インターネットを利用して通販事業を行うには、プラットフォームとなるネットショップが必要。実店舗と同じように、ネットショップに商品情報をアップロードして、お客様を集めて商品を購入してもらうため、ショップシステムがないことには始まりません。
これからEC事業をスタートさせる企業や、個人でネットショップを立ち上げようという方は、ショップシステムをどうしたらよいのだろうかとお考えのはず。中にはウェブ制作会社にネットショップの構築を依頼する予定の事業者もいると思うので、ショップシステムの制作を依頼する前に確認しておくべきチェック項目について、ご説明していく。
ASPを利用してはダメなのか?
まずネットショップの制作を一から依頼する場合、どんなに安い制作会社でも50万円以上はかかるだろう。通常のウェブサイトとは違い、商品情報の更新システムやカートシステムの作り込みが必要なため、非常に高額になってしまう。大規模ショップでは構築に数百万円必要になることも、珍しい話ではない。
とにかく初期費用が高くなるため、場合によっては実店舗での開業と遜色ないぐらいの予算が必要になることもある。
しかしASP(アプリケーションサービスプロバイダ)を利用することで、月額制だが月々数千円のコストで、高機能なショップシステムを利用することができる。自前のシステムというよりも、ショップシステムをレンタルするイメージ。ASP型ネットショップならカラーミーショップやショップサーブが有名だ。
ASPでもカスタマイズ可能
利用するASPにもよるが、その多くは独自のカスタマイズをすることが可能だ。もしプログラミングの知識が多少なりともあるのなら、基本となるテンプレートからカスタマイズを加えて、自分好みのデザインにしていくのもありだ。
もしカスタマイズを自身で行うのが難しいなら、ASPのカスタマイズを専門にしている業者に委託してもよいだろう。そっちの方が全てを制作会社に任せるよりも圧倒的に安上がりだ。
実現したい機能がASPでも可能か
ASPの機能も年々高機能になっている。一昔前なら会員制度やメルマガ配信などをしたければ、独自システムのショップを構築しなければならなかったかもしれないが、今ではそうしたこともASPの機能でまかなえてしまう。
ネットショップを構築する前に、ショップオーナーが実現したい機能がASPを利用しても可能なのかどうかを確認しておこう。
ネットショップについての知識はあるのか
制作会社の専門はあくまでウェブ制作であって、ネットショップに関する深い知識は持ち合わせていないことが多い。見栄えの良いサイトを作ることと、売るためのサイトを作るのでは、全く観点が異なってくる。
企業のコーポレートサイトであれば、ブランドイメージを考慮してより美しく分かりやすいサイトを作ればよいが、ネットショップはそんなに単純ではない。ユーザーの想定から始まり、どのようなデザインにしていくか、買い物かごに入れるまでの導線をどうするのか、緻密なサイト設計が必要になる。コーポレートサイトは企業の色を前面に出せばよいが、ネットショップの場合はお客様のことを考えた設計が必要になる。
そのため制作会社を選ぶ際には、イーコマースについてどれだけ精通しているか、知識があるのかも基準にした方がよい。
コンサル系制作会社
弊社としてはウェブ制作をメイン事業としている業者ではなく、ネットショップのコンサルをメイン事業として、ウェブ制作をサブ事業としている企業をおすすめする。
ウェブ制作を専門としない企業では「しっかりしたシステムが作れるの?」と不安になるかもしれないが、そこは大丈夫。ウェブ制作の作業は大きく分けて”設計”と”プログラミング”の2工程に分類されるのだが、設計部分をしっかりと考え抜いていれば、プログラミングは誰がやっても同じだ。
注文住宅と同じようなもの。設計士が起こした図面をもとに、大工が形にしていく。設計士の図案がめちゃくちゃだと、生活しにくい家となってしまう。要は設計の工程をネットショップの知識に長けた者が行うことで、売れるショップとなるのだ。
保守費用を確認する
制作会社によっては、メンテナンス・運用保守という名目で、納品後も毎月費用を徴収することがある。
確かにウェブサイトは作ったら終わりではなく、ランニングコストがかかるもの。EC-CUBEやwordpressのようなオープンソースで構築するなら、バージョンのアップデート作業をしなければならないし、サーバーのレンタル費用も必要になる。
