マルチチャネルでネットショップの販路を拡大をする方法

物販事業をしているなら、実店舗での販売だったりネット通販だったりと、販路は複数確保しておきたいもの。販売できるチャネルが多ければ多いほど、それだけ多くのユーザーに商品を知ってもらうことができ、購入してもらう確率も高くなる。また認知度の向上という意味でも効果がある。

ネット通販事業者が使える販路の拡大方法、マルチチャネルな販売手法についてご紹介していく。

 

利用したい販売チャネル

複数のネットショップ開業サービスを利用

まずネット通販をしていく上で、一つのショップしか運営してはいけないルールは一切ない。実店舗でも地域によって横浜店や札幌店などがあるように、ネットショップも店舗数を増やしていくことができる。

ただしネット通販には立地の概念がないため、何店舗も同じお店を持つ必要性は少ないが、楽天市場やYahoo!ショッピングなどのモール系店舗への複数出店なら効果がある。

例えば楽天市場なら、楽天ポイントを貯めるために楽天市場内の店舗でしかお買い物をしないユーザーがおり、お目当ての商品は楽天市場内の検索窓から検索をかけて探す。そのためモール系に出店するということは、GoogleやYahoo!といった検索エンジンからの流入は期待できない、モールが抱える固定客にアピールできるということ。

 

独自ドメイン + モール店舗 + BASE

弊社が考える理想の並行出店の形態としては、独自ドメインのショップを軸として、サブとしてモール系に出店すること。

モール系の中でも一番販促力が高いのは楽天市場だが、その分出店費用や売上げ手数料も高額だ。必要経費のこともあるので、おまけ程度にモール出店するのなら、出店費用が無料のYahoo!ショッピングを選択するのもよいだろう。

さらに余裕があるのなら、無料開業サービスのBASEを利用してもよい。BASEは出店にかかる手間も最小限に抑えることができ、クレジットカードの利用なども決済事業者と契約を結ぶことなく利用が可能だ。お手軽にネットショップをオープンできる上に、BASE自体の知名度も高いので、サブ店舗として運営するにもおすすめ。

BASEについては下記の記事を参考にしてほしい。

 

販売委託をする

自力で顧客の開拓をするのではなく、代理店のように販売を委託する方法もある。「在庫を持たずに低リスクでネットショップを始める3つの方法」でも説明しているが、EC事業者の中には在庫を抱えずにネット通販を行いたいという企業もいる。

もし御社が特殊な商材を生産しているなら、そうした企業から委託販売の依頼が来るかもしれないし、そうしたオファーが無ければ自ら代理店を募集すればよい。

 

委託手数料が必要になる

販売を委託するからには、委託手数料が必要になる。だが多くの場合は売上げに応じた手数料を支払うことが多いので、委託側が手数料だけで損をすることはまずないので安心してほしい。

手数料の歩率については30%あたりが相場といったところ。1万円の品物が売れたら、3千円を委託手数料として支払う仕組み。これは言うまでもないだろうが、委託側は手数料以上の利益率にしておくことが必須である。

 

発送や在庫管理のルールは事前に決めておこう

委託販売は責任の所在があいまいになることが多いため、なにかとトラブルに発展することがある。そうした事態を回避するためにも、事前に委託先との間で、発送ルールや在庫管理の方法、売上金の支払期日についてなど、しっかりとルールを決めておきたい。できることなら契約書も作成しておくとよいだろう。

 

実店舗を持つ

ネットショップ立ち上げ当初は、金銭的にも難しいだろうが、通販での売上げが伸びてきたら、実店舗を開業することも視野に入れておきたい。実店舗を持っているのと持っていないのとでは、取引先の信用度が全く違う。売上げはどうであれ、なぜか実店舗を構えているだけでも、取引先企業からの信用度が高くなるものなのだ。場合によっては「実店舗がないと商材を卸すことができません」という業者も存在する。

それに実店舗とネットショップを連携させることで、双方の売上げを伸ばすことができる。ネットショップで商品を知り、実店舗が家から近いことを知ったら、送料のかからない実店舗で商品を購入する流れが発生することもあれば、実店舗を知ってからネットショップを利用してもらう流れも生まれる。

実店舗を利用した販売促進については「メディア運用で実店舗の集客を加速させる方法」の記事を参考にしてほしい。

 

