CMSとして圧倒的シェアを誇るwordpress(ワードプレス)。オープンソースのため誰でも利用できる上に、機能面でも申し分なく使えるため、ブログはもちろん企業のコーポレートサイトに利用されることも多くなってきた。
そのwordpressを利用することで、ネットショップも開業できてしまうことをご存知だろうか? ある程度システムに対する知識があるのならショップオーナーが自ら構築することも可能だし、制作会社に依頼する場合でもwordpressを前提にした設計をお願いしてもよいだろう。
ということで、今回はwordpressを利用してネットショップを始めることのメリットやデメリットから、プラグインやテーマについてご説明していく。
wordpressとは
冒頭でも少し触れたが、wordpressとはCMS(コンテンツマネージメントシステム)と呼ばれる、誰でも無料で利用できるソフトウェアのこと。
コンテンツを管理することに特化しており、ブログサイトには非常に相性よく使えるシステムだ。近年ではシステムのバージョンアップが繰り返し行われていることや、多種多様なテンプレートが登場していることから、企業サイトとしても利用されることが多くなった。
wordpressが使えないサーバーがあるので注意
wordpressを技術的な面から説明すると、PHPと呼ばれるプログラム言語で構成されており、MySQLというデータベースを利用して動作する。もしネットショップを構築するサーバーが、PHPとMySQLが利用できないタイプであればwordpressは使えないので要注意。
さらにPHPやMySQLにはバージョンがあり、wordpressの最新バージョンを動かすために必要なバージョンも決まっているので、サーバー選びの際にはバージョンにも気をかけよう。
GMOペパボ社のロリポップサーバーや、さくらインターネットのレンタルサーバーを利用する場合は、簡単インストール機能が付いているため、初心者にはおすすめ。
wordpressでネットショップを構築するメリットとデメリット
それではwordpressでネットショップを構築するメリットとデメリットについてご説明していく。
メリット
メディア型ECを構築できる
先にもご説明したが、ワードプレスはもともとコンテンツを管理することに特化したシステム。そのため現在EC業界で主流になりつつある、ECサイトのメディア化を実現しやすくなる。
メディア型ECを構築し、コンテンツマーケティングを実践することで、お客様に選ばれるネットショップとすることが可能になる。
無料で始められる
ネットショップを始めるにあたって、楽天市場のようなモール系に出店するなら初期費用や販売手数料が発生するし、カラーミーショップといったASPサービスでもシステム利用料は月額で必要になる。
しかしwordpressなら無料で始められる。必要になるのはドメイン取得費用やレンタルサーバーなど必要不可欠な諸経費ぐらい。一般的に無料サービスは平凡なデザインになりがちだが、カスタマイズをしていくことで独自性の高いショップの構築が可能になるというのも魅力的。
wordpressについての情報はネット上に豊富にある
数あるCMSの中でも圧倒的なシェアを誇っているwordpress。全世界のウェブサイトの25%はwordpressで構築されているというデータもあるほどで、利用者が多いだけにさまざまな情報がネット上に転がっている。
そのためカスタマイズをしたいときやトラブルに見舞われた際にも、ネット検索すれば解決方法をすぐに見つけ出すことができる。
デメリット
専門的な知識が必要
wordpressでネットショップを構築すること自体はそれほど難しいことではないが、カスタマイズをガンガンしていくにはPHPやスタイルシートなどのプログラミング的な専門知識が必要になる。
もしシステムに弱いがどうしてもwordpressを利用したショップシステムにしたい場合は、サーバーの手配から構築までを外部業者に発注するというのも一つの手だ。
セキュリティの弱さとバージョンアップの手間
先程全世界のウェブサイトの25%はwordpressで構築されていると述べたが、利用者が多ければ多いほど、悪いことをたくらむ人間や団体の数も比例して多くなる。しかもオープンソース(システムの中身を万人に公開している)という性質上、セキュリティの穴を狙った攻撃をされるリスクは高くなる。
そうした悪意ある攻撃を防ぐためにwordpressでは頻繁にバージョンアップが行われているのだが、システムのアップデートをするのも管理者にとって面倒な作業だ。アップデート時にはバックアップを取得して、不具合が起きていないかを確認したり、何かと手間がかかる。
