インターネット広告といえば、長らくの間リスティング広告やバナー広告が一般的だった。しかし2010年代中頃から、記事広告とよばれる新しい広告概念が誕生するようになった。
リスティング広告やバナー広告について知りたい人は、以下の記事を参考にしてほしい。
各企業のインターネット広告への広告予算が増加している中で、記事広告の注目度は高まってきている。eコマースを展開する事業者で、リスティング広告やバナー広告に物足りなくなってきたと感じている方のために、記事広告について解説していきたい。
記事広告とは
記事広告とはバナー広告のように、他サイトの広告枠を一定期間買い上げるタイプの広告ではなく、他サイトのコンテンツの一部に広告コンテンツを紛れ込ませるタイプの広告である。
具体的に説明すると下の図を見てほしい。
こちらはNAVERまとめのトップページのキャプチャだが、赤枠内の「PRまとめ」に注目してほしい。ここに掲載されているまとめ記事が記事広告に該当し、スポンサーがお金を払って掲載を依頼したものである。
ニュースサイトやキュレーションメディア、企業ブログが増加した今、記事広告を利用する例が増加している。
記事広告のメリット
先のNAVERまとめの例もそうだが、ユーザーからすると、一見すると広告とは気づかないほど、サイト内の一コンテンツとして溶け込んでいる。
ユーザーは広告や宣伝を嫌うものである。近年ではインターネットユーザーのITリテラシーが高くなってきたため、リスティング広告やバナー広告の類を見分けることができるようになってきた。そのため以前よりも広告のクリック率は下がってきてしまった。せっかくバナー広告を出稿しても、クリックされなければ広告費用が無駄になってしまう。
だが記事広告であれば、広告感が薄くなるため、サイト内の一コンテンツとしてユーザーにリーチしやすくなる。広告としてのパフォーマンスが向上するのである。
ステマとは違う
記事広告に対するガイドラインが整っていなかった数年前、広告であることを隠して商品の宣伝をするような、ステルスマーケティングという手法が増えてきた。俗に言うステマである。「記事広告とそんなに変わらないじゃん」と思うかもしれないが、広告ということを隠して、金銭的な目的で商品やサービスを宣伝することは、読者としても裏切られた感が強くなり、メディア媒体に対しても不信感を覚えてしまう。
そのため2015年には、一般社団法人インターネット広告推進協議会によって、記事広告には広告であることをユーザーでも判別できるように、「広告」や「PR」といった文言を表記する旨のガイドラインが定められた。
いくらサイト内のコンテンツのように見せる手法だとしても、広告であることをアピールするのが記事広告のルールであり、健全な広告運用の形である。
記事広告のデメリット
記事広告のデメリットは、広告効果のブレが大きいことである。広告効果が明確に予測できないという点ではバナー広告も同じだが、バナー広告の場合はバナー画像の質によってクリック率が変わってきたとしても、過去の実績と著しいズレを起こすことは少ない。
しかし記事広告の場合は、もしコンテンツが読者にハマれば、SNSなどの拡散によって、爆発的なトラフィックを生み出すことに成功する。ウェブ業界で言うところの”バズる”というやつだ。記事をバズらせることができるかどうかは、コンテンツをつくりあげる制作チームの腕に頼るところが大きい。
メディア媒体によっては、記事広告の過去の成功事例を紹介していることも多いが、必ずしも過去事例のように上手くいくことは誰にも約束できないのである。その他の広告手法よりもリスクがあることを覚えておきたい。
記事広告のタイプ
一口に記事広告と言っても、そのタイプにはいくつかの種類がある。どういった広告を用意するのかは、出稿を依頼する前に決めておくとよい。
自然検索での流入を見込む
ウェブの世界にはドメインパワーの強いサイトが存在する。ドメインパワーの強いサイトは、SEO対策がしっかりと施されており、サイトボリュームも厚く、月間のPV数も多い。もし全く同じ記事を自社サイトとドメインパワーの強いサイトの二つに掲載したとしたら、後者の方がより検索上位に表示される可能性は高くなる。
そうしたドメインの強さを利用して、特定キーワードで検索エンジンからの流入を見込めるような記事を制作し、別サイトの記事自体を、自社サイトの窓口としてしまう。
