他サイトにバナー広告を出稿する前に確認すべき8つのこと

ネットショップの集客方法にはメディア戦略やSEO対策のほかに、広告を利用するという手がある。インターネット広告については、検索結果画面に優先的に表示されるリスティング広告が最も一般的だろうが、その次に利用度の高い広告としてバナー広告ある。

だがバナー広告もただ出せばよいわけではなく、どこのサイトに出すのか、そのサイトに出稿することで本当に効果があるのか、といったことを見極めなければならない。今回はバナー広告を出稿する前に確認するべき事項について、ご説明していく。

 

バナー広告とは

そもそもバナー広告を理解していない人のために、それ自体の説明から。

バナー広告とは他社が運営するウェブサイトの一部のスペースを購入し、自社の宣伝用バナーを貼り付けるタイプの広告。他社のコンテンツを利用する純広告の一種である。

参考までに、YAHOO! JAPANのトップページをキャプチャしたものを以下に貼り付ける。

上図の右部、赤枠内の画像がバナー広告である。

YAHOO! JAPAN側は自社トップページ内の一部を広告枠として売りに出している。広告を出したい側は、YAHOO! JAPANに広告料を支払うことで、1週間なり1カ月なり自社の広告を掲載してもらう仕組み。

広告掲載先ウェブサイトの利用者が多ければ多いほど、サイト自体の広告媒体としての価値も高くなる。ちなみにYAHOO!のトップページにバナー広告を掲載する場合、1週間で850万円~の料金設定となっている。中小規模のEC事業者にとっては予算的に難しい。ただしYAHOO! JAPANのトップ画面は、国内でも屈指の高額媒体に属するため、他にもお値打ちなサイトが存在するので安心してほしい。

それにYAHOO!トップへの広告出稿は、どちらかと言うと大手企業のためのブランド認知に効果的。中小規模のECサイトの集客という意味では、パフォーマンスが悪くなってしまうだろう。ではどのようなサイトに広告を出すのが効果的なのか? という点については、この先で説明していく。

 

バナー広告のメリット

なぜバナー広告を利用するのかだが、その答えは「自社でリーチできないユーザーに商品・サービスをアピールするため」である。

ネットショップAが、とあるメディアサイトBに広告を出稿することで、普段からメディアサイトBを閲覧してるユーザーに、ネットショップAの存在を知ってもらうことができる。そしてメディアサイトBのユーザーがサイト内のバナー広告に興味を持ち、広告リンクからネットショップAに流入し、何かお買い物をしてくれたら、それは広告を出稿したからこそ生まれたコンバージョンだ。もしかしたらそのユーザーが、今後も定期的にショップを利用してくれるヘビーユーザーとなってくれる可能性もある。

このように新たな顧客を開拓するのに効果を発揮するのがバナー広告なのだ。

 

バナー広告出稿時のチェックポイント

限りある広告予算を捻出してバナー広告を出稿するのだから、少しでもコストパフォーマンスの良い広告にしたいと誰もが思うだろう。質の高い広告にするためには、以下に挙げるポイントを意識してみよう。

 

目的で掲載先のウェブサイトを切り替える

バナー広告を出稿する目的は、実は2種類ある。それは企業やブランドの認知のためと、自店の集客に利用するための二つ。それぞれの目的別で掲載先のウェブサイトを切り替えていく必要がある。

 

ブランド認知なら

もし企業やブランドの認知を目的とするなら、短い期間でより多くの人にリーチさせることが重要になるため、先にもご紹介したようなYAHOO!JAPANのトップページのように、膨大なトラフィックを集めるサイトに掲載するとよい。ただし広告費用も高くなるため、大手企業向きだ。

サイト選びのポイントとしては、とにかくサイトのPV数、広告の表示回数が多いことを意識する。短い期間で繰り返し同じ広告を表示させることで、人の深層心理に広告を浸透させる刷り込み効果を得ることができる。

 

集客に利用するなら

おそらく当記事をご覧の方は、自店への集客に利用するためにバナー広告を出稿するのがほとんどではないだろうか。その場合、前述したブランド認知を目的とする例のように、不特定多数に広告をバンバン打っていては非常にパフォーマンスが悪くなる。

