商品数を増やせば売上げが上がるという助言には気を付けろ

ネットショップの売上げを上げるためにはどうすればよいか? この質問に対する答えはいくつかあるわけだが、その中の一つに「商品数を増やせばよい」という答えもある。実際ネットショップ専門のコンサルタントも、このような助言をすることが多々ある。

ただしコンサルにアドバイスを貰ったからといって、盲目的に商品数を増やせばよいというわけではない。今回は商品数を増やせば売上げが上がるという罠について、ご説明していく。

 

商品数を増やせば売上げは上がるのか?

まず商品数を増やせば売上げは上がるのか? ということだが、これは嘘ではなく、商品数が増えれば売上げは上がる。

例えばフルーツを専門に扱うネットショップで、オレンジを求めているお客様がやって来たにもかかわらず、そのショップの品ぞろえにオレンジが無ければ、そのお店で買い物することはない。しかしオレンジを用意していれば売上げが出るだろうし、グレープフルーツを揃えておけば、グレープフルーツを求めているお客様に対して売上げが上がる。

商品数を増やして品ぞろえを充実させることは、それだけお客様の需要を満たせるショップになるということ。幅広いお客様を取り込むことができれば、その分売上げも伸びていくというわけ。

 

利益が出ているのかを意識せよ

確かに商品数を増やすことで売上げが伸びるのは分かったが、問題なのは利益が出るのか? ということ。ここを意識せずに盲目的に商品数を増やすのは極めて危険。

売上げが伸びれば利益も伸びるじゃないか…と考えるかもしれないが、商品を売るためには在庫を抱えなければならないことを忘れてはいけない。商品在庫は会社の資産ではあるが、販売して現金化することができなければ、いつの日か重くのしかかる不良在庫となってしまう。

不良在庫を多数抱えてしまうと、キャッシュフローも悪くなり、経営的に悪循環に陥ってしまう。最終的に在庫処分セールと称して、赤字覚悟でも不良在庫をさばき切るのが関の山だ。

つまり売上げを伸ばそうと商品数を増やしたものの、不良在庫が大量に発生してしまえば利益は上がらない。こんな本末転倒の結果をむかえてしまう可能性があることを知ってほしい。だから「商品数を増やせばいいや」という短絡的な考えではなく、仕入れ量の調整や、商品を管理する倉庫の賃料などを考慮し、最終的に利益も伸びるのかという点を徹底的に考えるようにしてほしい。

 

店舗コンセプトが崩れない範囲で商品数を充実させる

商品数を増やすことの弊害は、在庫を抱えることで発生する利益率の低下だけではなく、ショップのコンセプトが崩れてしまうというリスクもある。

先程のフルーツショップを例に出すなら、フルーツだけでなく、洋服や電子機器を商品ラインナップに加えることで、さらにお客様の要望を満たすことができる。一見すると商品数を増やしていくことで、それだけ売上げも伸びていきそうに感じるが、実際はそんなことはない。

ジャンル問わず商品数を増やしてしまうと、もはやそのお店が何のお店なのかが分からなくなってしまう。ただこうしたお店は実店舗にもいくつかある。例えばドン・キホーテやイオンなどの複合型スーパー。しかしこれはドン・キホーテやイオンという企業自体がブランドとして周知されているからこそ、お客様の集客に成功しているのであって、中小規模のECサイトと同じように考えてはいけない。

お客様の記憶に残るのは専門店であり、フルーツを買い求めたいお客様がたどり着くのはフルーツ専門店である。あまりにも商品ジャンルを増やし過ぎてしまうと、ショップとしてのコンセプトが崩れ、肝心なときにお客様に選ばれなくなってしまう。露天商ならまだしもネットショップであれば、店舗のコンセプトを崩さない範囲で商品数を充実させていくことが大事。

 

理想は在庫を抱えない販売方法

商品数を増やしていくには、それなりのリスクが発生することをご理解いただけただろうが、そうしたリスクを抑えながら商品数を増やすには、無在庫販売の手法をとるのが一番良い。

商品数を増やしておきながらも、注文が入ってから発注指示を出して、お客様のもとに商品を送り届ける。このようなシステムさえ構築できれば、在庫をロスするリスクも無ければ、増えすぎた在庫を管理しておくスペースを確保する必要もなくなる。リスクを抑えながらも、販売力を高める理想の形だ。

無在庫販売をするためには、多くのメーカーや生産者と販売代理店契約を結んでおく必要がある。詳細については「在庫を持たずに低リスクでネットショップを始める3つの方法」の記事を参考にしてほしい。

 

CV率や客単価の向上にも力を入れるべき

ネットショップの売上げを伸ばすには、商品数を増やす以外にもさまざまな策がある。メーカーから商品を仕入れている小売店ならともかく、農家や工場など、自社で商品を生産しているEC事業者の場合、そんな簡単に商品数を増やすことができない。

もしかしたら商品数を増やすよりも、現在取り扱っている商品の商品ページを充実させる方が効果があるかもしれないのだ。ネットショップの運営は集客数・CV率・平均客単価の3つの数字を意識する。そして継続的な運営を目指すには、リピート率などの数字にも目を向けなければならない。

つまり「売上げを伸ばす = 商品数を増やす」という簡単な構図ではなく、さまざまな要素が絡んだ結果、売上げが伸びていくのである。だからCV率の上昇や客単価の向上などの取り組みにも力を入れるようにしてほしい。
※「ネットショップの売上げアップを実現する35の施策【まとめ】」参考

 

おわりに 商品数を増やすことは大事だが最優先ではない

商品数を増やすことが、ショップの売上げにつながることは確かだが、そこに潜む危険性もしっかりと把握した上で対応するようにしてほしい。くれぐれもコンサルタントからアドバイスを受けたからという理由で、むやみやたらに商品数ばかりを増やすことに注力しないこと。

戦略によっては商品数を絞って、単品で勝負したほうがよい場合もある。これから展開していこうとするショップの特性を見極めながら、必要な策を講じることも覚えていこう。


【著者からの一言】

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鍵谷 隆 -KAGIYA TAKASHI-

当記事は2016年ごろ、私がECサイトのコンサル経営をしていた時期にまとめたノウハウ集だ。そのため外部サイトへのリンクが切れていたり、Googleや各種ASPなどの外部システムの仕様変更などで状況が変わっている可能性があることだけは了承してくれ!

ただ商いの本質は変わることはない。ネットショップ運営でお困りの経営者や担当者なら、当サイトの記事も必ず役に立つはずだ。全てのEC関係者に幸あれ。検討を祈る!