ネットショップで難しいのは新規顧客を獲得することよりも、リピーターをつくりあげること。クリック一つで店舗の比較できてしまうネットショップは、実店舗での運営よりも固定客を捕まえるのが困難になる。だからショップオーナーは顧客満足度を高めるためにさまざまな施策を打っていく。
そこでリピート購入につなげたいのなら、定期的に商品購入をする仕組みをつくってはいかがだろうか。そのためには定期購買便を利用する手がある。今回は収益を安定させるための定期購買便のすすめについて説明していく。
定期購買便とは
説明するまでもないかもしれないが、定期購買便とは一定の周期で商品を発送するタイプの商品である。
ただしお届けする周期や商品に決まりはないため、一週間に一度お届けするものや、一カ月に一度お届けするものなどバラバラで、お届けする品物も毎回同じものが届くものや、バラエティパックなどさまざま。
メリットとは
定期購買を利用すると、お客様とショップ側、双方にメリットが生まれる。ユーザーとしては毎回注文する手間を省くことができ、ショップとしては安定した収益を得ることができる。
一度でも定期購買してくれるお客様を増やせば、ショップ側の手間としては毎度の発送ぐらいであり、運営の手間を抑えることができる。定期購入するお客様を増やせば増やすほど毎月の収益が安定するため、ネット通販業者としては理想の注文形態と言える。
定期購買に適した商材
定期購買に適した商材は、消費スピードが速く、定期的に利用するものが最適だ。たとえば洗剤やティッシュなどの日用品や、食材などは常に消費するものであり、無くてはならないもののため、定期購買用の商品には向いている。
ただしどこでも売られているような商品だと、定期購買してもらうのが難しくなる。消費者だってどこでも売っている商品なら、少しでも安いところで購入したいと思う。そうすると価格勝負になってしまい、中小規模のEC事業者にとっては厳しい戦いになってしまう。
中小規模のEC事業者が定期購買便を戦略として打ち出すなら「常に消費する・なくてはならないもの」という条件はそのままに、他商品と比較して何かしら優れている部分があることが必須。安いから選ばれるわけではなく、商品の魅力を理解してもらった上で選ばれることが重要なのだ。
工夫次第では毎回違う商品を送ってもよし
定期購買商品は、毎回同じ商品をお届けしなければならないということでもない。工夫次第では毎回違う商品を送ることもできる。
例えば雑貨を商材とするネットショップの場合なら「北欧キャンペーン」と称して「月に一度、店主がセレクトした2000円相当の北欧にまつわる雑貨をお届けします」のような展開も可能だ。ただしこの場合はよほどの人気店か、アイテムをセレクトする人が著名人である場合でないと難しいかもしれない。
またブランド化することで、一部の熱狂的なファンから定期購買便を利用してもらいやすくなる。その場合は「定期便でしか購入できないアイテムが含まれています」として、プレミア感を演出するとより多くのお客様を集められるだろう。
定期購買商品の売り方
サンプル品の無償提供
使ったこともない商品をいきなり定期購買することはない。まずはどのような商品なのかを知ってもらい、その魅力を理解してもらう必要がある。単品でのご注文を承ってから、定期購買をすすめるのもよいが、もっと初回注文のハードルを下げるためには、初回利用者に限りサンプル品の無償提供を行うとよいだろう。
この無償提供には、心理的にその後の購入を促す効果がある。これは返報性の原理と呼ばれるもので、人は何かの施しを受けたら、そのお返しをしなければならないという責任感を覚えるものである。それが試供品だとしても、無料でもらったのだから、商品を購入してお返しをしようという気持ちが働く。
ただし本当に魅力的な商品であることが前提だ。
販売終了期限を設けずにいつでも解約OK