意識するべきは、自店を利用してくれるユーザー(見込み客)が集まるウェブサイトであること。
もしお酒を販売しているEC企業なら、子供向けサイトにいくら広告を出してもほとんど効果は得られないだろう。お酒の飲み方やおつまみについての情報を発信しているサイトに広告を出稿することで、お酒好きのユーザーに自店をアピールすることができる。

そのためにも、自店を利用しているユーザーの分析は欠かさずに行っておこう。

 

PV数を確認

自店のユーザーが好みそうなウェブサイトを見つけたら、そのサイトがどのくらいのPV数を獲得しているのか確認しよう。広告枠を販売しているサイトは、大抵の場合PV数を公開しているか、「問い合わせしてください」としている。

PV数が非常に少なければ、広告を出稿する意味はないことはないが、思ったような結果を得ることは難しい。1ヵ月に○○人の新規顧客を、広告から新たに獲得したいと具体的な目標を決めているなら、その目標を達成できるような規模のサイトを見極める必要がある。

 

月に50名の新規顧客を獲得したいなら

例えばの話だが、月に50名の新規顧客を広告バナーから獲得したいとする。また前提として掲載先のウェブサイトでバナー広告をクリックする率を1%、そしてショップのコンバージョン率も同じく1%とする。

こうした前提で考えるなら、月間50万PVのウェブサイトに広告を出せば、ネットショップへの流入数は「500,000 × 0.01」で、5,000ユーザーからアクセスが生まれることが想定できる。さらにコンバージョン率の1%を掛けると「5,000 × 0.01」で50名のユーザーはお客様として商品を購入いただけるだろう。

つまり50名の新規顧客を獲得するには、単純計算で月間50万PVのウェブサイトに広告を出さなければならないことが分かる。バナー広告のクリック率については、ユーザーとのマッチング度合いやバナー画像の質にもよるが、もし可能なら平均クリック率を事前に確認しておくとよい。

 

表示回数も確認

サイトのPV数だけではなく、表示回数もしっかりと確認しておこう。サイトによっては、複数の広告をランダムで切り替えて表示させることもあるため、PV数 = 表示回数とは限らない。

もし表示回数が著しく少なければ、適切な運用計画を立てられなくなってしまう。

 

広告予算の回収ができるのか

広告の運用計画という意味では、最終的に投資した広告予算が回収できるかどうかも重要になる。

先程の50名の新規顧客を集める例で言うなら、平均客単価が3,000円のショップと仮定すると、広告経由の新規顧客が生み出す売上げは「50 × 3,000」で150,000円になる。原価率が50%なら粗利益は75,000円だ。

新規顧客がリピーターとなって、恒久的に売上げを生み出してくれる可能性はもちろんあるが、初回売上だけで見ると、広告費に75,000円以上かけてしまうと、粗利益を全て広告費用で食いつぶしてしまうことになる。

バナー広告を出稿する際には、どんぶり勘定ではなく、しっかりと具体的な数字を算出して、計画立てて運用を行っていこう。そうしないと適切な運用ができているかを把握することができないため、無駄に広告費を垂れ流してしまうことにつながる。

 

スマホでの表示

今やPCだけに限らずタブレットやスマートフォンなど、インターネットに接続できる手段はいくつもあり、それぞれの端末で画面幅が異なる。そして近年では画面幅に合わせてウェブサイトの表示を最適化するレスポンシブデザインが主流になっている。

もしバナー広告がPC上ではサイドバーに表示されていたとしても、スマートフォンでの表示はどうなるのだろうか? バナー広告は表示箇所によってもクリック率が変わってくるため、場合によってはスマートフォンでのクリック率が著しく低下する可能性もある。最悪の場合はスマホの場合は表示されませんということもある。

必ずスマートフォンやタブレットでの表示位置を確認しよう。

 

契約期間

これは当たり前のことだが、バナー広告の掲載期間も確認するべきである。1週間の契約なのか、1ヵ月の契約になるのかで、費用対効果の計算は全然違ってくる。また3ヵ月~などの長期契約が必須になっているウェブサイトもあるので要注意。

もし可能であれば、広告効果を測定するために、別途費用でお試し期間として1週間程度の広告を出稿できるか、ダメもとでも確認してみるとよい。その一週間でのユーザーの反応を見て、その後の契約を継続するか検討してみよう。