一方的に情報発信するブログなら、少々セキュリティが弱かったとしても人に迷惑をかけることもないだろうが、お客様の個人情報を取り扱うネットショップは違う。もし顧客情報の流出のようなことになってしまえば、大きな問題となってしまうので気を付けてほしい。
ネットショップとして機能させるためのプラグイン
wordpressはプラグインと呼ばれる拡張機能を利用することで、サイト管理者自らプログラミングする必要なく、お望み通りのウェブサイトを簡単に構築できる。
Welcart
Welcartは無料で利用できるネットショップ用プラグイン。国産のプラグインだから送料計算や消費税についても、日本の商習慣がしっかりと考慮されているため非常に使いやすい。
Welcart公式サイト: http://www.welcart.com/
Welcartのプラグインをインストールすることで、テーマと呼ばれる標準のサイトテンプレートもくっついてくるのだが、あまり格好の良いものではない。お洒落なデザインにしたいのなら、以下に紹介するテーマを利用してみよう。
Welcart Basic(無料)
Welcartを開発したコルネ株式会社が提供する専用テーマ。シンプルなデザインで、レスポンシブデザイン(スマホ画面にも対応)なのも嬉しい。カスタマイズを加えることで、自分好みのデザインに変えていける。
デモサイトはこちら: http://themes.welcart.info/basic/
Blanc(無料)
BlancはWelcartのECサイト運営担当経験があるまめ子さんが開発したテーマだが、wordpress公式テーマにも選ばれているため、初心者でも安心して使える。(いずれ公式テーマから取り下げてもらうことも検討中とのこと)
TOPの大画像スライダーは初めてサイトにアクセスするユーザーにインパクトを与える効果があり、動きのあるサイトとなる。サイトとしての世界観を表現するにもグッドな演出だ。
デモサイトはこちら: http://demo.welcustom.net/
これらの他にもいくつかの無料テーマや有料テーマが存在する。
WP OliveCart
無料版と有料版の2タイプが用意されているWP OliveCart。無料版だと都道府県別の送料設定やクレジット決済が使えなかったりと、機能的な制限が発生する。
まずは無料版を導入して、使い勝手が良ければ有料版にアップグレードしてみよう。
公式サイト: http://www.wp-olivecart.com/
現在使用のテーマのまま利用できる
WP OliveCartを利用する際には、公式サイト内で紹介している有料テーマを利用することもできるが、今まで使用していたテーマのまま利用することも可能だ。
そのため従来のブログにお買い物機能を付けたいなと思ったときには重宝する。よりメディア型のECサイトにしていくことができる。
越境ECなら海外生まれのプラグインを
もし海外向けに日本の商品を販売する越境ECをしていくなら、日本生まれのプラグインではなく、海外製のプラグインを利用した方がよい。通貨や配送の面でも、日本製システムでは対応できない部分があるからだ。
海外製のネットショップ用プラグインインは以下に挙げるものが有名。
WooCommerce
…WooCommerce日本語サポートサイト: http://wc.artws.info/
WP e-Commerce
…WP e-Commerceの使い方紹介サイト(日本語): http://techacademy.jp/magazine/4037
おわりに コンテンツを中心に考えた通販システムには最適
wordpressを利用したネットショップの構築は、ブログやオウンドメディアといったコンテンツを軸にして展開するタイプの通販には非常に向いている。ECサイトの延長線上にコンテンツを用意するのではなく、コンテンツの延長線上にお買い物機能が備わっているイメージだ。
そしてネットショップとして機能させるなら、個人情報となる顧客情報の管理には必要以上に注意しておきたい。しっかりとバージョンアップをして、セキュリティの穴が生まれないような対策を講じておこう。
【著者からの一言】
鍵谷 隆 -KAGIYA TAKASHI-
当記事は2016年ごろ、私がECサイトのコンサル経営をしていた時期にまとめたノウハウ集だ。そのため外部サイトへのリンクが切れていたり、Googleや各種ASPなどの外部システムの仕様変更などで状況が変わっている可能性があることだけは了承してくれ!
ただ商いの本質は変わることはない。ネットショップ運営でお困りの経営者や担当者なら、当サイトの記事も必ず役に立つはずだ。全てのEC関係者に幸あれ。検討を祈る!