お客様の意見を吸い上げて満足度の高い商品を生み出そう

他社との差別化を推し進めるために行う、自社商品の開発。より魅力的な商品を生み出すためには、誰がどんなシーンで使うのかなど、コンセプトをしっかりと考え抜くことが大事なのは「自社製品の開発をするなら5W1Hでコンセプトを明確にせよ」で説明してきた。

このように自店を利用してくれるお客様の動向や、売れ筋ランキングなど、現状の状況を分析して商品開発の糸口となるデータを用意していくのもよいのだが、時にはお客様から直接「どのような商品が欲しいのか?」という意見を吸い上げてもよい。

 

お客様の声はヒントとなる

サービス業をしていれば、お客様の声を頂く機会も多いわけだが、必ずしもお褒めの言葉だけを頂戴できるわけではない。時には商品やサービスに対する不満を”クレーム”という形で頂くこともある。

ただし自店に対するお礼の言葉よりも、クレームの方が商品開発のヒントとなることの方が多い。例えば「購入したマグカップの取っ手部分が持ちにくい」というクレームを頂いたら、”女性(男性)の手にフィットしやすいマグカップ”といった、新たな切り口の商品を開発することにつながる可能性もある。

クレームだからと言って嫌な気分で対応するのではなく、新しいヒントを提供してもらったと思って、対応するようにしてほしい。そうしたクレーム対応の考え方については「クレームをチャンスに変えるネットショップ的処理対応」でも記載しているので、参考にしてほしい。

 

積極的にお客様の要望を吸い上げよう

お客様から意見が上がってくるのをただ待つだけではなく、積極的にお客様の要望を吸い上げるための仕組みづくりも必要だ。

 

意見を送れるフォームを設置

ウェブサイトのお問い合わせフォームのように、お客様が自分の意見を送信できるようなフォームがあると、メールや電話をかけるよりも心理的負担が軽減され、よりお客様の声を集めやすくなる。システム的な作りこみが必要になるが、一度用意しておけば、その後のランニングコストはほぼ発生しない。ネットショップ構築時に、まとめて用意しておくとよい。

 

レビュー報告と併せて意見を頂戴する

コンバージョン率を高めるために、お客様の声やレビューを商品紹介ページに記載しているECサイトはよくある。そしてレビューを頂くためには、商品をお買い上げいただいたお客様のアフターフォローとともに頂戴していることが多いのではないだろうか。

ネット通販はお客様と接触するタイミングがそれほどないので、アフターフォローという形で自らコンタクトするきっかけをつくり、その際に商品の感想だけでなく「もっとこうした方が使い勝手がよくなる」や「違うバリエーションがあったらよかった」などの改善提案も、併せてうかがうようにしたい。

タイミングやきっかけづくりについては、こちらの「商品ページに記載したいレビュー・お客様の声の集め方」にて詳しく説明しているので、是非参考にしてほしい。

 

商品開発のために吸い上げたい意見

 

色違い・サイズ違いなどのバリエーションを求めているか

何かお買い物をするときに「このデザインは好きなんだけど、好みの色がないとか、自分に合うサイズがない」などの理由で購入を断念してしまった経験が、少なからず皆さんにもあるのではないだろうか。

こうしたバリエーションの不足で購入を断念させてしまうのは非常にもったいない。かと言って無限にバリエーションを用意するのも得策ではない。お客様が好みそうな、売上が上がりそうなバリエーションを用意するのが理想であり、そのためにはお客様の要望を聞くのがよい。お客様からのリクエストが多いものから商品化していく。というのも一つの手だ。

 

投票形式

社内で商品開発をする際には、まずはアイデアを考えていく段階でいくつかの案が浮上するのが一般的。そしてその中から売上げが見込めそうな案を採用し、開発に取り組む。

売上げが出る見込みについては担当者が必死でマーケティングをするわけだが、消費者であるお客様にダイレクトに意見を聞いてしまってもよいだろう。そのためにはいくつかの案が出そろった時点で、どの案が一番優れているかを投票形式でお客様に決めてもらう。そして投票数が最も多かった案の商品開発を進める。

消費者参加型の商品開発は、お客様を飽きさせないための施策にもなりおすすめだ。

 

商品仕様を募集

実現するしないは別として「こんな商品があったらいいな」というお客様の夢や希望を実現するという意味で、商品仕様の段階からアイデアを募集するのもよい。そして数ある応募の中からいくつかの案を採用し、それを実際に形にする。

実現に向けての会議の段階から、商品加工などを一つのプロジェクトとして、ECサイト上でも公開していくことで、商品開発企画自体が一つのコンテンツとなり、お客様を楽しませる要素となる。

 

お客様の意見を商品開発に取り入れている例

それでは最後に、お客様から上がってきた意見を商品開発に上手に取り入れている例をご紹介しよう。お客様の要望を商品開発に取り入れている企業は多いが、その中でも無印良品は運営が上手。

ものづくりコミュニティーを立ち上げ、そのコミュニティーの中で、お客様の意見を集め、新たな商品を生み出し、完成した商品をコミュニティ内のユーザーに向けて報告している。

一度は販売中止になったものの、ユーザーから再販希望の意見が多く集まれば、再び生産を開始したり、お客様のアイデアをもとにして、一から商品開発を進めるプロジェクトが進行している。まさにお客様の声を形にするものづくりが行われている。

ただ商品を開発するだけでなく、上手にファンを取り込みながら、商品力の高いアイテムを作り上げていっている。無印良品のファンにとってはたまらないコンテンツだ。

 

おわりに 全てはお客様のためにある

企業の商品開発も、目的としては競合店舗との差別化や、原価率向上のための施策かもしれないが、本質的な部分はお客様のために魅力的な商品を開発する、というスタンスを忘れてはいけない。

原価計算や販売価格の設定はもちろん大事なことだが、お客様を第一に考えられた商品は、お客様に受け入れられる可能性が高い。そして本当に良質な商品を生み出すことができたら、売上は後からでもついてくるもの。

まずはお客様は何を求めているのか、どんなものが欲しいのかを考えるために、直接意見や要望を吸い上げていく仕組み作りから始めてみよう。


【著者からの一言】

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鍵谷 隆 -KAGIYA TAKASHI-

当記事は2016年ごろ、私がECサイトのコンサル経営をしていた時期にまとめたノウハウ集だ。そのため外部サイトへのリンクが切れていたり、Googleや各種ASPなどの外部システムの仕様変更などで状況が変わっている可能性があることだけは了承してくれ!

ただ商いの本質は変わることはない。ネットショップ運営でお困りの経営者や担当者なら、当サイトの記事も必ず役に立つはずだ。全てのEC関係者に幸あれ。検討を祈る!