商品の販売価格はいくらが適正なのか…特に自社で商品開発をしている企業や、ハンドメイド作家さんの場合はお悩みになることも多いのではないだろうか。商品の定価を決める際には、一度は価格について社内で協議をすることと思う。
商品の販売価格を決めていく上で意識しておきたいポイントについて、ご説明していく。
利益が出ることを第一に
販売価格を決める上で一番大事なこと、それは「その値段で販売して利益がしっかりと見込めるのか」ということ。NPO法人でない限り、利益を第一優先で考えることは必須だ。利益が上がらなければ経済活動自体行えなくなる。
原価を把握する
商品原価についてはどんぶり勘定ではなく、きちんと1円単位まで把握しておこう。メーカーから仕入れて販売する形態なら仕入れ原価は明確だが、自社生産商品の場合は原材料のコストを管理して、1商品あたりの原価を計算して求めなければならないため少々面倒だ。
だが原価管理をおろそかにしては、適正価格をつけるのが難しくなってしまう。もし1個の商品を作るのに100円の原価が発生していたら、販売価格が100円を下回ってしまえば原価割れとなってしまう。
外的要因によって変化することを理解する
商品原価は外的要因によって変化することを理解する。世の中の動向でその材料の需要が高くなれば材料費も高騰するし、需要が低くなれば安くなる。生産量や出荷量によっても商品原価は変動するため、定期的に原価コストは見直しをかけるようにしたい。
ランニングコストも考慮する
販売価格が原価を上回っているだけでは粗利益は確保できても、営業的には利益が出ない。必要なのは店舗のランニングコストを把握しておくこと。小売店の場合は、主となる収入は物販に頼るしかない。そのため商品の販売が生み出す利益で、店舗管理費や人件費などもまかなっていかなければならない。
インターネットでの販売だからと、そんなにコストはかからないと思っているかもしれないが「ネットショップの仕事は何するの?ECサイトの業務内容について」でも説明しているように、ネットショップは意外にもやることが多く、人的コストもそれなりに発生する。
こうした営業活動にかかる費用も考慮して、商品価格を決めていく。
新商品の開発費用も含める
営業活動にかかる費用までカバーできたら、次回の商品開発にかかる費用も考慮しておきたい。たとえヒット商品を開発したとしても、10年先まで売れ続けてくれる保証は一切ない。どうしても”飽き”がきてしまったり、他社から類似商品が発売されるなどして、次第に売上げも落ちていくことが予想される。
新商品がないとショップ自体にも目新しさがなくなってしまうため、繁盛店を目指すなら、常に新たなヒット商品を生み出していかないといけない。その商品開発費用も空から降ってくるわけではないので、既存の利益から捻出することを理解してほしい。
販売個数を想定する
商品の販売価格を決めるなら、その商品を販売できる数の想定もしなければならない。
もし販売価格が1万円で全ての経費を差し引いて利益が3000円となる商品の場合、月に100個販売することができれば30万円の利益となる。さらに月に1000個販売することができれば300万円の利益となる。
もちろん販売個数が多くなればなるほど、販売にかかる営業コストも高くなるのだが、それだけ売れるのであればもう少し販売価格を低くして、高品質のものをお手頃の価格で提供できる。これは顧客満足度を高める施策となり、結果的にはさらに売上げを伸ばしてくれることになるかもしれない。
主観で考えない
商品を購入するのは開発者ではなくお客様である。だから販売価格を考える際にも、できるだけ多くの人の意見を取り入れるようにした方が良い。開発者や店主の主観で決めてしまうのはよろしくない。
自分ならその商品にいくら出すか
まずは自分がお客様となったことを想定して、この商品ならいくら出してもよいかを考えよう。そのときは商品に対する愛情や、開発時の苦労などはいったん横に置いておき、商品の仕様や機能だけに目を向けて考える。
他社の類似商品と比較する
独占禁止法が定められている日本では、類似商品が存在することは何らおかしいことではない。もし似たような商品があるなら、競合となる商品もチェックしておく。
お客様としては複数の商品を天秤にかけながら最終的に購入する商品を決めていくのが普通の流れ。価格面や機能面を比較しながら、自分が求めているものに一番フィットする商品を選択する。
似たような商品がいくらで販売されているかを基準として、その商品よりも機能的に上回っているから価格を上げようとか、質はちょっと劣るから価格を下げようとか、比較することでも適正価格は見えてくる。
見込み客へのアンケート
社内スタッフだけで協議するのではなく、見込み客へアンケート調査するのもよいだろう。このときに大事なのは”見込み客への調査”であること。
身内に意見を求める人もいるだろうが、商品に興味のない人の意見はそれほど参考にならない。逆に見込み客以外の意見は、価格の決定をする上で邪魔になってしまうこともある。
