何でも買えるではなく専門分野に特化したECサイトにしよう

もともと「この商品の魅力を多くの人に伝えたい!」や「店内の商品をネットでも販売したい!」という人なら、ネットショップを始める時点で商材も決まっているだろうが「今後成長するEC市場でビジネスをしていきたい」と漠然とした目標しかない段階なら、まずは何を販売していくかを決めなくてはならない。

ただし商材と言っても、その数は無限と言っていいほどある。その商材を用意するには卸業者を利用してもいいし、商品開発をしてもいいし、海外へ買い付け旅行に出かけたっていい。はたまた近所に素敵なものづくりをする作家さんがいるのなら、代理販売契約を結んでもよいだろう。何を売るかは、アイデア次第でどうにでもなる。

ただしどうにでもなるからこそ、何を売ればいいのか余計に悩んでしまう。今回はそんな悩みを抱えている方のために、これからネットショップを開業するなら、何でも買える量販店ではなく、専門分野に特化したECサイトを作っていこうという話。

 

何でも買える店より専門店を選ぶ理由

それでは中小規模のネットショップが商品ジャンルを絞って、専門店とした方がよい理由を、以下に挙げる3つの観点から説明していく。

 

商品をそろえるのに資本力が必要

まずなんでも買えるお店だと、在庫として抱えておく商品数も多くなる。注文が入ってから発注をかけるタイプの商売ならよいが、そんなにも注文から時間がかかってしまうようであれば、お客様も別のショップを利用するだろう。

商材を抱えるということは、それだけ仕入れ費用が必要になるということ。仕入れた直後から商品が次々に売れていけばよいが、よほど名が知られている商店でない限り、これもあり得ない話だ。

開業にかかる費用を安く抑えることができるのが、ネットショップの魅力の一つ。大企業と比較して資本力の劣る中小企業では、開業前に莫大な予算を用意して商品仕入れをするのは現実的な話ではない。

 

検索での流入を期待できる

ネットショップの集客で重要な要素となるのは自然検索からの流入だ。そして自然検索での流入を増やすのに、切っても切り離せない考えがSEO。

SEOについては、かつての被リンク対策やキーワードの詰め込みのようなブラックな手法ではなく、どれだけユーザーが調べている情報にマッチするのか、ページの質自体を重要視するようになってきた。そのためECサイトにおいても、サイト全体の作りこみや、各ページの質に影響する部分は大きいが、一般的には専門サイトの方がSEO対策に強くなる傾向がある。

たとえばオリーブオイルを通販で購入しようとするお客がいたとして、オールジャンルの食料品を扱っているECサイトよりも、全世界のオリーブオイルを集めて専門店としてるECサイトの方が、ユーザーの求めている商品を取り扱っている可能性が高い。そうすると、”ユーザーの求めている情報が手に入る”という観点で考えれば、専門サイトの方が上位表示されるべきなのである。

商品数が多ければ多いほどECサイトの入り口が増えることは間違いないが、SEO的観点から考えれば、ジャンルを絞り、その中で商品数を充実させていくことの方が良いのである。

 

専門店は思い出しやすい

あまりにも商品ジャンルが多岐にわたってしまうと、そのショップが”何屋さん”なのかがぼんやりとしてしまい、ユーザーの記憶に残りにくくなる。

何でも売っている一大量販店チェーンを引き合いに出すなら、実社会では”ドン・キホーテ”があるが、ここまでになるともう別の話。ドン・キホーテはそのショップ名自体がブランド化しており、何も買う用事はなくてもドン・キホーテに行くことが目的になっている場合もあるぐらいだ。

例えばソファを買い換えたい場合、ドン・キホーテに行くという思考に辿り着く方は少なく、多くの方は近所の家具屋に足を運ぶだろう。それにネットショップの場合は実店舗のように、店内をぶらりと見てまわる楽しみというものを感じにくい。そのため欲しいものをパパッと購入して済ましてしまうことが多い。

こうした理由から、何か足りないものがあったときに、すぐに思い出してもらいやすい専門店を構築するべきなのである。

 

ファンをつくりやすい

専門店は「○○のお店」という認識がされやすいため、その商材のファンを取り込みやすい。ある意味専門店ということ自体が、ブランディングの役割を果たしており、ユーザーの共感を得やすいのである。

例えばロードバイクを趣味としている人が、自転車のパーツ専門店を自分の好きな店のひとつとして、頻繁に足を運ぶように、ネットショップでも専門店は一部のユーザーから支持を受けやすくなる。

さらにSNSやオウンドメディアなどのメディア運用との相性も良く、ユーザーの求めている情報を定期的に発信することで、お客様から愛されるショップづくりが可能になる。

 

商材選びのポイント

それでは次に、どのような商材をチョイスしたらよいのか…という方に、商材選びのポイントについてご説明していく。商品が売れるかどうかは需要と供給のバランスにある。一方だけを気にして判断をするのではなく、双方に目を向けることが重要だ。

 