イベントを開催(出店)する

一般企業が自主セミナーを開催して、そこで見込み客となるユーザーを捕まえるように、イベントを開催して、そこを集客の起点とするのもよい手法である。

クラフト系アイテムを販売しているなら、地域のコミュニティスペースをレンタルして、そこでワークショップを開催してはいかがだろうか。イベント自体が売上げにもなるし、そこからネットショップへの集客という流れも期待できる。その他にもファッションビルやアミューズメント施設に、期間限定のポップアップショップや催事としての出店を提案してもよいだろう。手数料の問題もあるが、施設運営側としても賑わいの一環として承諾してくれるケースも多い。

 

イベントに出店するのもあり

自らイベントを開催するのが困難なら、大手企業が開催するイベントに出店するのもよい。

ハンドメイド作家さんの利用が多いminneやcreemaといったマーケットプレイスでは、しきりにハンドメイドイベントの出店者を募集している。もちろん出店費用は発生するが、そうした場を利用して販路を広げていくことも可能だ。

また食品・食材系を扱っているEC事業者なら、地元で開催されているマルシェや、食の祭典があるはずなので、そうしたイベントに出店可能なのかをチェックしておくとよいだろう。

 

カタログを用意する

ネット通販事業者にとっては盲点かもしれないが、商品カタログを用意しておき、電話やメール、ハガキでの注文も受け付けられるようにしておこう。

世の中にはまだまだネット通販に抵抗を感じるユーザーがいる。そうした方のためにも、ネット上にはカタログ配布のサービスを用意しておき、ユーザーの要望に応じてカタログを送付する。そしてカタログからも注文できるシステムを構築しておけば、販路が広がることは間違いない。

 

カタログはショップを覚えてもらいやすい

ネットショップの場合は価格や発送条件を他店と比較することが簡単なので、ユーザーは条件の良い店を見つければすぐに別店舗へ流れていってしまう。しかしカタログ通販の場合は、そうした状況を招きにくいことが特長だ。

多少他店舗よりも価格が高かったとしても、商品カタログから注文するユーザーが、価格比較を検討することは稀だ。カタログユーザーはなによりも自分の注文スタイルに合っているかを重要視しているため、選んでもらえるショップになりやすい。

また常にユーザーの手元に置いておけるため、ショップの名前を覚えてもらいやすくなるメリットも生まれる。

 

マルチチャネルからオムニチャネルへ

販路を広げることは”マルチチャネル”とも言われており、複数の販路を持つことで一番面倒なのは在庫を管理すること。ネットショップと実店舗を運営していると、どちらかのチャネルで販売があれば、そのどちらも在庫修正しなければならない。

販路を広げることは一見とても良いことのように思えるが、こうした運用の手間がかかることも事実だ。こうした手間を解消するために、近年では複数の販路を統合しようとする”オムニチャネル”という考え方が生まれてきた。

例えば実店舗であれ、ネットショップであれ、在庫管理するデータベースを一つにして、どのチャネルでも特定の在庫管理データベースを参照することで、リアルタイムで過不足のない在庫状況を確認することが可能になる。またネットで注文して、商品の受け取りを実店舗で行うことができれば、お客様の”ついで買い”を促すことができるかもしれない。

このようにさまざまな販売チャネルの垣根を超えたサービスを展開していくことをオムニチャネルと呼ぶので、販売経路を増やそうと考えている事業者にとっては覚えておきたい知識の一つ。

 

おわりに 販路拡大で多角的な経営を

いくつか販路拡大の方法をご説明してきたがいかがだったろうか? まずは自店のネットショップを軌道に乗せることが大切だが、1店舗だけでは限界があるのも確か。さらに売上げを伸ばしていきたいのであれば、積極的に別のフィールドにも販路を伸ばしていくことを考えてみよう。

また販路を拡大することは、ネットショップの売上げだけに寄与するものではなく、経営者としても新たな境地が見てくるものである。別のフィールドを開拓することで新しい発見が生まれることもあれば、今まで縁のなかった人と知り合うきっかけになることもある。ネットショップオーナーも通販一本に絞らずに、多角的な経営を目指していこう。


【著者からの一言】

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鍵谷 隆 -KAGIYA TAKASHI-

当記事は2016年ごろ、私がECサイトのコンサル経営をしていた時期にまとめたノウハウ集だ。そのため外部サイトへのリンクが切れていたり、Googleや各種ASPなどの外部システムの仕様変更などで状況が変わっている可能性があることだけは了承してくれ!

ただ商いの本質は変わることはない。ネットショップ運営でお困りの経営者や担当者なら、当サイトの記事も必ず役に立つはずだ。全てのEC関係者に幸あれ。検討を祈る!