ネット通販を利用すれば一歩も家の外に出ることなくお買い物ができて非常に便利だが、実店舗でのお買い物と比較して、負担となることがある。それが送料だ。この送料はネットショップならではの考え方。
ネットで注文して実店舗まで商品を引き取りに来てくれればいいが、そんな都合の良い話はなく、どうしても配送業者を利用してご注文の品を送り届けなければならない。しかしこの送料の設定も何となくで決めればよいわけではなく、設定次第ではコンバージョン率や客単価に影響する重要な要素。
今回はネットショップで選択するべき送料設定のパターンをそれぞれの特徴とともにご説明していく。
送料無料
思い切って送料分をショップ側の負担として、お客様の負担をなくす「送料無料」施策。響きもいいし、インパクトもあり、お客様の購入意欲を高めることができる。それに同じ商品が他のショップで同価格帯で売られていた場合、送料無料のショップで購入した方が、お得なのは明白。よりお客様に選ばれやすいショップとなる。
送料無料とすることで、コンバージョン率を高めることができるのは間違いない。特にメーカーから仕入れを行っているECサイトは、価格面での強みとすることができるので、より送料無料の恩恵を得ることができる。
キャンペーンとして利用するのもあり
年中送料無料を継続して行うのが予算的に厳しい場合、キャンペーンのような形で、期間限定で送料無料期間をつくってみるのもよいだろう。コンバージョン率を高めることができるだけでなく、常連のお客様を飽きさせないための施策にもなる。
送料無料と称して送料を上乗せした価格表記はやめよう
商品の定価に送料を上乗せした額を販売価格として、送料無料と称して販売するのはやめておこう。送料無料とはあくまで送料をショップ側が負担することであり、見かけ上は送料無料のようになっていても、これでは結局は送料を負担するのはお客様であり、感心できる販売手法ではない。お客様をだます行為として、景品表示法に抵触する可能性だってある。
もし送料を気にせずにお買い物してほしいという思いからこのようにしているのなら、「送料込み」と表記しておくことをおすすめする。こうすればお客様もいくらの送料が発生するのか、その他のページを探し回らなくても済む。
※ただし送料込みにする場合は、全国一律の送料になるので要注意
○○円以上で送料無料
よくネットショッピングをしていると「1万円以上のお買い上げで送料無料」という文言を見かけることはないだろうか。今や当たり前のテクニックではあるが、これは実に上手にできている。
お客様の心理としては、あと少し買い足せば送料が無料になると思い、わざわざ今買わなくてもよいものであっても、ついで買いしてしまう。このように客単価を上げるための施策として有効に働くのである。
送料無料のボーダーは緻密に決める
送料無料のボーダーラインとなる○○円以上は、何となくで決めてはいけない。○○円以上送料無料は、お客様のついで買いを誘発させ、客単価をつり上げる施策のため、ついで買いが生まれなければ何の意味もない。
だから平均客単価が3000円ぐらいのショップで、送料無料のボーダーラインを1万円にしていては、多くのお客様は「あともう少しで送料が無料になるなら…」という気持ちにはならないわけである。だから客単価が3000円ぐらいなら4000円以上で送料無料、客単価が8000円ぐらいなら1万円以上で送料無料ぐらいの、ちょうど良いラインを設定するようにしよう。
現状の客単価を分析し、いくらにすれば一番客単価が増すのかを検証しながら適切なラインを見極めていくとよい。
送料一律
送料一律の設定にしておくと、お客様にとっても総額でのお買い物額が決済前に計算しやすくなる。大きな商材ではなく、アクセサリーや書籍などの小物を取り扱うネットショップであれば、全国送料一律の配送サービスを利用することが可能になる。
2016年7月現在、送料一律での配送サービスは以下のようなものがある。
- レターパックライト(日本郵便): 360円
- レターパックプラス(日本郵便): 510円
- クリックポスト(日本郵便): 164円
- ポスパケット(日本郵便): 360円
送料一律の配送サービスを利用しない場合は、お届け先によって負担が異なる
もしショップ側の送料設定は全国一律としながらも、上記で挙げたような送料一律サービスを利用しない場合は、商品の重量や配送地域によって送料は変わってくる。