需要の調査

どんなに素晴らしい商材だとしても、それを欲しい人が一人もいなければ、商売にはならない。商売において大切な心がまえは、お客様に欲しいと思わせる販売テクニックだが、それよりも需要の高い商品であれば、販売はずっと楽になる。欲しいと思う人が多ければ多いほど売りやすくなるのは言うまでもない事実。

需要を把握するには、常に世の中の動向に敏感になっておく必要がある。石油の登場によって石炭の需要が減少したように、大きな流れを掴まなければならない。そのためにも雑誌や新聞・ネットなどでの情報収集は欠かしてはいけない。

 

一過性の人気商品には注意

例えば一発屋芸人のパロディアイテムなどのように、ある一時期だけ需要が高くなる商品がある。そうした商品は熱が冷めてしまうのも早いため、あまりにも大量に仕入れてしまうと、在庫の山を抱えてしまうことにもなりかねない。一過性の人気商品は仕入れにも注意が必要だ。

またトレンドの流れに影響を受けやすいアパレル関係も、そのシーズンの人気アイテムを仕入れることは、売上げを伸ばすための必須の対策になる。しかし適正在庫を判断するには、ある程度の業界経験が必要になるだろう。初心者がいきなり手を出すのは少々難易度が高い。それでもアパレルで勝負したいという方は、失敗を経験しながら学んでいく覚悟を持っておこう。

 

衣食住はなくならない

需要という意味では、衣食住にまつわる商売は絶対に需要がなくなることはない。お部屋を飾る可愛らしい雑貨は無くても生きていけるが、水やお米がなかったり、着るものがなければ生きていくことはできないからだ。

そうした生活必需品は、実際ネット通販でもよく売れる商品ジャンルである。

 

競合店の調査

売れそうな商材を見つけたら、競合となるショップがどれだけ存在しているのかも確認しよう。インターネット検索で「商材名 + 通販」というキーワードで検索をかければすぐに見つけることができる。そして言うまでもないが、競合となるショップは少なければ少ないほどいい。

もし競合店が見つかったなら、全く同じ商品を販売しているのか、同じような商品だけど機能が異なるのかなど、入念にチェックしていく。もし商品力が同じようであれば、その先はプロモーションやサービス面での勝負になり、厳しい戦いになることは覚悟しておかなければならない。

ただし単純に競合が少なければ売れやすいという問題ではなく、需要と供給のバランスに目を向けることが大事。供給が少なくても需要も同様に少なければ、大きな売上げを出すことは見込めないだろう。逆に競合店舗が多くても、需要の大きい市場であれば上手に売上げを出していくことも可能になる。

 

専門店を複数店舗経営する

もしネットショップ1号店を軌道に乗せ、成功したらもっと事業を拡大していきたいと考えるはずだ。そこでよくある間違いが、新たな顧客層を開拓しようと、別ジャンルの商材を仕入れて、同じショップで販売すること。これは別ジャンルの商材を仕入れることが問題ではなく、それを同じショップで販売することが問題なのである。

せっかくある商材の専門店として認識されているにもかかわらず、商品ジャンルを多種多様なものに拡大してしまえば、何のお店なのかが分からなくなってしまい、覚悟を決めて投資した事業拡大も失敗に終わってしまう可能性が高い。

もしEC事業の拡大をしてきたいなら、成功したショップはそのままに、別の商材はまた別の専門店という形でオープンさせるのが望ましい。そうすることで店舗としてのブランディングもしやすくなり、ユーザーへの訴求効果も高くなる。成功店舗で抱えているお客様へのDMなどで、新しい店舗がオープンしたことをお知らせしてもよいだろう。

専門店であること自体が強みになっているので、商品ジャンルを増やす際には別のネットショップを立ち上げることが鉄則である。

 

おわりに 中小企業は専門店で勝負する

中小企業なら専門分野に特化したネットショップで勝負することが、最も売上げを上げやすい戦略となる。よく「何でもあるは、何にもないと一緒」と言われることがあるが、まさしくその通りで、ユーザーの記憶に残るショップになるには、専門店である必要がある。

特にネット通販を利用するユーザーは、いちいちどこのお店で購入したかなんて覚えていないことも多いので、より記憶に定着させる・印象付けることが大事なのである。これからネットショップを開業する方で、商材について悩んでいるならば「ネットショップの商品仕入れ先・方法(卸問屋もご紹介)」の記事も是非参考にしてほしい。


【著者からの一言】

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鍵谷 隆 -KAGIYA TAKASHI-

当記事は2016年ごろ、私がECサイトのコンサル経営をしていた時期にまとめたノウハウ集だ。そのため外部サイトへのリンクが切れていたり、Googleや各種ASPなどの外部システムの仕様変更などで状況が変わっている可能性があることだけは了承してくれ!

ただ商いの本質は変わることはない。ネットショップ運営でお困りの経営者や担当者なら、当サイトの記事も必ず役に立つはずだ。全てのEC関係者に幸あれ。検討を祈る!