オウンドメディア立ち上げ時にはデザインよりコンテンツを重視せよ

近年のコンテンツマーケティングの盛り上がりも手伝ってか、弊社でもオウンドメディア立ち上げのご相談を受けることが多いのだが、メディア運用のプロジェクトを始める前に意識してほしいことが、たった一つある。

オウンドメディアはデザイン性よりもコンテンツの質が重要であるということ。

どのようなサイトデザインにするのか、これを考えるのはメディア運用が始まった後でもよいと弊社では考えている。まず優先して考えるべきは、どのようなユーザーに向けて、どういった情報を発信していくか、コンテンツの質なのだ。

弊社ではこのような考えのもと、オウンドメディア展開をご提案しているのだが、そのような考えに至る理由は次の通りだ。

 

ユーザーはデザインではなく情報に共感を得る

例えば雑誌を例にしよう。定期購読している雑誌があるのならば、なぜその雑誌を読み続けているのか考えてほしい。見出し文字のフォントが素敵だからとか、カット割りが素晴らしいからといった理由ではなく、あなたの欲している情報が提供されているからだろう。

もし雑誌を読んでいなくても、スマートフォンで定期的にアクセスするサイトでもいい。趣味についての情報や暇つぶしなど目的に関係なく、定期的に訪れるサイトというのは、求めている情報がそこにあるからアクセスする。

オウンドメディアもユーザーにとって有益な情報を提供し続ける媒体である限り、デザインよりもどんな情報を発信するかを考えなくてはならない。

 

コーポレートサイトはデザイン性も必要

なんでもかんでもウェブサイトにはデザインが必要ないということではない。コーポレートサイトやブランドサイトでは、デザイン性が購入や問い合わせの判断を下すための材料となり得るため、デザインには徹底的にこだわってほしい。

お客様に共感を得られるような、いいなと思ってもらえるような雰囲気をデザインで演出することで、コンバージョン率は高くなるだろう。

オウンドメディアであってもお客様の共感を得たり、次の一歩に踏み出してほしいという目的は一緒なのだが、目的を達成するための手段として、オウンドメディアはデザインよりもコンテンツ(文章やオリジナルの画像)がより重要になってくる。

 

フラットデザインの隆盛とリッチコンテンツの衰退

コンテンツマーケティングが騒がれる以前は、ウェブ上には質の高いコンテンツが少なかった。ウェブサイトを運営する企業としては、いかに質の高いサイトであるかを証明するために、Flashプレイヤーを実装してアニメーションで動きのある表現をつけたり、サイトを3次元的に見せる技法など、リッチコンテンツと呼ばれる技術を導入していた。

しかし現在、フラットデザインと呼ばれるサイト設計がトレンドになってきた。リッチコンテンツとは対照的に、シンプルなつくりで2次元は2次元のまま平面のパーツで構成して、モバイル端末との相性もよい。

この流れも、良質なコンテンツが多くなってきたウェブの世界で、コンテンツの内容に目を向けやすくするために、ある意味必然的に起きているトレンドではないかと思う。

 

コンテンツがマッチしていればユーザーは離れない

究極を言ってしまえば、ターゲットとして設定しているユーザー層に刺さるコンテンツさえ提供していれば、白の背景に黒文字の文章だけでも、リピートしてくれるだろう。

外部サイトでより多くの情報を提供しているサイトがあれば別だが、ウェブ上で御社しか発信していない情報があれば、そこには必ず需要が生まれる。もしその情報を得るためには本屋さんに行っていくらかの金銭的負担を必要とするのであれば、多少使いづらくても無料で情報を取得できるウェブに頼るのが普通だろう。

しかしこれでは読みづらいし、操作性もよろしくない。だから操作性を良くするために、サイトデザインを考えるのだ。ナビゲーションメニューにはカテゴリを設置して、フッターには会社案内も用意してなど、ユーザーにとって使いやすいサイト設計を行っていく。

 

ユーザーの質は想定とずれることがある

プロジェクト始動時にサイトデザインをそこまで考慮しなくても良い理由は、ユーザーの質が計画段階の想定とずれてくることがあるからだ。

 

初期費用と改修費用の2重負担

オウンドメディア運用にて、20代の男性向けに情報発信していたつもりが、蓋を開けてみたら40代男性の閲覧者が多かったなど、当初の想定通りには進まないこともある。ユーザー層についてはGoogleアナリティクスといったアクセス解析ツールを利用することで把握可能だ。

