのリンクが切れていたり、Googleや各種ASPなどの外部システムの仕様変更などで状況が変わっている可能性があることだけは了承してくれ!

ただ商いの本質は変わることはない。ネットショップ運営でお困りの経営者や担当者なら、当サイトの記事も必ず役に立つはずだ。全てのEC関係者に幸あれ。検討を祈る!