世の中にはカリスマショップ店員という言葉があるが、決してマスコミなどがもてはやしているだけではなく、ショップにとってみれば貴重な存在だ。そうした名物ショップ店員なるものが誕生すれば、ショップ店員目当てでお客様に来店いただくこともあるし、そのスタッフのおすすめだからという理由で購入を決めることもある。
ショップスタッフを前面に出して認知度を高め、スタッフたちがショップのブランディングに貢献するというのも、ショップの販売力を高めていく戦略の一つだ。そしてこれは対面接客が発生する実店舗だけではなく、ネットショップでも使える手法だ。今回はショップスタッフを軸にして、販売力を高めていくために必要なことについて、ご説明していく。
スタッフの紹介ページを用意する
企業のホームページでもスタッフの紹介ページがあるように、ネットショップでもスタッフの紹介ページを用意しよう。これはスタッフの認知度を高めるだけでなく、ショップを利用するお客様に安心感を与えるという意味でも効果的。ネットショップは顔の見えない取引なので、できることならスタッフ紹介ページを用意して、どんな人が運営しているかをお知らせしよう。
スタッフの経歴や趣味などプロフィールを記載
スタッフ紹介ページでは、名前や年齢だけでなく、できれば経歴や趣味などのプロフィールも用意してほしい。これはユーザーに親近感を持ってもらうためである。
例えば「趣味は野球観戦: 好きなチームは読売ジャイアンツ」といった紹介があれば、ジャイアンツファンのユーザーはこのスタッフに親近感を抱くだろう。心理学的にも人は自分と同じ共通点をもつ人間に親近感を抱くもの。そのためプロフィールはできるだけ詳細に記載しておくとよい。
「商品とは関係のないことばかり書いて大丈夫か?」と心配になるかもしれないが、これはあくまでスタッフ紹介ページだけのことであり、興味がないユーザーはプロフィールを読まないだけの話なので問題はない。思う存分プロフィールを書き綴ろう。
ショップのいたるところでスタッフを登場させよう
ユーザーにスタッフのことを覚えてもらうためにも、ショップ内のさまざまなページにスタッフを登場させよう。例えば商品紹介ページでは、吹き出しなどのデザインを多用しながらショップスタッフが商品を説明しているような構成にすれば、自然な形で登場させることができる。
どのページでも挨拶から始める
ネットショップの場合、お客様がやってくるのはトップページからとは限らない。むしろトップページよりも各商品ページから流入してくる可能性が高い。そのため各ページでスタッフを登場させる際には「こんにちは、ショップスタッフの○○です。」とうように、自己紹介から始めるようにしよう。
各ページでの紹介文は長すぎると、興味のない人にとっては邪魔なだけであり、それだけで離脱してしまう可能性が高くなる。1文程度ですっきりと終わるぐらいの量が好ましい。
内輪だけでしか分からないネタはやめよう
ショップスタッフによって商品説明をしていく中で、ユーモアを織り交ぜていくことは良いことではあるが、内輪だけでしか分からないネタを投入するのはいけない。
はっきり言って内部事情を知らない一般ユーザーにとっては、なにも面白くない。むしろ内輪ネタに対して嫌悪感を抱くユーザーもいる。自分たちが楽しむためでなく、お客様のためにショップがあるのだということを忘れずに。
登場するスタッフは絞ろう
チームの規模が小さい場合は、必然的にウェブ上に登場するスタッフの顔ぶれは限られてくるだろうが、スタッフが何十名いたとしても、積極的にウェブに登場させるスタッフは絞ったほうがよい。
スタッフ全員を登場させて全体の印象が薄くなってしまうよりも、名物スタッフのような存在を作り上げたほうが、プロモーションするにも効果が得やすくなるためだ。
特徴のあるスタッフが理想
お客様にスタッフのことを覚えてもらうためには、できるだけ外見に特徴のあるスタッフを起用するのがよい。特徴があるかどうかは、似顔絵にしたときに簡単に描けそうかどうかを基準にするとよい。特徴的な顔は印象にも残りやすいからだ。