このように当初に想定していたターゲット層にズレが発生した場合、ユーザーに合わせたデザイン改修が必要になる。40代男性向けメディアに方針を切り替えるなら、ポップな配色からシックな配色に切り替えたり、パソコンに不慣れなユーザーが多いことを見越して、ナビゲーションを多用した設計にするなど、デザイン的な対策を施していく。

当初は20代ユーザーを想定してゴリゴリに凝ったデザイン設計をしてしまうと、改修箇所も多くなり、費用負担が大きくなってしまう。企業の担当者としては上司からお叱りの言葉をいただくかもしれない。

 

手間も2倍(人的コストも2倍)

改修が必要になるということは、サイト立ち上げ時に一生懸命考えたデザインも無駄になってしまい、手間も2倍になってしまう。手間が2倍になるということは、人的コストも2倍になることと同じ。これでは担当者のモチベーションも下がってしまうだろう。

ユーザーの質が固まる目安としては、メディアの成長スピードや記事の投稿頻度にもよるが、立ち上げから3ヵ月~半年程度といったところを想定しておきたい。

 

プロジェクトが頓挫する可能性

デザインを立ち上げ当初に凝らないでおきたいもう一つの理由としては、オウンドメディアの社内プロジェクトが途中で頓挫してしまう可能性があるからだ。せっかく膨大な予算を投じて、デザインにも凝ったシステムを用意したとしても、全てが無駄になってしまう。

実はオウンドメディア運用は非常に頓挫しやすいプロジェクトの一つである。その原因には社員のモチベーション低下や、予算が尽きてしまったなどさまざま。※「失敗する原因から考えるメディア運営を継続していくコツ」を参照

プロジェクトの遂行不可というリスクを見越しておく意味でも、デザインは凝らずに初期費用を抑えることも重要。

 

サイトデザインはどうすればよいか

ではサイト立ち上げ時のサイトデザインはどうすればよいか? という話になる。さすがに白背景に黒文字だけではいけない。先にも述べたように、まずはユーザーにとって使い勝手が良いかを考えていく必要がある。

 

デザインは万人受けするものに

コンテンツは万人受けする内容ではNGだが、サイトデザインはまずは万人受けするものに変えよう。特殊な操作方法や文字が著しく小さかったりすると、年配者には使いにくいメディアになってしまうので、あくまでもシンプルに、誰が見ても分かるようなデザインがベストだ。

 

他サイトを真似する

万人受けするデザインにするためには、まずは他のサイトを真似してみることから始める。そっくりそのままコピーしてはパクリとなってしまうので、あくまでも参考程度に真似をする。

他サイトを見ていると、サイトを操作する上で使いやすい部分や、ここにこのボタンは不要では? と疑問を感じる箇所も出てくるだろう。いくつかのサイトを分析することで、ある程度使いやすいデザインが見えてくると思う。

そうしたら自身のサイトに必要な項目を、適切な位置や場所に当てはめていけばよい。

 

時期を見て改修を進める

「手間も2倍(人的コストも2倍)」の項目でも説明したが、ユーザーの質が固まってくるのは3ヵ月~半年程度かかると思ってもらいたい。どうしてもデザイン改修を行いたいのであれば、その時期を迎えてから行うようにしよう。

ユーザーに若年層が多いのなら、よりモバイル端末での使い勝手を優先させるモバイルファーストと呼ばれるデザイン設計をするべきだし、40代女性が多いならボタンを目立つようにしたり、文字を少々大きくしたりする。こうしたデザイン的施策を重ねていくことで、利便性が高まりページ回遊率などの数値も上昇していくだろう。

 

おわりに デザインは後回しにする

ここまで読んでいていただき、デザインを後回しで考えるべき理由をご理解いただけただろうか。「デザインよりもコンテンツの質が重要」「ユーザーは想定と変わってくることがある」「プロジェクトは頓挫するリスクがある」の3つを忘れないでいてほしい。

オウンドメディアを立ち上げていくならば、まずはデザインよりもユーザー層の設定とコンテンツ内容の質に絞って、徹底的に議論を重ねていこう。


【著者からの一言】

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鍵谷 隆 -KAGIYA TAKASHI-

当記事は2016年ごろ、私がECサイトのコンサル経営をしていた時期にまとめたノウハウ集だ。そのため外部サイトへのリンクが切れていたり、Googleや各種ASPなどの外部システムの仕様変更などで状況が変わっている可能性があることだけは了承してくれ!

ただ商いの本質は変わることはない。ネットショップ運営でお困りの経営者や担当者なら、当サイトの記事も必ず役に立つはずだ。全てのEC関係者に幸あれ。検討を祈る!