こうした場合は送料一律の額をいくらに決めるかが重要になってくる。最も安くお届けできる地域の送料に合わせて、差額分は店舗側の負担にするのか、それとも中間ぐらいの地域を基準にして帳尻を合わせるのか。こうしなければいけないというルールは存在しないので、各店舗の判断で決めよう。
配送地域や配送重量によって異なる送料
送料をできるだけしっかりと徴収したいなら、配送する地域によって細かく送料を分けておく必要がある。お客様の送付先住所から送料を判断する仕組み。日本郵便のゆうパックやヤマト運輸の宅急便を利用する場合は、各ホームページにて、エリアごとの送料を確認することができる。
箱の大きさによっても送料が変わってくるので、自店で取り扱う品物を梱包できる箱のサイズもしっかりと考慮しておくとよい。
また重量によって送料が変わってくるタイプの配送サービスを利用するなら、商品ごとに重量を設定しておかなければならないため、システム側が重量計算に対応している必要がある。
離島の送料も明記する
配送エリアごとに個別の送料を徴収する場合、配送業者によっては離島などの僻地への配送には別途料金が発生することもある。こうしたことも事前に通知しておくと、後々のトラブルを未然に防ぐことができる。
きっちりと送料を徴収するのは難しい
いくら配送エリアごとに送料を設定したとしても、100%送料分だけをきっちりと徴収するのは難しい。1回の注文で1商品だけの配送であればよいのだが、1回の注文で複数個の商品を送り届ける場合が問題だ。
複数個の商品を同梱することで、箱のサイズも大きくなってしまうし、場合によっては2箱での配送になってしまう可能性もある。すると配送地域は変わらずも、もともと設定していた配送料金よりも高くなってしまう。注文のあった商品の組み合わせによって、どのぐらいのサイズになるのかが予測できないため、システム上で送料をきっちり計算することは非常に難しい。
こうしたことを見越して、余分に送料を徴収するのか、店舗が負担するのかも決めておくようにしよう。
送料をきっちり徴収するなら着払いでの配送
どうしても送料を漏れなく徴収したい、またはお客様にも余分な負担を負わせたくないのであれば、着払いでの配送という手もある。商品をお届けした際に、配達員がお客様から実際に発生した送料と手数料を徴収する仕組み。
ただしお客様には事前に着払いでお届けすることを念入りに伝えておこう。場合によっては「送料無料だと思っていたのに、到着時に送料を徴収された」というクレームが入ることもある。
また商品代引きならともかく、着払いはお客様には不人気だ。商品については決済が完了しているにもかかわらず、送料だけ到着時に別途支払うのが手間なのだろう。
海外配送の場合は国内とは送料計算が異なる
越境ECに挑戦したいという事業者も増えてきたが、海外配送の場合は送料設定が国内配送のものとは異なるので要注意。
基本は送付する荷物の重量と、サービスの種類(到着までの日数でサービスが分かれる)と、お届けの地域によって送料が決まる。もっとも多く使われているのは、日本郵便のEMSやSAL便といった海外配送サービスだろう。
詳細はこちらの「郵便局で利用できる海外配送サービスをご紹介(EMSやSALなど)」の記事にまとめているので、是非参考にしてほしい。
おわりに どんな送料設定にするのがベストかはそれぞれ
送料と言っても、いくつかの設定パターンがあることをご理解いただけただろうか。どんなタイプの送料を設定するのがベストなのか? という問いには一概には答えられない。あくまで店舗それぞれの特徴や方針によって決めていけばよい。
ただし冒頭でも説明した通り、送料設定は売上額にも左右する重要な要素である。しっかりと吟味した上で、検証を重ねながら決めていくようにしよう。
また配送手段については、こちらの「ネットショップで使える主要配送業社の提供サービスをご紹介」で紹介しているので参考にどうぞ。
【著者からの一言】
鍵谷 隆 -KAGIYA TAKASHI-
当記事は2016年ごろ、私がECサイトのコンサル経営をしていた時期にまとめたノウハウ集だ。そのため外部サイトへのリンクが切れていたり、Googleや各種ASPなどの外部システムの仕様変更などで状況が変わっている可能性があることだけは了承してくれ!
ただ商いの本質は変わることはない。ネットショップ運営でお困りの経営者や担当者なら、当サイトの記事も必ず役に立つはずだ。全てのEC関係者に幸あれ。検討を祈る!