ネットショップを立ち上げ、軌道に乗せた後はどうするか…別のコンセプトで新たなECサイトを立ち上げるのも良いが、実店舗を出店するという手も決して間違いではない。もともと実店舗を持ちたかったけど、資金面で余裕がなくネットショップを運営していたという方は、進んで実店舗開業に向けて準備を進めればいい。
ネットショップ成功後に実店舗を開業するメリット
オムニチャネル対応
オムニチャネルという言葉をご存知だろうか? 複数の販路を構築する”マルチチャネル”という概念はかつてから存在したが、オムニチャネルとはもう少し進んだ考え方で、あらゆる販売チャネルを抱えてそれぞれを独立させるのではなく、全ての分離したチャネルを統合して管理していく考えのこと。
例えばネットショップと実店舗の2店舗を運営していたとする。実店舗で商品が売れれば、それに合わせてネットショップの在庫管理も調整する必要がある。逆にネットショップで商品が売れれば、実店舗の在庫管理を調整する。しかしオムニチャネル的な考え方では、在庫を管理するデータベースを一つに統合することで、どちらのチャネルで商品が売れたとしても、それぞれで在庫を調整する必要がなくなるのだ。
こうすることで販売効率が高くなるわけだが、オムニチャネルとは運営側に恩恵をもたらすだけではない。
例えばネットショップで商品を注文し、会社帰りに実店舗に商品を取りに行くことができれば、余分な送料を払わなくても済む。また実店舗をショールームのように利用することで、家に帰ってから気になった商品をネット上で購入することもできる。こうしたオーダーの流れを統合することがオムニチャネルならではのメリットである。
ネットショップと実店舗をオムニチャネル化することで、さらに利用シーンが広がり、ユーザーにとって使いやすいショップとなるのである。
信用問題の改善
ビジネスの世界では、同じ物販でもネットショップを運営しているだけの企業よりも、どんな規模でも実店舗を構えている企業の方が信用される傾向がある。場合によってはネットショップだけの企業とは取引をしない卸業者もあるぐらいだ。
だからこそネットショップを成功させた後に実店舗を構えて、企業としての信頼を得る。そして新たな取引先との縁をつくったり、融資を受けてさらに企業を成長させていくことが可能になる。
リスク分散
ネットショップで成功したと言っても、今後数十年間も同じ状態が続くとは限らない。電子商取引の世界はまだ誕生してから20年そこそこ。この先無くなってしまうことはないだろうが、今とは全く形を変えてしまう可能性もないわけではない。実際10年前の超人気店が倒産してしまったという話も珍しいことではない。
ビジネスの世界に”絶対”はないが、状況が変わりやすいeコマースの業界は余計将来の想定がしにくいものである。この先ずっと売上げを伸ばしていけるか? と聞かれれば不安になってしまう事業者の方が多いだろう。
だからこそ同じ物販ではあっても、ネットショップとは異なるビジネスモデルの実店舗を持つことでリスクを分散させるのだ。ネットショップの売れ行きが悪くなったとしても、軸足を実店舗に移し替える…といったことが可能になる。
実店舗の歴史
店舗型の販売モデルは数千年前から脈々と続いている。物々交換や金銭取引など、方法は変わっているかもしれないが、その本質は変わらない。eコマースの影響で従来の店舗型販売モデルに陰りがみられていると言われることもあるが、近い将来に店舗型販売がなくなってしまうことはないだろう。
特にネットショップは近年店舗が急増して、供給過多の状態になりつつある。ますます売りにくくなる状況が続くことを考慮すれば、実店舗を持つということは、リスク分散に効果的なのである。
実店舗とネットショップのノウハウは異なる
よく実店舗での成功体験をもとにネットショップを運営したものの、ネットショップでは全く売れずにすぐに撤退という話をよく聞くが、ネットショップと実店舗の運営ノウハウは別物だという認識を持つようにしてほしい。同じB to C型の物販サービスではあるが、売るための仕組みづくりは別である。
本質としては仮説→実施→検証→改善のサイクルは同じだが、施策の内容や検証の方法など、目の付け所は微妙に異なってくる。なにより実店舗ではネットショップにはない対面接客が発生する。お客様の困っていそうなこと、知りたそうなことを、その場の状況やお客様の表情から読み取り、満足度の高くなる接客をする。
店内のポップ作りや、ショップ内のお客様の流れなど、実店舗ならではの施策も多い。だからネットショップで成功したからと言って傲慢になるのではなく、全く新しいフィールドに挑む挑戦者のつもりで、店舗立ち上げを行うようにしたい。
実店舗運営から生まれるものもある
実店舗を運営して、じかにお客様の行動を見ることで”気づき”が生まれることもある。
例えばお客様が商品を手に取っているところを観察することで、お客様はその商品のどういったところが気になるのかを知ることができる。こういうことはネットショップでいくらアクセス解析をしても見つけられないポイントである。こうした”気づき”が見つかれば、ネットショップの商品写真も、お客様が気になるであろうカットを追加することで、顧客満足度の高い商品紹介ページとすることができるのだ。
なによりもお客様の反応を直接確認できるということは、ショップ運営にとって大きなプラスになることは間違いない。
おわりに 実店舗運営は一つの道
これまで実店舗運営についてのメリットなどを説明してきたが、絶対に実店舗の立ち上げをするべきというわけではなく、あくまで事業展開のための一つの道でしかない。既存のショップと同じ商品でモール系や独自ドメインなどの多店舗展開を行うのも間違いではないし、別の商品群で新たな客層をターゲットにしていくのもよいだろう。
もし実店舗を立ち上げようとお考えになったのなら、こちらの「メディア運用で実店舗の集客を加速させる方法」も参考にしてほしい。
【著者からの一言】
鍵谷 隆 -KAGIYA TAKASHI-
当記事は2016年ごろ、私がECサイトのコンサル経営をしていた時期にまとめたノウハウ集だ。そのため外部サイトへのリンクが切れていたり、Googleや各種ASPなどの外部システムの仕様変更などで状況が変わっている可能性があることだけは了承してくれ!
ただ商いの本質は変わることはない。ネットショップ運営でお困りの経営者や担当者なら、当サイトの記事も必ず役に立つはずだ。全てのEC関係者に幸あれ。検討を祈る!