半年契約や1年契約などの期間をあえて設けずに、半永久的に契約が更新されていくタイプの販売手法もある。ただしこの場合はいつでも解約OKということを明記しておかないと、お客様が集まらないだろう。
携帯電話のオプションや、有料テレビチャンネルなど、人はなんとなく契約を続けているものが以外にも多い。それはなぜかと言うと、解約することを手間に感じるからだ。よっぽどその質に不満があるなら解約してしまうだろうが、特に不満を感じなければ、そのまま契約を更新してくれるケースが多い。
毎月自動引き落としのカートシステムにすることで、自動更新型の定期購買便が可能になる。
単品商品の購入よりも、お値打ち価格で提供
先の説明で「価格勝負はいけない」と述べていたが、他店との価格競争ではなく、単品で購入することよりも金銭的なお得感を打ち出すことで、より定期購買を選んでもらいやすくなる。
例えば単品購入なら定価1000円のところを、12ヵ月の定期購買なら1回あたり800円の計9600円としておくと「同じ商品がお値打ちに購入できるのなら定期購買にしよう」と思ってもらいやすくなる。
お客間の心を離さない商品の送付
一度でも定期購買を選択してもらえれば、ショップ側の負担も減るのは確かだが、今度は定期購買をずーっと利用してもらうための施策を打たなければならない。
定期購買を利用中のユーザーは、サイトに訪問してもらう機会が減少するため、メールマガジンや商品お届けのタイミングぐらいしか、ネットショップとお客様がコンタクトする機会がなくなる。そうした貴重なタイミングは有効に活用していこう。
メールマガジンで飽きさせない仕組みづくりを
メールマガジンを利用して、お客様が商品を飽きさせない仕組みづくりをしよう。
もし食材系の商品なら、その食材を利用したオリジナルレシピを配信したり、その食材が生産される過程の手間を紹介することで、新たな発見をしてもらい、より魅力的な商品だと認識してもらう。
またコスメ系の商材なら、毎日の生活に役立つメイク術のような、女性が好む美と健康についてのトピックで、メルマガ自体を楽しみにしてもらうような仕掛けをしていく。メルマガを楽しんでもらうことで、お客様はショップのファンとなり、定期購買を継続利用してもらえる可能性が高くなる。
商品のお届け時にサプライズを
お客様を楽しくさせる意味では、商品のお届け時にちょっとしたサプライズを用意しておくのも効果的。ネットショップの醍醐味は待ちに待った商品とご対面する瞬間の喜びだが、定期購買の場合は毎月同じ商品が届くため、その感動も徐々に薄れていってしまう。だから意図的に感動を演出する。
例えば店主からの感謝メッセージを商品と同梱したり、ご注文の商品とは別のおまけ商品を同梱したりと、商品の到着が楽しみになるような施策を打つことができる。詳しくはこちらの「リピート購入を狙うための商品発送時に同梱したい7つのもの」にまとめているので、参考にしてほしい。
おわりに 定期購買にも仕組みづくりを
ネットショップにおいて、定期購入便を利用してくれるお客様が増えることは嬉しいことだが、何も策が無ければ簡単なことではない。購入してくれる仕組みづくりをすることが大切だ。定期購買に適した商材を理解し、それを購入してもらうためにはどうするか、また継続して利用してもらうための施策など、あらゆる面でなんとなくではなく、仮説を立てながら実証を繰り返していこう。
ネットショップ運営は戦略が大事ということを忘れずに、定期購買商品を販売して経営を安定化させていこう。
【著者からの一言】
鍵谷 隆 -KAGIYA TAKASHI-
当記事は2016年ごろ、私がECサイトのコンサル経営をしていた時期にまとめたノウハウ集だ。そのため外部サイトへのリンクが切れていたり、Googleや各種ASPなどの外部システムの仕様変更などで状況が変わっている可能性があることだけは了承してくれ!
ただ商いの本質は変わることはない。ネットショップ運営でお困りの経営者や担当者なら、当サイトの記事も必ず役に立つはずだ。全てのEC関係者に幸あれ。検討を祈る!