ネットショップを運営していてどうしても避けられないのが、お客様からのクレーム対応だろう。
面倒だなぁとイヤイヤお客様対応を済ませてはいないだろうか。それではいけない。せっかくのチャンスを見過ごしているようなものだ。クレームはネットショップの改善点を考えさせてくれるヒントにもなり、クレーム客はリピーター客になってくれる可能性も高いのだ。
ということで、ネットショップとしてのクレーム処理対応についてご説明していこう。
クレームから改善点を見つける
そもそもクレームとはお客様がショップに対して不満があるから出るのである。ということはクレームの多い店は顧客満足度の低い店と言い換えることができる。
その発想を逆転させれば、いただいたクレームをかき集め、そこから改善点を見つけていくことで顧客満足度の高いお店にしていくことが可能になる。月に一回でもよいので、お客様からのクレームを見つめ直すための、まとまった時間を取るようにしよう。
一つのクレームの裏にはもっと多くの不満がある
商品を購入したけど満足しなかったという経験は誰しもがしていると思う。しかしいちいちクレームとして報告しないことがほとんどではないだろうか。
クレームというのはする側も手間なのだ。一つの問題に対して全ての人がクレームをしてくるわけではない。
ということは一つクレームが届けば、同じように悲しい思いをしたお客様が複数いることを理解しなければならない。同じようなクレームが他には無かったからと、軽視してはいけないのだ。
クレームをジャンル別に分ける
改善点を見つけていくには、まずはクレームをジャンルごとに分けてみよう。
商品自体に対するクレーム、梱包に対するクレーム、ウェブサイト自体のクレームなど、さまざまなタイプにカテゴライズしてみる。そうすると自社で運営するネットショップの弱い部分(顧客満足度の低い部分)が見えてくる。
似たようなクレームをまとめる
さまざまな方からクレームが寄せられてくるので、全く同じ言葉の羅列でクレームを頂くことはないだろう。だから同カテゴリの中から似たようなクレームをまとめていく。
例えば「到着した商品の一部が欠けていてがっかりしました」や「商品の中身がこぼれていました」などのクレームは、配送業者のせいにしたくもなるが、店舗としてはもっと丁寧に梱包作業をしていれば防げたトラブルかもしれない。
重要度を付けていく
クレームをまとめ終わったら、対応する優先順位の目安とするために重要度を付けていこう。
もちろんすべてのクレームに対して改善点を見つけ実施していくのが一番良いのだが、企業としては限られた時間の中で作業を行っていかなければならないので、全てに対応していくのは現実的ではない。そのため急を要するものや運営の根幹にかかわるような問題を優先して作業していく。
クレームの質にも目を向けよう
一つの問題に対してクレームの数が多いということは、重要度を付けていく上で一つの目安になる。しかしクレームの数が少ない案件は無視してよいというわけではない。
世の中にはたった一つのクレームが大企業の信用を揺るがすような事件も多々発生している。だから全てのクレームには必ず目を通し、大きな問題に発展しそうなクレームは、たとえ数が少なくても改善項目を見つけていくようにしよう。
改善にかかる手間も意識する
問題の洗い出しから改善点を見つけていく際には、改善にかかる手間も意識しよう。重要度の低い問題だとしても、一瞬で片付いてしまう内容であれば、優先して改善していく。使える人と時間が限られているため、いかに効率よく改善して総合評価点を上げていくことができるのか、という考えも大切だ。
改善を実施して効果測定
改善策を見つけることができたら、あとは通常業務との兼ね合いもあるが、どんどん実施して顧客満足度の高いネットショップに仕上げていこう。
そして効果測定を忘れてはいけない。クレームに対する改善策を施したことで同様のクレームが減ったのか、ここを意識しないとただの自己満足の作業で終わってしまう。
お客様に満足いただくクレーム対応
続いてはお客様からクレームをいただいたときの、好感の持てる気持ちのいい対応をご紹介してこう。クレームをいただいたお客様であっても、心のこもった誠実な対応をすることでリピーターになってもらえる可能性は高い。
まずは謝る
数あるクレームの中には、ショップ側はまったく悪くない場合もある。たとえショップに何の落ち度もなかったとしても、仕事だと割り切ってまずは心を込めて謝ろう。
お客様はクレームを出す時点で怒っている可能性が高く、一番最初に聞きたいのは謝罪の言葉だろう。ここで言い訳をしてしまえば余計に相手を怒らせて、話もまともにできなくなってしまう可能性がある。
どんな案件であれ、まずは謝罪の言葉から始めよう。
聞き役に徹する
もし電話でのクレームであれば、聞き役に徹しよう。
お客様によっては自分の不満や怒りを洗いざらい話すことで、すっきりして怒りが収まるケースが多い。適度に相槌と謝罪の言葉を述べつつ、まずはお客様のクレームに対して真摯に耳を傾けよう。
対応は早急・迅速に
メールでクレームをいただいた場合には、メールだからといって後回しにするのではなく、早急に対応を行おう。初期対応が遅れるとショップへの印象が非常に悪くなる。
円満な解決をしていくためにも、まずは電話にて謝罪や状況報告をしたりと、迅速な対応が求められる。
問題解決後にもアフターフォローを忘れずに
