ネットショップを開設する場合には、楽天市場やamazonのようなモール系に出店したり、カラーミーショップやショップサーブのようなASPを利用する方法など、オーナーの目的や事業計画によってどのショップシステムを選ぶかが分かれてくるが、その中の一つにオープンソースのシステムを利用するという手がある。
オープンソースとはASPが契約制で毎月システム利用料を徴収するのとは逆に、誰もが無償で利用でき、改変も加えることができるサービスのこと。そしてオープンソースで利用できるショップシステムの中でも、日本で一番ユーザーが多いのがEC-CUBEである。今回はそんなEC-CUBEのあれこれについて、ご説明していく。
EC-CUBEとは?
EC-CUBEとはもともとはオープンソースのシステムではなく、株式会社ロックオンという会社が開発した、ECサイト構築用のパッケージソフトだった。しかし2006年に誰もが許可なく無料で利用できるオープンソース化したことをきかっけに、推定22,000店舗以上が利用するほどまでに普及した(EC-CUBE公式サイトによる数字)。自社で一生懸命開発したプログラムを、無償で公開するなんて本来はありえないことなのだが、それを実現しているからすごい。
日本で開発されたシステムのため、配送についてや送料計算など、日本の商習慣に合わせたシステムになっているため、非常に使いやすい。
プラグインを使って機能を増やす
EC-CUBEをインストールしただけでは、基本的なショップシステムしかない。もしクーポンシステムや会員制度などの特殊機能を使いたい場合は、プラグインと呼ばれるシステムをインストールしていく。必要に応じて各種プラグインを加えていくことで、ショップオーナーが実現したい機能を持たせることができるのだ。
例えばクーポン機能をショップシステムに搭載したければ、「割引クーポンプラグイン」をダウンロードしてショップシステムにインストールする。複雑なファイル操作は必要なく、クリックひとつでインストールまでが完了するので、非常に使いやすい。
プラグインは有料のものも存在しているが、無料のものも豊富にそろっている。まずは実現したい機能について、無料のプラグインで対応できるかどうかを確認してほしい。
カスタマイズの自由度は高い
オープンソースのシステムだけあって、カスタマイズの自由度は高い。これもEC-CUBEを利用するメリットのひとつである。
サイトデザインはショップの世界観を作り上げる要素の一つであり、その世界観に共感してショップのファンになってくれるユーザーは多い。つまりカスタマイズによって自由なデザインに仕上げることは、コアなファンを獲得するためにプラスに働くのである。
自由なデザインという面で言えば、一から作り上げる独自ショップを制作会社に依頼しても同じように自由なデザインが可能だが、ショップシステム自体も一から構築していくため、とつてもなく費用が高くなる。EC-CUBEならショップシステム自体はオープンソースで用意されており、カスタマイズ部分だけを制作会社に依頼できるため、費用はそれに比べて安くなる。
セキュリティには注意
ここまで読んでいるとオープンソースのシステムは非常に素晴らしいもののように感じるかもしれないが、オープンソースならではのデメリットも存在する。
オープンソースとは誰でも許可なく自由に利用できるシステムであることは先程説明したが、それは悪いことを考える人がそのシステムを分析して、セキュリティの穴をついた攻撃を仕掛けてくる可能性があるリスクも含んでいる。
そのためオープンソースのシステムはセキュリティの穴を防ぐために、バージョンアップを繰り返し行っている。
※使い勝手を良くするためのバージョンアップも存在する。
ネットショップ側の対応としては、自動ではバージョンアップは行われないため、最新バージョンのソースをダウンロードして適用するための作業が必要になる。その際にはインストール済みのプラグインとの互換性があるかどうかなど、注意しなければならないこともあり、何も知らない初心者が行うと、うまくいかないこともある。
だからと言ってアップデート情報を無視してしまうと、悪意ある第三者からの攻撃によって、個人情報漏えいという最悪の事態を引き起こしてしまう可能性もある。
これからEC-CUBEを利用するユーザーは、しっかりとこうしたリスクや手間についても、頭の中に入れておくとよい。
開発は外部の制作会社に任せることが可能
社内にEC業界についての豊富な知識があり、プログラミング能力も高い優秀なスタッフがいるのなら、自社内でカスタマイズから運用保守までをカバーできるが、全てのEC企業がそうではない。
販売する商材はあるのだけど、思い通りのシステムを構築できるような体制が整っていない場合には、外部の制作会社に依頼する手があり、そうした企業のために”EC-CUBEインテグレートパートナー”と呼ばれるEC-CUBEのカスタマイズや運用に特化した会社の紹介がある。
上のリンクで紹介してるページでは、EC-CUBEの開発に携わっている企業の一覧を確認することができ、「テンプレートのデザインでは物足りないからカスタマイズしてほしい」や「特別なプラグインを作ってほしい」などの要望があれば、制作を依頼することができる。
しかし各制作会社への依頼は、もちろん有料である。無料だからとオープンソースのEC-CUBEを使ったにもかかわらず、カスタマイズを依頼したら結構な費用がかかってしまったということも、よくある話。だが間違いなく一から独自システムを構築するよりかは安く抑えることができるだろう。
EC-CUBEを利用するならチェックしておきたいメディアサイト
EC-CUBEを今後利用していくなら、下記に紹介する二つのウェブサイトをチェックしておくとよい。
ネットショップの壺
EC-CUBEが運営しているオウンドメディアのネットショップの壺。ネットショップのニュースやノウハウ系の記事が多数なのだが「EC-CUBE 3.0系対応決済まとめ」のような、EC-CUBEにまつわる記事も掲載されている。
EC-CUBEの学校
カスタマイズを覚えて自社でデザインをしていきたい企業は、EC-CUBEの学校を要チェック。EC-CUBEの基本的な仕組みからカスタマイズの方法までを学ぶことができる。
こちらのサイトはEC-CUBEのインテグレートパートナーでもある、株式会社アラタナが運営しているのだが、現在は残念ながら更新がストップしている模様。しかし過去の記事を読むことでも、EC-CUBEにまつわる豊富な知識を得ることができるだろう。
おわりに 独自性のあるショップを構築したいならEC-CUBEもあり
独自性の高いショップを作りたいなら、EC-CUBEを利用するのがよい。それに月額費用が無料という点も嬉しい。
だがプラグインやテンプレートには有料のものも存在するし、制作会社を利用するならそれなりの費用も発生する。さらにアップデートに伴うバージョンアップという、運用の手間が発生することも忘れないようにしてほしい。
もしショップシステムの選定にお悩みであれば「ネットショップ開業サービスを徹底比較!無料系からモール系まで」の記事も是非参考にどうぞ。
【著者からの一言】
鍵谷 隆 -KAGIYA TAKASHI-
当記事は2016年ごろ、私がECサイトのコンサル経営をしていた時期にまとめたノウハウ集だ。そのため外部サイトへのリンクが切れていたり、Googleや各種ASPなどの外部システムの仕様変更などで状況が変わっている可能性があることだけは了承してくれ!
ただ商いの本質は変わることはない。ネットショップ運営でお困りの経営者や担当者なら、当サイトの記事も必ず役に立つはずだ。全てのEC関係者に幸あれ。検討を祈る!