 

ABテストをしてくれるか

ABテストとは、2種類のバナー広告を用意して、一定期間で広告を切り替えてどちらの広告の方がパフォーマンスが良いのかを計測して、効果の高いバナーを正式採用する作業のこと。

バナー画像を2種類用意しなければならないことに加え、切り替え作業や計測作業をしなければならないので、手間のかかる作業ではあるが、上手な運用をしていきたいなら必須の作業となる。

広告出稿先のサイト管理者がABテストを行ってくれるかどうか、確認しておきたい。

 

バナー制作はどちらの作業になるのか

バナー画像の用意はどちらでする必要があるのかも確認しておこう。画像の出来次第でクリック率が変わってくるため、非常に重要な部分。もし出稿先の企業にデザイナーがいるのなら、質の高いバナーを制作してもらえるとありがたい。

中にはバナー画像の制作費込みでの掲載料金を提示しているウェブサイトもある。

 

自分たちで画像を制作するなら

もし自分たちでバナー画像を用意しなければならないなら、まずは画像サイズを掲載先のサイトに確認しよう。また動きのあるGIF画像を使いたいなら、GIF画像の使用が可能かどうかも聞いておきたい。

仕様が分かれば、あとはペイントソフトやイラストソフトを利用して、オリジナルバナー画像を制作していく。画像制作のポイントとしては、ユーザーの目を引くようなインパクトを持たせつつ、思わずクリックしたくなる画像にすること。

初めてでどうしていいか分からないという方は、「クリック率の高くなるバナーを制作するコツやテクニック」の記事を参考にしてほしい。

 

結果報告をしてくれるか

掲載期間の終了後には、結果報告をしてくれるかも重要。広告出稿先サイトからの流入数は、Googleアナリティクスを利用すれば把握できるが、広告出稿先でバナー広告が何回表示されたかは、サイト運営者に確認しないと把握しようがない。

表示回数やクリック率が分かれば、広告運用の改善点を見つけられるかもしれないので、計画だけでなく結果についても意識するようにしてほしい。

 

広告出稿先の見つけ方

いざバナー広告を出稿しようと思っても、どのような手順を踏んだらよいのか…とお悩みの方もいるだろう。

広告代理店を利用する手もあるが、代理店を利用するとその分手数料も発生するし、面倒でなければ掲載先サイトと直接交渉するのがベターだ。

まずは広告を出したいと思えるサイトを見つける。メディアサイトであれば、だいたいフッター部分に広告掲載についての案内があるはず。あとは資料のダウンロードやお問い合わせなど、掲載先サイトの指示に従って、出稿準備を進めよう。

 

もし掲載を募集していなかったら

大手のメディアサイトでは広告掲載についての案内があるところも多いが、個人で運営しているようなブログや小規模メディアの場合は、そうした案内をしていないこともある。

そのような場合は、お問い合わせフォームなどから直接バナー広告掲載の依頼をしてみよう。

ブロガーはサイトの収益化を考えていることが多いので、価格交渉は必要になるが、多くの場合はすんなりOKしてくれることが多い。

 

おわりに 費用対効果を意識して計画的な広告運用を

バナー広告を出稿する前にチェックしておくべきポイントはいかがだったろうか。ただバナー広告を掲載するだけなら、ここまで意識する必要はないが、費用対効果の高い広告運用を目指すなら、細かい部分までチェックしていく必要がある。

リスティング広告と比較すると、バナー広告の運用は難易度が高いかもしれないが、今回ご紹介したポイントを意識して上手な広告運用をしていこう。


【著者からの一言】

profile

鍵谷 隆 -KAGIYA TAKASHI-

当記事は2016年ごろ、私がECサイトのコンサル経営をしていた時期にまとめたノウハウ集だ。そのため外部サイトへのリンクが切れていたり、Googleや各種ASPなどの外部システムの仕様変更などで状況が変わっている可能性があることだけは了承してくれ!

ただ商いの本質は変わることはない。ネットショップ運営でお困りの経営者や担当者なら、当サイトの記事も必ず役に立つはずだ。全てのEC関係者に幸あれ。検討を祈る!