問題解決してお客様にご報告した後も、アフターフォローを忘れてはいけない。気持ちの良い問題解決まではどこのショップでも求められることで、このアフターフォローこそがクレーム客を固定客に変える秘策ともいえる。
手紙や絵葉書を送る
「その後の調子はいかがでしょうか?」「例の商品はその後問題なくお使いいただいておりますか?」といった手紙を送ることで好印象を与えることができる。ネットショップといってもネットの中だけで完結しなければいけないルールはない。
メールの文章では少々味気ないので、気持ちのこもった手紙や絵葉書を送ることで、お客様のことは忘れていませんということをアピールできる。
お詫びの品を送る
お客様に対してよほどのひどい思いをさせたのなら、店主の気持ちとしてお詫びの品を送ってもよい。
ただし電話や謝罪などの誠実な対応を抜きにして、お詫びの品だけをいきなり送ってはいけない。それでは「ご迷惑をおかけしましたが、この品で許してください」と言っているようなものである。
お客様としては第一に謝罪の言葉や今後の対応を求めているので、お詫びの品はアフタフォローの一環で行うようにしよう。
悪質なクレーマーへの対応
クレーム対応をしていると、悪質なクレーマーが現れることも稀にある。通常のクレームなら誠実な対応をするのは当たり前だが、あまりにも悪質なクレーマーに対しては、相手の言いなりになってはいけない。
新しい商品を要求されたら
商品に不備があり、新しい商品の送付を求められるのは普通のクレーム対応だが、中には商品に不備もないのに、嘘をついて新しい商品を受け取ろうとする悪質なクレーマーもいる。
必ず不備のあった現品は写真で状況を送ってもらうようにすること。今はスマートフォンも普及しているので、商品画像を送付することはそう難しいことではないはずだ。
その際には「お客様のことを疑っているわけではないが、悪質なクレーマーへの対応のため」ということを理解してもらうように、やわらかい物腰で説明しよう。
過剰なサービスを求められた場合
時には金銭的な要求をされるなど、過剰なサービスを求められることもあるが絶対に従ってはいけない。サービスとはショップ側がすすんで行うものであり、要求されて行うのはサービスではない。もはやクレームでもなんでもなく脅迫だ。
ショップで解決できる範囲であればよいが、それ以上に大きな問題になるようなら警察に相談するというのも検討するべきだ。
クレームを減少させるため施策
クレーム対応にもそれなりに時間がかかるので、そもそもクレームを頂かないようにすることも大切だ。そのために気を付けるべきことを以下に挙げていく。
嘘はつかない
当たり前のことだが嘘はいけない。売上が上がるからと産地や素材の情報をごまかしたり、ありもしない商品説明を記載してはいけない。
クレームの対応は誠実さが一番だが、ネットショップの運営も同じで「売れればそれでよい」ではなくて、商品を買ってもらい喜んでもらいたいという誠実さが最も大事である。
商品写真を加工し過ぎない
ネット通販では写真の美しさは非常に重要だ。商品写真にこだわるだけでショップの売上が倍以上になることだってある。
商品写真は光の加減などある程度加工しているだろうが、過度に加工するのはトラブルのもとだ。商品写真はとっても美しいが、実際に届いたものは色味も全然違うし、写真にあるような光沢も全くなければ、お客様としてもクレームの一つも言いたくなるだろう。
ポスターなどに使う販促用の写真は別だが、ネットショップの商品ページに掲載するイメージ写真を加工する場合は、商品写真を撮影時に足りなかった光の加減を調整する程度に抑えておこう。
傷やシミはしっかりと伝える
特にビンテージものや中古品を扱っているショップの場合は、商品に傷やシミが付いていることもあるだろう。見方によっては傷やシミは”味”として表現できるかもしれないが、トラブルを未然に防ぐという意味では、包み隠さずにしっかりとお伝えするべきである。
お客様によっては”味”と捉えることができずに、返品を要求されることもある。
おわりに クレームは宝である
クレームのないお店というのはない。あるとすれば全くお客様の来ないショップだろう。
ネット通販をしていく上で必ずクレームは発生する。だからクレームをどう受け取るかが大切だ。
クレームに対しての考え方で大切なことは以下の点だろう。
- クレームの発生しない運営方針、オペレーションを徹底する
- クレームが発生したら迅速に誠実な対応をとり、固定客になってもらう
- 定期的にクレームを分析し、ショップの改善点を見つけていく
クレームはショップの運営を徹底させ、お客様を固定客とし、ショップの改善点を見つけられる宝と言える。クレーム対応は突発的に発生し、煩わしい作業かもしれないが、クレームにこそショップを改善するチャンスがあるのだ。
【著者からの一言】
鍵谷 隆 -KAGIYA TAKASHI-
当記事は2016年ごろ、私がECサイトのコンサル経営をしていた時期にまとめたノウハウ集だ。そのため外部サイトへのリンクが切れていたり、Googleや各種ASPなどの外部システムの仕様変更などで状況が変わっている可能性があることだけは了承してくれ!
ただ商いの本質は変わることはない。ネットショップ運営でお困りの経営者や担当者なら、当サイトの記事も必ず役に立つはずだ。全てのEC関係者に幸あれ。検討を祈る!