もっと言うなら、幸が薄そうな顔よりも幸福そうな顔の方がいいし、笑顔の素敵な人物がいい。どうしても外見重視にはなってしまうが、接客トークの発生しないネットショップでは、見た目のイメージが重要になってくるので仕方がない。
女性スタッフを登場させると柔らかい感じに
男性スタッフよりも女性スタッフを登場させると、柔らかい感じになる。そのため一般的には女性スタッフを登場させるのがセオリー。
しかしこれも絶対ではなく、ショップの客層や目的に応じて変えていかなければならない。男性へのギフト商材を扱っているショップなら、あえてプレゼントを渡す仮想彼氏のような役割で、男性を登場させるという手もある。男性だけ、女性だけ、といったルールはないので、男女織り交ぜながら理想的な登場のさせ方を考えていこう。
スタッフブログで個性を表現
ショップ内にスタッフブログを設けているネットショップは多いが、名物スタッフを作り上げるなら、そこでも積極的にスタッフを登場させよう。商品紹介ページではなかなか個性を表現するのは難しいので、ブログ内では存分にスタッフの個性を出してほしい。
しかしブログの内容については「ただの店長ブログも切り口を変えれば良質コンテンツに変化する」でも説明しているのだが、ただの日記のような内容ではなく、ショップや商品のことを含んだ内容にするようにしたい。
そして名物スタッフによるブログで大切なことは、必ずそれぞれのスタッフの言葉で書き上げること。商品に対してどんなことを思っているのか、普段のショップ運営で何を感じているのかなど、「どんな人なのかが、文章を読めば伝わってくる」書き方が望ましい。日記ブログではいけないが、それでもスタッフの個性は表現しなければならない。簡単ではないがそのバランスを意識したブログ運営を目指していこう。
スタッフを軸にした販売を行う危険性
スタッフを軸にして販売力を高めていく手法には、ある危険性が伴う。それはスタッフが辞めてしまうことだ。せっかくスタッフの認知度を高めて、それなりに訴求効果を生むようなスタッフに育ててきたにもかかわらず、辞めてしまえば今までの苦労も水の泡。
しかしこればかりは仕方のないこと。日本では憲法で職業選択の自由が定められているので、雇用側が仕事を辞めるなと拘束することはできない。こうしたリスクを回避するためにも、複数名の名物スタッフを育てておくようにしたい。
有名スタッフを作り上げることは、こうした危険性がはらんでいることも理解しておくようにしよう。
おわりに スタッフの存在自体がショップの付加価値となる
カリスマスタッフのような名物スタッフを生み出すことができれば、それだけでショップとしての付加価値となる。商品やブランドとは別の価値のため、思うように成功させるのは簡単なことではない。しかしスタッフを軸にして販売力を高めることができれば、ショップ運営が楽になることは間違いない。
競合店舗との差別化をはかっていくにも効果的な名物スタッフの存在だが、そのスタッフがショップを辞めたときのリスクも考えながら、方針を決めていくようにしよう。
スタッフを積極的に登場させることの利点については、こちらの「スタッフを前面に出すとお客様の記憶に残りやすいショップとなる」の記事でも説明しているので、是非参考にしてほしい。
【著者からの一言】
鍵谷 隆 -KAGIYA TAKASHI-
当記事は2016年ごろ、私がECサイトのコンサル経営をしていた時期にまとめたノウハウ集だ。そのため外部サイトへのリンクが切れていたり、Googleや各種ASPなどの外部システムの仕様変更などで状況が変わっている可能性があることだけは了承してくれ!
ただ商いの本質は変わることはない。ネットショップ運営でお困りの経営者や担当者なら、当サイトの記事も必ず役に立つはずだ。全てのEC関係者に幸あれ。検討を祈る!