商品を必要としない人にとっては、それがいくら業界最安値であっても高いと思ってしまうもの。その商品に対して興味がある人、価値が分かる人に意見を求めると、参考意見となって返ってくる。そしてその人とは、常日頃から御社のショップを利用しているお客様が有効だ。
試供品キャンペーンを行う
ショップのリピーターになってもらっているユーザーに対して、販売価格の設定前に試供品キャンペーンを行ってはいかがだろうか。
ご注文いただいた商品と一緒に新商品をお届けして、感想をいただくことで次回のお買い物で使えるクーポンコードを発行する仕組みにする。クーポンといった見返りを用意することで返信率は高くなるだろうし、再度リピートするきっかけにもつながる。それに自店のお客様ということで、新商品との親和性の高いユーザーからの意見を頂戴できるメリットは大きい。
やはりお客様にはお客様なりの商品を評価するポイントが存在する。全く商品に対して興味のない層からの意見よりも、貴重な意見が多くなることは間違いない。
不信感を抱かせる価格とは
お客様に不信感を抱かせるような価格設定についても知っておこう。価格設定を見誤ってしまうとショップへの不信感にもつながるので、十分に注意したい。
明らかに高価な価格設定
他店では10万円ほどで販売されている類似商品を、自店では50万円で販売したとする。いくら売れなくても月に一つでも売れればまとまった利益になり、店舗運営にかかる費用をカバーできるかもしれない。それに販売にかかる人的コストも最小限に抑えられる。
いかにも効率の良い販売手法に思えるかもしれないが、やはり理由もなく適正価格を大幅に上回る価格設定はよろしくない。そのうち悪評が立ち、お客様はやってこなくなる。
これだけネット環境が整備された現代では、ショップの悪評を調べるのもクリック一つでできてしまう。利益だけを考えるのではなく、お客様を満足させることも考えていくようにしたい。
極端に安すぎない
極端に安すぎるのもよろしくない。もちろん高品質のものを低価格で手に入れることができたらお客様としても嬉しい。だが人は心のどこかで「安いものは悪いもの、高いものは良いもの」という認識を持っている。
あまりに値下げし過ぎてしまうと、利益率が悪くなるだけでなく、ショップのイメージも損なわれてしまう可能性がある。ある程度の価格帯の商品を販売していることは、ショップのブランドイメージを作り上げる意味でも大きな役割を果たしているのだ。高級ブランド店で値下げセールなどを行わないのもそのためである。
SALE期間やアウトレット店でない限り、極端に安い販売価格を設定することはやめよう。
販売価格が頻繁に変わる
売上が悪くなってきたからといって、コロコロと販売価格を変えるのはいけない。お客様がお買い物した翌日に、何の前触れもなく値下げしていたら、がっかりした気持ちになってしまうだろう。
お客様としても商品を購入するタイミングに困ってしまうので、販売価格を下げたいならバーゲンや決算セールと称して、イベントごとの一環として対応しよう。
どうしても価格を変えたいなら
先にも述べたように、材料費の高騰などの外的要因によって原価は変動する。そのため年に1,2回ぐらいは販売価格を見直すことも仕方のないことかもしれない。
ただしやむを得ず価格改定をする場合には「価格を上げる理由」と「いつから価格が上がるのか」をウェブサイトに明記するなどして、事前にお伝えしておこう。誠意ある対応をみせることで、ショップの信頼を損なうことなく販売価格の見直しができる。
サイトによって価格が異なる
事業者によっては、オリジナルのサイトと楽天市場を併用といったように、複数のECサイトを利用して販売していることもあると思う。そうした場合は、楽天市場では売上げに対する手数料がかかってしまい利益率は低くなる。
だからと言って、サイトごとに販売価格を変えてはいけない。同じ店であるにも関わらずショップAとショップBで販売価格が異なっていれば、お客様としては「何で?」と感じてしまい、不信感を抱く原因となる。クレジットカードと同じで、手数料がかかるかどうかはお客様には関係のない話であり、それを理由に販売価格を変えていはいけない。
おわりに 商品の価格は安易に決めない
商品の販売価格を決めるためには、ここまでご説明してきたさまざまな要因を考慮しながら決めていかなければならない。なんとなくとか、店主の気分で決めてしまっては、後から面倒なことになるかもしれない。
業界の中の適正価格を把握して、自社で生み出した商品の質を加味しながら、お客様を満足させられる価格を追及していこう。
【著者からの一言】
鍵谷 隆 -KAGIYA TAKASHI-
当記事は2016年ごろ、私がECサイトのコンサル経営をしていた時期にまとめたノウハウ集だ。そのため外部サイトへのリンクが切れていたり、Googleや各種ASPなどの外部システムの仕様変更などで状況が変わっている可能性があることだけは了承してくれ!
ただ商いの本質は変わることはない。ネットショップ運営でお困りの経営者や担当者なら、当サイトの記事も必ず役に立つはずだ。全てのEC関係者に幸あれ。検討を祈る!