安定した売上げをつくっていくためのロングテール戦略とは

ネットショップにおける商品展開にはさまざまな形がある。自家農園の有機卵や、発明によって特許を取得したアイテムのように、自社で開発したオリジナル商品単体で勝負していくこともあれば、バラエティに富んだ商品ラインナップで展開することもある。

わずか1商品だけで勝負していこうと、1万商品の品ぞろえを用意しようとも、どちらが正解でどちらが間違いということはない。それぞれの商品数や商品の特性にあった戦略を取っていけば、何の問題もなく売れるショップは出来上がるもの。

そうした中で、商品数という点に目を向けると、”ロングテール”という考え方があるのをご存知だろうか。今回はロングテールの販売戦略についてご説明していく。

 

ロングテールとは

ロングテールとは英語で表記すると「long tail」であり、直訳すると”長いしっぽ”となる。言葉だけでは何のことかさっぱり分からないだろうが、下図を見てほしい。

この図は一般的な商店における、商品の質と売上げを表しているものなのだが、左側の商品になればなるほど1商品当たりの売上げが高くなっており、”売れ筋商品”や”目玉商品”と言い換えることができる。対して右側は不人気商品と言える。8:2という法則があるように、店舗の中では2割の人気商品が売上げの8割をつくり、残り8割の不人気商品が2割の売上げを作るようにできているものなのだ。

そして実はこの不人気商品がネット通販の鍵であり、水平に伸びている様子が恐竜のしっぽに似ていることから、ロングテールと呼ばれているのである。マーケティング的にはこの売れ筋商品ではない、マニアックでニッチなアイテムを中心にして品ぞろえを豊富にしていくことを、ロングテール戦略と呼んでいる。

 

ネット通販だからこそ可能になるロングテール戦略

ロングテール戦略は実店舗でも取れなくはない戦略だか、ネット通販の方がはるかに取りやすい。それはなぜかと言うと、実店舗ビジネスでは、商品の陳列スペースに限界があるからだ。

店舗内の限られたスペースで、最大限の売上げを出していきたいと思ったら、売れ筋商品を多くそろえることが重要となる。それに実店舗型ビジネスは、ネット通販のように商圏を全国に広げることができないため、店舗の商圏内の需要も限られてきてしまう。

その点、ネット通販は陳列スペースや商圏に縛られることがない。ニッチな商品をいくらアップロードしたとしても賃料が発生することもないし、商品数が増えたとしてもカテゴリ整理や検索機能を付けることで、目的の商品を探しやすくすることが可能である。それにニッチな商材という特性上、それを買い求めるのは一部のマニアになるわけだが、ネット通販で日本国民すべてを対象にすることができれば、見込み客の数もそれなりに多くなる。

先に説明した8:2の法則にのっとれば、不人気商品で構成される8割のアイテムが売上げに貢献する率は低いが、それでも商品数を増やして売上げを積み上げていけば、それなりのまとまった売上をつくることができる。

 

商品説明が不十分でもお客様は購入する

ロングテールとして取り扱う商材は、どちらかと言うとマニアックなアイテムで、どの店舗でも売られているようなものではない。そのためお客様にとっては、お目当ての商品を見つけること自体が大変なこともある。

競合が少ないため、商品説明ページの商品説明が不十分だとしても、お客様は購入してくれることが多い。きっとその商品についての情報はあらかじめ別の媒体で調べており、見つけ次第購入しようと思っているのだろう。ロングテールの商品は、ネットショップで発見して衝動買いするというよりも、あらかじめ明確な購入意欲を持って商品を探しているユーザーが多いのも特徴だ。

 

トレンドに左右されることがない

ロングテールの商品群を中心に扱っていると、トレンドという不確定な要素に左右されることがない。

例えばアパレル関係を商材として扱っているショップは、今年流行のカラーやテイストを意識して大量仕入れを行うわけだが、そのトレンドのさなかに在庫をさばききれなければ、大量の不良在庫として処分するしかなくなる。そうした点でもトレンドを意識した商品展開は、一定のリスクを抱えることになる。

