新規顧客を獲得するなら初回利用者限定プランを用意しよう

商売においてリピーターの存在は非常に大事。定期購買してくれるユーザーを増やしていくことで、売上げも伸びて経営も安定する。ただしリピーターをつくっていくには、まずは新規顧客を獲得することが絶対条件となる。商売の起点は新規顧客を集めることなのだ。

ネット通販は楽な商売だと思われがちだが、お客様に商品を購入してもらうのはネット上でも決して簡単なことではない。それにネットショップは立地的な問題がないことから、実店舗よりも競合との顧客の奪い合いは激しく、緻密な戦略を必要とする。そして新規顧客は初めて利用するショップには、常に疑いを持っているものである。

今回は新規顧客の初購入というハードルを下げる、初回利用者限定プランついてご説明していく。

 

サンプル品無料提供

新規でご利用のユーザーに限り、サンプル品を無料で提供する。「初めての方にはお売りすることが出来ません」という名キャッチコピーを生み出した、再春館製薬のドモホルンリンクルも無料お試しセットを提供している。

ショップオーナーとしては「そんなことして購買につながらなければ大赤字になってしまう」と思うかもしれない。確かに間違いない意見だが、ドモホルンリンクルが長年お試しセットを提供しているということは、その作戦が売上げに貢献しているからだろう。

 

返報性の原理を利用する

人は「何かしらの施しを受けたら、そのお返しをしよう」という気持ちが働くもの。もっと突っ込んだ言い方をするなら、「自分が受けた施しに対して、お礼をしなければならない」という責任を感じるようになる。もちろんそうした義務はないのだが、そう思ってしまうのが人の心理であり、返報性の原理とも呼ばれている。

無料サンプル品を貰うことで、ユーザーの心の中に生まれたお返しの責任感は、商品購入という形で消化される。この心理を突いた戦略が無料サンプルの提供である。

 

全ての商材に有効ではない

ただしどのような商材でも、サンプル品の無料提供が効果をもたらすわけではない。一部の商材では無償提供の見返りを得ることができずに、本当に無駄な施策となってしまうことがある。

 

本当に良いものであること

いくら返報性の原理が働くからと言っても、無料で貰ったサンプル品の質が悪く、お金を出してまで購入する価値のないものであれば、次の購入には結びつかないだろう。薄利多売を狙ったアイテムではなく、本当に質の高い、ユーザーがまた利用したいなと思えるアイテムでなければならない。

 

定期的に利用できる商材

一度使えば満足するのではなく、定期的に利用できるアイテムに限定するべきである。
無料サンプルの提供は、言わば固定客をつくりあげるための投資であり、投資するからには回収することを考えなければならない。そのためには定期的に利用したくなるアイテムがよい。

食材関係やコスメ関係、趣味で利用するような消耗品などは相性がよい。

 

原価率が低い商材が理想

できることなら投資に対しての回収がすぐに済んでしまう、原価率の低い商材が理想である。初回購入に至らなかった場合の痛手も抑えることができる。実際ドモホルンリンクルのようなコスメ関係は、原価が他商材と比較して低いと言われている。

原価率・購入率・リピート回数をしっかりと数値で把握し、赤字にならないための計画を立てながら、無償提供するサンプル品の量を決めていこう。もし定期的なサンプル提供が難しいなら、突発的なイベントとして、新規顧客を捕まえるための施策として打ち出すのも良いだろう。

 

店主のおすすめセット

商材がいくつもあって、ユーザーがいろいろと悩んでしまう場合には「店主のおすすめセット」を提示しておくと、選びやすくなる。例えば観葉植物を扱っているショップや、和食器を扱っているショップなど、一つ一つにそれぞれ特徴はあるのだろうが、初めて来店したユーザーや、知識をそれほど持ち合わせていないユーザーは、どれを購入してよいのか悩んでしまう。

もちろん自分の趣味で選びたいという人もいるが、中にはおすすめ品を提示してほしいという人もいる。ネットショップの場合は、実店舗のように店員によるセールストークが始まるわけではないので「初訪問ユーザーおすすめコーナー」といった特集ページを用意しておけば、それに興味がない人はクリックしなければ済む話なのでストレスなくサイトを利用できる。

 

ちょっと格安に提供する

店主のおすすめセットについては、あくまで初回利用のハードルを下げるための施策であり、利益第一ではない。そのため通常よりも少々割安価格にしておくことで、より購入に至りやすくなる。

ただし通常よりもお値打ち価格で提供するからといって、売れ残りなどの不人気商品を提供してはいけない。おすすめセットはユーザーがそのお店の雰囲気や世界観を理解するためのものであり、在庫処分のようなアイテムを送っては、次の購入にはつながらない。店主が本当におすすめと思っている一品に限定しよう。