保守費用が発生するのは仕方ないかもしれないが、悪質な制作会社だと保守費用と称して、毎月高額な請求をしてくる場合もあるので、どんな作業にいくらの費用がかかるのかは、しっかりと制作会社に確認をとるようにしたい。
複数社から見積もりをとる
システムの開発費用は、制作会社によってバラバラだ。それに制作を依頼する側としては、適正化価格を知る由もないだろう。だから見積もり依頼は複数社に依頼して、だいたいの相場観を掴むとよい。
安いから良いわけでもない
見積もりが安いからその制作会社に依頼しようと思うのは短絡的すぎる。ウェブ制作の費用は人件費によって決まってくる。費用を安く抑えられるということは、開発にかける人数や時間が少ないということ。
作業する人間の技術レベルが高く、開発工数を抑えられるのかもしれないが、あまりにも金額が安いものは、十分な品質を確保できない、少々雑な仕事になるリスクもある。また大規模制作会社の場合は、企業のプロモーション費用や管理部に所属する人件費も制作費用に乗せられているのが常識。
最もおすすめなのは技術レベルの高い人間が少数精鋭で運営している制作会社。口コミや過去の制作実績を確認しながら、コストパフォーマンスのよい会社を選ぶようにしたい。
フリーランスに依頼するのもあり
どうしても制作費用の安さを優先したいのであれば、制作会社ではなく、フリーランスで活躍するプログラマーやエンジニアに依頼する方法もある。
ランサーズやクラウドワークスのようなクラウドソーシングサービスが普及し、一昔前よりもフリーの技術者に仕事を発注しやすい環境が整備されている。フリーランスに依頼する場合は、1対1のやり取りになるため、ある程度の融通を利かせやすいというメリットがある。しかしサポート体制がしっかりしていないため、トラブルに発展するケースも少なくない。
フリーランスに依頼する場合は、その人間が信用できる人物なのか、過去の評価や制作実績などから判断していきたい。
SEO対策の方法
ウェブ制作会社ならSEOに対しても知識があって当たり前と思うのが普通。確かに通常の企業よりもSEOに対しての知識は確実に高く、より検索順位が上位になるような対策も施してくれるだろう。
ただし制作を依頼する前に見極めてほしいのは、どのようなSEO対策を講じてくれるかだ。
SEO対策には大きく分けて外部対策と内部対策の2種類があり、10年程前は外部対策が非常に効果的だった。有料のリンクを購入したり、サテライトサイトを利用するなど。もっと悪質なものでは隠しテキストや隠しリンクなどの手法もあり、これらは今となってはブラックなSEO対策としてペナルティを課せられることもある。
近年では検索エンジンの「ユーザーにとって本当に価値あるページを提供する」という概念から、お金を出して購入したリンクなどのSEO対策は、効果が薄くなっているどころか悪影響を及ぼす。それよりもコンテンツとしてのページを充実させることや、使い勝手のよいサイト設計など、いわゆる内部対策に重きが置かれている。
SEO対策をしてくれるか? ということだけではなく、どのようなSEO対策をしてくれるのかを確認するようにしてほしい。ネットショップのSEO対策については「ネットショップのSEO対策で検索順位の上位表示を狙う方法」の記事も参考にどうぞ。
おわりに 制作会社選びは慎重に
ネットショップの制作は決して安いものではない。だからこそ慎重に、複数社を天秤にかけながら、どこに依頼するのが良いのかを決めていく。またASPの利用やモール系への出店の道があることも忘れてはいけない。
各種ネットショップ開業サービスについては「ネットショップ開業サービスを徹底比較!無料系からモール系まで」を参考にしてほしい。
そして何よりも制作会社自体にネットショップについての知識が豊富かどうかが、非常に重要になる。ネットショップは企業のホームページとは役割が違う。売上げを伸ばすにはどうしたらよいのか、ターゲット顧客の設定から購入の導線まで、親身になって考えてくれる、二人三脚で制作を進められるような会社を選ぶようにしよう。
【著者からの一言】
鍵谷 隆 -KAGIYA TAKASHI-
当記事は2016年ごろ、私がECサイトのコンサル経営をしていた時期にまとめたノウハウ集だ。そのため外部サイトへのリンクが切れていたり、Googleや各種ASPなどの外部システムの仕様変更などで状況が変わっている可能性があることだけは了承してくれ!
ただ商いの本質は変わることはない。ネットショップ運営でお困りの経営者や担当者なら、当サイトの記事も必ず役に立つはずだ。全てのEC関係者に幸あれ。検討を祈る!