しかしロングテールの商品で、1商品ごとの在庫を限りなく少なくしておけば、あとはいつかマニアの人が購入してくれるのを待つだけだ。経営センスにまかせた運営と言うよりは、堅実に売上げをつくっていくことができる。

 

ロングテール戦略のデメリット

ニッチな商材を扱うことで、順調に売上げを積み重ねていくロングテール戦略だが、デメリットがあることも事実。それは商品数を多く抱えなければならないということ。1商品ごとの在庫数は少なくてもよいが、種類だけは豊富に取り揃えていなければ、売上げを積み重ねていくことができない。

そのためネットショップで実店舗は必要ないとは言っても、多くの在庫を用意するための資本も必要になるし、在庫を管理するスペースも必要になる。小規模のEC事業者ではこの点がネックになることもある。

 

無在庫販売でデメリットを解消

ロングテールにはこうしたデメリットがあるのだが、上手に運用を行うなら、無在庫販売という形態をとるとよい。

在庫を持たずに低リスクでネットショップを始める3つの方法」の記事でも説明しているのだが、メーカーと協業関係を結び、EC事業者側で在庫を抱えるのではなく、メーカーと在庫を共有するのが理想だ。ネットショップで注文が入ったら、メーカーに連絡して商品を発送してもらう。提携するメーカーを増やせば増やすほど、在庫を抱えることなく、商品数を増やすことができる。

ニッチな商品は他店舗でも扱っていることが少ないため、即日発送ができなくても、それでもいいから購入したいと言ってくれるお客様が結構いる。

 

ロングテールで最も成功したECサイト

ロングテールの戦略を実践して最も成功を収めたECサイトと言えば、アメリカで誕生して今や日本でもおなじみのamazonである。

もともとはインターネット書店としてスタートしたamazonだけに、書籍の取り扱い点数は群を抜いている。実店舗を構えないネット通販スタイルのため、実店舗では陳列スペースを圧迫してしまうだけのマニアックな書籍の数々も、倉庫には大量のストックを抱えておくことができるのだ。

そしてamazonの売上げの大半はロングテールに当たる不人気商品で構成されているとも言われている。企業としての成長スピードはゆっくりかもしれないが、ニッチな需要を拾って、確実に売上げを伸ばしているamazonの経営体制は、まさにロングテール戦略の成功例と言ってよいだろう。

今では書籍に限らず、コスメ用品から電子機器、さらには食材まで、あらゆるジャンルをカバーしているamazonだが、これから新規でネットショップを始めてロングテールを実践しようという方は、amazonが最初に書籍専門店であったように、特定ジャンルでのロングテールとなるアイテムに絞って展開していくとよい。

 

おわりに ロングテールは品揃えの豊富さが鍵

ロングテールを成功させるには、品揃えの豊富さが鍵になってくる。商品数が増えればそれだけお客様を捕まえるチャンスが増えることになるからだ。たとえ1年に1回売れるか売れないかという商品だったとしても、そうした商品をいくつも抱えることができれば、結果としてまとまった売上げがつくられるもの。

いざ実践するにはそれなりのデメリットはあるものの、一過性のトレンドに左右されることなく、安定したネットショップ運営をしていくという意味でも、ロングテール戦略は効果的である。


【著者からの一言】

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鍵谷 隆 -KAGIYA TAKASHI-

当記事は2016年ごろ、私がECサイトのコンサル経営をしていた時期にまとめたノウハウ集だ。そのため外部サイトへのリンクが切れていたり、Googleや各種ASPなどの外部システムの仕様変更などで状況が変わっている可能性があることだけは了承してくれ!

ただ商いの本質は変わることはない。ネットショップ運営でお困りの経営者や担当者なら、当サイトの記事も必ず役に立つはずだ。全てのEC関係者に幸あれ。検討を祈る!