 

ユーザーのタイプ別で品を分ける

おすすめ品を提示する際にも、一方的に商品を押し付けるわけではなく、ユーザーにも選択できる余地を与えてあげるとよい。

例えば和食器を専門的に扱っているネットショップの場合、以下のような提案ができるだろう。

  • モダンデザインが好きならこちらの食器セット
  • シンプルなつくりで料理を魅力的に見せてくれる食器セット
  • モノクロトーンで大人な雰囲気を演出する食器セット

またユーザーの好みではなく、シチュエーションに合わせた商品の提示をしてもよい。先程と同じく、和食器を扱っているネットショップなら以下のような提案ができる。

  • パーティーシーンで活躍する食器セット
  • 夏に活躍する涼しげな和風グラス
  • 普段使いで活躍する和食器3点セット

 

会員登録でポイント付与

初訪問ユーザーには会員登録をしてもらうことで、初回のお買い物で使えるポイントを贈呈するシステムも、初回購入のハードルを下げるのに効果的。

この施策の重要な部分は、初回購入からポイントを利用できることで、現金値引きでお得にお買い物ができること。ポイント利用を次回のお買い物時にしてしまうと、リピーターの創出には効果を発揮するが、新規顧客の獲得には効果が薄いので注意してほしい。

ただし会員登録という手間を嫌うユーザーがいることも確かで、そうしたお客にとっては逆に購入意欲が下がってしまうような施策となる。ポイントを貯めるのが好きな女性向けのショップほど、有効に使えるだろう。会員制度の上手な運用については「リピーターや固定客を増やす会員機能の上手な使い方」を参考にしてほしい。

またポイント制度を導入していないのであれば、クーポンコードでも代用が可能だ。

 

プレゼントキャンペーン

初めてそのショップを利用するお客様限定で、初回購入の見返りにプレゼントを提供する。こうすることで購入という行為に付加価値がプラスされ、通常よりもお得感が生まれないだろうか。

近年では女性用ファッション雑誌の付録がどんどん豪華になっており、付録がユーザーの好みにマッチしたときには、売上げが倍以上に伸びることもあるという。中には付録欲しさに雑誌を購入する人もいるぐらいだ。プレゼントする品も適当に選べばよいわけではなく、そのショップを利用するユーザーの趣味趣向に合ったものにしよう。

そのプレゼントは商品と一緒に同梱して送付することで、別途送料が発生することもない。

 

限定品で効果倍増

プレゼントキャンペーンで効果を発揮するのは限定品だ。あるブランドのファンなら、通常では手に入らない限定品は、どうしても欲しいと思ってしまう。ファンのコレクション欲求を刺激するのだ。

ただし限定品は有名ブランドだからこそ効果がある。無名ブランドの場合は逆に効果半減となってしまうので気を付けてほしい。

 

抽選企画にするのもあり

Twitterキャンペーンと連動した抽選企画にしても面白い。例えば新規購入のお客様には、素敵なプレゼントが当たるキャンペーンに応募するためのハッシュタグを連絡する。そしてそのハッシュタグ付きでツイートしたユーザーの中から当選者を決めるというもの。

SNSと連動した抽選企画にすることで、新規購入のハードルを下げるだけでなく、認知度を高める効果も同時に得ることができる。

 

おわりに 初訪問のユーザーは手厚い接客を

初めてネットショップを訪問してくれるユーザーは、そのショップを信用してよいのか不安な気持ちが多少なりともあるので、ショップ側としては、いかにユーザーの不安を取り除いてあげる接客ができるかが重要になる。

実店舗のようにお客様を巧みな接客話術でその気にさせることはできないため、今回ご紹介したような施策で、購入する気持ちを後押ししてあげる。それがネットショップなりの接客であり、新規顧客を獲得するため戦略となる。

また初訪問ユーザーにとっては、ショップシステムがすんなり理解できることも大事。そのためには送料やギフト対応など、一覧で分かるページを用意しておくとよい。詳細は「ショップ概要ページを利用して初訪問ユーザーの不安を解消しよう」を参考にしてほしい。


【著者からの一言】

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鍵谷 隆 -KAGIYA TAKASHI-

当記事は2016年ごろ、私がECサイトのコンサル経営をしていた時期にまとめたノウハウ集だ。そのため外部サイトへのリンクが切れていたり、Googleや各種ASPなどの外部システムの仕様変更などで状況が変わっている可能性があることだけは了承してくれ!

ただ商いの本質は変わることはない。ネットショップ運営でお困りの経営者や担当者なら、当サイトの記事も必ず役に立つはずだ。全てのEC関係者に幸あれ。検討を祈る!