恒久的に自然検索での流入を見込めるのは嬉しいポイントだが、検索ロジックを決定するのは検索エンジンのため、必ずしも上位表示できるようなコンテンツが生まれるわけでもないのがネックだ。
メディアのコンテンツとマッチングした記事広告
もしアパレル関係のECサイトなら、ファッションを取り扱っているメディア媒体に記事広告を出すことで、普段からそのメディアをチェックしているユーザーに、商品やサービスを宣伝することができる。ユーザーの興味あるコンテンツにマッチしていれば、絶対に記事広告の内容が気になるはず。それを読み、商品やサービスを知り、別の機会にまたアクセスするという流れが生まれるかもしれないし、運が良ければその場でコンバージョンが発生するかもしれない。
バナー広告を出稿するときの基準と同じようなタイプで、認知度を高めるにも、コンバージョンを生むにも、効率よくユーザーを集めることができる。
おもしろ記事で拡散
おもしろ記事でユーザーによる拡散を狙うタイプの記事広告。はっきり言って一番難易度の高いタイプの手法である。ネット上で笑いを誘うような記事は、ユーザーをシラケさせてしまうのと紙一重なぐらい制作するのが難しい。
もしヒットすれば膨大な数のユーザーにリーチできる。拡散が拡散を呼び、別媒体に取り上げられる可能性も出てくる。ただし思った以上に記事がヒットしてくれなければ、その効果も薄く、費用対効果の悪い広告となってしまう。
誰に・どの企業にコンテンツを制作してもらうかが鍵になる部分なので、依頼先は慎重に選んでいきたい。ちなみにこちらのタイプは認知度向上やブランディングに効果的。
記事広告を出稿するには
記事広告を出稿するには、広告代理店などを通さなくても、メディアサイト運営企業との直接交渉が可能だ。広告収入を前提として運営しているメディアなら、だいたいサイトのフッターあたりに「広告掲載について」の案内があるので、そこで広告商品の確認をすることができる。
もし広告掲載の案内がなければ、お問い合わせフォームなどから直接問い合わせてみるのもありだ。予算次第では広告掲載を承諾してくれることが多い。
どの媒体を選ぶかが重要
広告を出稿すると決めたら、次に決めるべきはどの媒体にするのかだ。
これはバナー広告の場合でも同じことであり、その選考基準は、自店で取り込みたいユーザーがよく訪れるウェブサイトである。コンテンツがマッチしていればいるほど、パフォーマンスの高い広告となる。
ただし記事広告の場合の選考基準は、広告の目的が先の”記事広告のタイプ”の項で説明したように、複数ある。こればかりはどれが正解という答えはないので、事前にしっかりと目的を明確にした上で、マッチする媒体を選んでいこう。
媒体選びで気を付けるポイント
記事広告は成果にブレが生じやすいため「適切な広告費用はいくらなのか」を算出するのが非常に難しい。ただし一つの目安として、サイトの月間PV数やSNSツールのフォロワー数を確認するとよいだろう。
もし検索流入狙いの記事広告が目的なら、自然検索での流入を多く獲得しているサイトが好ましいし、認知度向上を目的とするなら、PV数の多さに注目したい。またバズを狙う記事ならSNSのフォロワーもチェックしておきたいところ。また参考程度に過去の実績も聞いておくと良いだろう。
複数サイトの見積もりを比較検討しながら、適切な費用を見極めていこう。
おわりに 今後は記事広告の需要も増加する
これだけインターネットメディアが増加し、テレビの視聴率も落ちてくると、今後は記事広告をはじめとした、インターネット広告の需要はますます高くなることが予想される。それに伴い、もしかしたら広告の価格も高騰していくかもしれない。
リスティング広告は入札形式という特性上、既に広告単価の上昇が起きている。リスティング広告やバナー広告のパフォーマンスが落ちてきたなと感じている事業者の方は、記事広告という新しい広告手法にも挑戦してはいかがだろうか。
【著者からの一言】
鍵谷 隆 -KAGIYA TAKASHI-
当記事は2016年ごろ、私がECサイトのコンサル経営をしていた時期にまとめたノウハウ集だ。そのため外部サイトへのリンクが切れていたり、Googleや各種ASPなどの外部システムの仕様変更などで状況が変わっている可能性があることだけは了承してくれ!
ただ商いの本質は変わることはない。ネットショップ運営でお困りの経営者や担当者なら、当サイトの記事も必ず役に立つはずだ。全てのEC関係者に幸あれ。検討を祈る!